風の便りでは
盛大な結婚式をして1年もしないうちに
別れた、ということを 別の友達から聞いた。
別れた理由は・・・あえて聞かなかった。

しばらく故郷には帰らないつもりだったのに
降って湧いたような母の交通事故、家族の入院。。。
早めに都会での学生生活を切り上げ、
帰郷して就職先をみつけねばならなくなった。

適齢期なのに働きながら、夢の続きを探す私の存在は
まだ、フリーターやニートという言葉が
今ほど市民権をもってなかった保守的な田舎町では
奇異な存在だったようだ。

お節介な親戚や年長者の言葉に 愛想笑いで逃げながら
息を潜めて生きるような毎日が始まった。

あちこちに思い出が甦ってくる場所の残るこの町で
崩れそうな自分を支えるには、
自分が思い描いた夢へ向かってる演技を
続けるしかなかった。

           

何度かの不採用通知の後、求人広告を見つけて飛び込んだ職場。
慣れない仕事に忙殺されてたそんなある日、
会社の駐車場の入り口で目に飛び込んできた

・・・見慣れた“車”

ごく限られた友人にしか、Uターンしていることを教えてはいない。
『そら似よね・・・』

まだ、その車の特徴を覚えている自分が 哀れに思えた。

  アポの時間を思い出して 車の脇を通り過ぎようとしたとき、
・・・懐かしい呼び声がした。
そして、変わらない照れくさそうな笑顔も。。。

久し振りの再会だというのに、
平静を装う私の話し方は、
思いっきり他人行儀で、つっけんどんな喋り方だったに違いない。

何かを話そうとするために、何時間も待っていたあなたとの間に
険悪な沈黙が流れた。
結局、あなたとまともに目を合わせようともせず、
私はその場を立ち去った。


あなたに背を向けて歩きながら、
私は-こんな自分を悔いていた。
今 <最後の糸>を自分で断ち切ってしまおうとしていることを
痛いほど感じながら
自分からは もう、どうすることもできなかった。
もう一人の私が・・・気持ちとは真逆なことしかできない私に泣いてる・・・

この時、初めて、
自分がまだ貴方を好きでいることを 嫌と言うほど思い知らされたのだ。

あなたは・・・追っては来なかった。
いや・・・追えなかった、のだろうか。

本当は
自分一人でケリがつけられなくて
あなたからの言葉が聞きたかったはず・・・だった。

けれど、ひとりで苦しみ続けた幾千もの夜の
その<答え>を、
あなたの口から 確かめる勇気が持ててはいなかった。

自分から云い出せないもどかしさが、うらはらな態度になってしまう。。。
何やってんだろう・・・私。
時間が止まったあの日から 何にも進歩して無いじゃない。。。


         
 

 

それから数年後、妹的存在だった職場の後輩と再婚したと
風の噂で聞いた。
私は、まだ何者にもなれず、何者でも無く、
人からは 何故か結婚しないキャリアウーマンと呼ばれている。