チェリーセント#12
君は
息を呑むほど
今まで見た誰よりも
美しい花嫁だった。
ホテルのチャペルの入口で
君は母親にベールを被せてもらい
父親の腕にそっと手を添える。
それは紛れもなく、君だった。
俺は微動だにせず
ただ
ただ
君に見とれて
これは
昨夜の夢がまだ続いているのか?
それ程幻想的で・・・。
その美しい瞳に
悲しげに涙を浮かべているように
見えたのは
錯覚なのか?
どこからか桜の花びらが
ふわふわと天使の羽根のように宙を舞う。
せめて、この時間が
永遠に続けば良かったんだ。
チャペルの扉が開いて
君は行ってしまった。
俺ではない
他の男の元へ。
神の前へ・・・。
眩しい光の方へ・・・。
その幸せの入口のような大きな扉は
無情にも
重苦しく閉じて
君との全てを遮断されたようで・・・。
何も出来なかった。
この罰はどれくらい続くのか?
行くな!
今すぐにでも君を奪い攫いたい衝動も
君が他の誰かのものになる
その事実が鉛となって
俺の身体を鎖で繋いだ。
遠くから
ただ
そこに立ち尽くすだけしか出来なかった。
どれくらい時間が経っただろう。
あの重苦しい扉が開いて
中から飛び出して来た純白の君。
ー逃げたぞ!
ー花嫁が逃げたぞー!
ーあっちだ!
ーあっちに逃げた!
ー追いかけろっ!
君の後を追いかける人々。
騒然としたチャペル。
俺は考えるより先に
身体が動いていた。
(続く)
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