続「泥流地帯」三浦綾子・新潮文庫を読み終えました。片目の私にとっては思いの外、目に負担のある読み物でした。大正15年に爆発した「十勝岳」から流れ出た泥流が10数キロ離れた上富良野まで津波となり多くの罪のない人たちに被害をもたらします。そしてそこに住む主人公たちに苦難と悲哀の復興を余儀なくさせます。何度も目の疲れを休めつつ、読み終え、さてこの小説がどのように映画化されるのか今思いを巡らせています。

 

 上富良野町は数年前からこの小説をベースに「第45回地域再生計画」に織り込み映画化プロジェクトがスタートしています。行政側の映画化のための総投資額は80百万円(既に6百万円は調達済)で、自治体は全面的に映画化プロジェクトをサポートし、観光産業を中心に地域の活性化を推進する予定です。一方制作会社は毎日新聞とMBCの合弁会社、監督は新進の柴山健次さんが決定しています。映画化は2020年の計画となっています。

 

 さて、私は新型コロナウイルス後の社会(世界)の変容に大変大きな関心を持っています。未だ出口の見えない新型ウイルスとの戦いではありますが、過去のパンデミック(天然痘、ペスト菌、スぺイン風邪等)の歴史を紐解くまでもなく、現在の科学(医学)の力をもってすれば、いずれ数年先には新薬の開発により解決に向かうものと考えます。人々は今、世界中で医療崩壊を起こさせないよう、感染者拡大を防ぐために官・民を挙げ懸命の努力をしています。日本でも社会の持続性(サステナビリティー)を担保するために、経済を一時的に犠牲にして頑張っています。

 

 世界中で大都市圏と地方の感染状況は異なります。日本では現時点で岩手などの限られた県ではありますが、感染者が出ていないところもあります。政府は緊急事態宣言の出口戦略を近々発表の予定ですが、当然ながら地方部から徐々に解除されるでしょう。即ち、大都市集中型の経済発展にはリスクを伴うことが明らかになってきます。第一次産業(農・林・水産業)の重要性、生産性を伴う形での地域再生の重要性が着目されます。また、大恐慌を含む過去の不況の局面でもそうであったように、職を求めて第一次産業に人口移動が始まります。

 

 日本の企業における在宅勤務の生産性、自治体や政府におけるSNSを含むIT活用の遅れもいずれ問題化します。企業のあり方(含む、社会的使命)、労使関係、個人事業主の増大、社会起業家の活躍などにも行動変容が見られるでしょう。特に不足する農業従事者と高齢化の問題もあり、ドローンやITを活用したスマート農業へのシフト、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の波は、地方で若年労働力を中心に創造的で生産性の高い産業を創造することになります。「泥流地帯」の映画化もそのような地方部への着目の契機になればと密かに考えています。日々是好日。