今回は人気シリーズの“新章”です。
抑えられずに観に行ったこちら。
『クリード チャンプを継ぐ男』
(原題:Creed)
言わずと知れた超名作『ロッキー』シリーズの新たなスタート。
引退し、ジムにも顔を出さなくなり、レストラン「エイドリアンズ」を細々と経営するロッキー。
そこに現れた黒人の青年アドニスが、「ボクシングを教えてくれ」とロッキーに言う。
彼こそ、かつてのヘビー級チャンピオン、ロッキーの盟友アポロ・クリードの息子であった…。
正直、この作品の予告を一番最初に観た時の感想は
「え、ロッキーまだやるの?」
だったんです。
ってゆうのも、前作『ロッキー・ザ・ファイナル』がすごくいい収まり方をしたと思ってるんですよ、ワタシ。
なんというか、老いたロッキーを描き、老いてもなお挑み続けるロッキーの幕引きをしっかりしたように思えたんです。
なのに、ここに来てまだ、ロッキーかい?と。
そこまでハリウッドは興収が大事かい?と。
…まぁ、大事とは思いますけど。商売ですから…。
ところがどっこい、そんな思い込みはドブにダンクシュートですよ。
スッゴイ良かったのー………。
過去のシリーズのオマージュはたくさん盛り込まれているんですが、やりすぎて陳腐になりすぎない、ちょうどいいライン。
それどころか、確立された『ロッキー』から新たな分岐点を作り、ここから別の物語を作っていこうという意気込みすら感じましたよ。
しかし、『ロッキー』ってゆうのは、どうしてこうも人々の心を揺さぶるのか。
今作『クリード』もそうですが、登場人物がみんな不完全な人間なんですよね。
現代人みんなそうだと思うんですが、映画だから、主人公だから、名作シリーズだからって、全然超人なんかではなく、等身大の人間なんですよ。
ロッキーにヒーローはいないんですよ。
これは過去シリーズでもそうでしたが、『クリード』でもしっかり継承されていました。
突きつけられた現状にうろたえながらも、なんとかコレを打破してやろう、運命を変えてやろうと奮闘する人たちのドラマ。
今回、自身はボクシングをせず、トレーナーとして脇役に徹するロッキーなんですが
数々の経験をしてきた老年のロッキーも、老年故の弱さなどがあって、実に深みのある人物になってるんですよ。
やはりロッキーを演じ続けてきたシルベスター・スタローンだからこそ出せる説得力なのでしょうか。
『エクスペンダブルズ』で、年齢を微塵も感じさせない屈強な男を演じていましたが、こうゆう弱さを見せられると、もう涙腺なんて蛇口全開ですよ。
……ジジイにしちゃ随分イカツいな、とは思いましたけど…。
今回新たに主人公として出てくるアポロの息子、アドニス(アポロの息子がアドニスて、ギリシャ神話からとったんですかね)も、実家はもちろんアポロ一家ですから金には不自由してないけど、偉大すぎる父の名や、その名に纏わりつく因縁にもがき苦しんでいる。
文字通りその拳で勝ち取ろうとするけども、そこにも若者故の弱さが見え隠れしたり。
ロッキーパート1のロッキーを彷彿とさせますね。
みんな完全じゃない。
そんなアドニスを諭し、アドバイスを与えるロッキーも、完全じゃない。
覚えてる限りで5回くらい泣きました。
この厳しい現代社会で、言い表しがたい溜め込んだ憤りや、現実にもがき苦しむ人たちみんなに観て頂きたい。
そんなもんないって人がいるなら俺の前に現れて欲しい。
もちろんボクシング映画なので、迫力ある試合のシーンも見どころですが
ボクシング好きだろうがそうじゃなかろうが、コレは見るべきですよ。
誰も、特別じゃない。
誰しもが持ち得る勇気を振り絞った人間のお話ですよ。
いつになく真剣に語ってしまいましたが、当然僕は鑑賞後
アホみたいに腕立て伏せをしすぎて、腕がバッキバキの筋肉痛です。