疫病退散にご利益があるという妖怪「アマビエ(歴史的仮名遣:アマビヱ)」が今ひそかなブームとなっています。

アマビエ(歴史的仮名遣:アマビヱ)は、日本に伝わる半人半魚の妖怪。光輝く姿で海中から現れ、「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作が続くが疫病も流行する。私の姿を描いた絵を人々に早々に見せよ。」と告げたという。

 江戸時代後期の弘化3年(1846)に肥後国(現・熊本県)でたった一度だけ出現しただけの極めて稀少な妖怪(怪異)だ。この話は挿図付きで瓦版に取り上げられ、遠く江戸にまで伝えられた。予言に忠実に、「私の姿を描いた絵を『瓦版で』人々に見せる」ことを早々に実現したわけだ。

 4月9日には厚生労働省が、「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」「コロナウィルス対策としてアマビエのイラストをみんなで描こう」との発想から、公式Twitterにアマビエのイラストを掲載し、新型コロナウィルス感染拡大を防ぐ啓発画像として起用しました。江戸期、明治期と過去二回のアマビエブームは、人々の疫病への不安に応える形で、図像が販売されるという、どの時代にも起こり得る「商品ブーム」でしたが、今回は様相が違うようです。

 このムーブメントは海を越え、3月の半ばには海外のネットユーザーが自作した“アマビエ作品”をTwitterやInstagramに投稿し始め、「疫病退散」や皆さんの安全を願っています。