ビコール狂詩曲 ギョウちゃんが いく -19ページ目

ビコール狂詩曲 ギョウちゃんが いく

ビコールの魚屋のブログです。行きがかり上フィリピンに住むことになった時の所持金は、僅か7000ペソ。
その後、山あり谷ありを経て18年後の今もなんとか生きてます。

昨日は朝から何かおかしかった。6時半頃目が覚めて下に降りると、テーブルの上にはホテルで食べるような朝食が用意されていた。クラブハウスサンドイッチのようなもの、オムレツ、ソーセジ、スパゲティ、オレンジジュース、コーヒー、、クラブスティック入りのサラダにデザートにはパパイヤとレチェプラン。(スパゲティだけはどうやら昨日の残り物らしい)
僕はけげんそうな表情を浮かべながら少し恐る恐るテーブルに着くと、辺りを見回し妻の姿を探した。すると妻ではなく、お手伝いのフェイがテラスでモップがけをしているのが見えたので、彼女に妻の居所を聞くと、教会に行ってるということだった。
何の日だろう。それにこの気のきいた朝食といい・・・。
僕は、少し彼女の今朝の行動について考えを巡らせてみたが、しょせん寝起きのボンヤリとした頭では、せいぜい誰かの命日か誕生日だろうぐらいのことしか思いつかなかった。

次に僕の関心は、いよいよ目の前にある朝食を食べていいのかいけないのか。その一点に絞られることになった訳だが、改めてそのテーブルセッティングを眺めてみると、かなり妻の気合いが入っていることがうかがえた。
特にテーブル中央に飾られている花瓶には、いつもの造花ではなく、庭から取って来たと思われるランの花がふんだんに収まっていたのは、料理に手をつけることを僕に躊躇させるには十分なパフォーマンスだった。

というわけで「触らぬ神に祟りなし。祟りもなけりゃ、御利益もない」と心の中で呟きながら、サッポロラーメンみそ味を取り出してきて、それに朝からタップリのニンニクを投入し、火を止める直前に生玉子を入れて、仕上げにはたくさんの刻みねぎを投下してから、フーフーしながら食べた。

ラーメンを食べ終わって、僕がちょうどトイレにいる時に妻が教会から帰って来た。
僕はとても気の弱い男で、妻の前でオナラもできない人間だ。それなので当然“み”ともなれば、オナラ以上に気を使うことになる。
「ギョウちゃーん、どこにいるのー」と妻が僕を捜す声が聞こえてきた。
僕はそれには返事せずに、だんまりを決め込んだ。よくあることである。
こういった時、多少広い家というのは便利なものである。妻があちこち僕を捜している間にさっさと用を済ませ、突然襲ってきた危機的状況をやり過ごすことができるからだ。でもどこの世界にもおせっかいな奴はいる。
僕が懸命に、まだ少し腸の中に残ってる”み”を両手で拳を作って下っ腹にあて、それを絞り出そうとしている時に相変わらずモップがけをしているに違いないお手伝いのフェイが、僕がトイレにいることを妻に教えてしまった。
仕方がないので観念して僕は耳を澄ますと、次に妻のでる行動を見極めようとした。
できればこのままそっとしておいて欲しいものだったが、その望みはいとも簡単に打ち
砕かれた。
「コンコン、何してるの?」声で妻が薄笑いを浮かべているのがわかった。
「なにも」と僕が短く答えると、今度はじゃあ開けろと言

僕は便器に座ったまま、手に届く範囲にある桶やバケツや便所掃除用のブラシをかたっぱしからうごめかして音をたて、シャワーを浴びる前に裸で風呂掃除しているところだと説明し、なんとか事なきを得た・・・と思ったら妻が
「なんで?あなた昨夜寝る前にシャワーしたでしょ」とするどい指摘をしてきたので、思わず「
ラララーメン食べて、いま汗かいちゃったから」とどもってしまった。
僕はその後、トイレの中で少し時間を潰してから、髪の毛だけをちょっと濡らし、まるで本当の風呂上りのようにして「あ~サッパリした」と言いながらバスルームからやっと出ることができた。

妻はテーブルのいつもの位置で、先ほどから僕が出てくるのを待っていたようだった。あーやっと出てきたという顔をして、僕をテーブルにつくように促した。僕が椅子に腰かけると、妻が封筒に入ったカードのようなものを無言で僕に差し出した。
封筒の中身はウェディング アニバーサリーのカードが入っていた。
僕がすべてに目を通してから、カードをテーブルの上に置くと、
妻がすかさず「11回目の結婚記念日おめでとう。これであなたが忘れたのも11回目ね」と皮肉
っぽいことを言ってってきた。
僕は、その時ばかりは何も取り繕うこともせずに、素直にあやまった。
そしてついでに一つ
になったことを聞いてみた。
「でも、なぜ朝からこんな準備をしたの?」
妻は、少しの間考えて
「少しでも早くあなたにお礼が言いたかったのとぉ
、私あとで出かけるから」と言って笑った。
僕はその優しい妻の言葉に、正直どう応えてやればいいのかとまどった。
そして口をついて出てきてしまったのが、つい今しがたトイレで繰り広げられたいきさつだった。
18年(同居生活)も
一緒のいて、妻の前でオナラをできないこと。いつも妻の目のとどかない所で用を足していること。
人は女々しいと言うかもしれないが、僕自身はそうは受け取っていない。
旨くは言えないが、、嫌われたくないと思ってるから、そんなことをしてしまう。
こらもひとつの愛情の表現じゃないか。
妻はそれを聞いて「ばかねえー」とか「へんなの」とか言って笑っていたが、僕の方は
最初は冗談半分だったのが、話をするうちにどんどん真剣になっていき、どんどんエスカレートして、とんでもないところまで行き着いて、とうとう妻のことを愛していることに心から気づいた時には、思わず涙がこぼれそうになってしまった。
それを見た妻は「わかったからー、もー来年忘れないでよ」と言ってティッシュを渡してくれたが、そこにも妻の目の前で鼻をかめない自分がいた。


臭いものから出たまこと という言葉があるかないかは別にして
ひょんなことから、意外な事が僕の心に光をあて、自分に対する理解が鮮明になった第11回目の結婚記念日。
「おっかしいんじゃない」という声も方々から聞こえてきそうだが、
僕にとっては、
一生心に残る記念日になったと思っている。