ビコール狂詩曲 ギョウちゃんが いく -15ページ目

ビコール狂詩曲 ギョウちゃんが いく

ビコールの魚屋のブログです。行きがかり上フィリピンに住むことになった時の所持金は、僅か7000ペソ。
その後、山あり谷ありを経て18年後の今もなんとか生きてます。

2012年。あまり働かない宣言をしていたが、最近そうもいかなくなってきた。
別に仕事が忙しくなっってきた訳ではないが、僕の一番信頼する従業員のミルドレッドが現在休職中なのだ。
彼女はとても有能なアカウンタントで、マネーメーカーであり、その上魚屋には不釣合いな秘書と呼ばれることに嬉々として、僕に付いてフィリピン中を飛び回ってくれていた。
僕にとっては妻の次にいなくなると困る人であった。

そのミルドレッド。実は先月の30日に結婚するはずだった。
今年44歳になる少しおくての彼女には、10年以上も思い続けたボボイという初恋の人がいた。
ボボイには妻子がいたが、正式には結婚していなかった。なぜなら妻と言われるその女性が、以前結婚をしていたからだ。
フィリピンの法律ではいまだに離婚はできない。アナルメントと呼ばれる結婚自体を無効にする手続きもあるが、費用も掛るし一般的ではないのだ。

ボボイは僕も良く知ってるカマリネス・ノルテの網元をしている46歳の男だ。
ハンサムで背が高く、羽振りが良い。そしてそんな男達のご多分にもれず、彼も女たらしの遊び人だった。
だからミルドレッドとの関係を知った時には、思わず呆気にとられた。彼が相手にしていた女達とはあまりにも彼女は違いすぎたからだ。年齢も容姿も。
ただそんなボボイも、こと商売に関しては愚直なほど誠実な男で、僕が非常に信頼していた人間の一人でもある。
以前はハバーガットと呼ばれる南西モンスーンが吹き始めると、決まって彼の所へうちの漁船を預けたものだ。僕はそれほど彼の仕事振りを気にっていた。
その二人が今回結婚すると言うのだった。

ボボイが、そのことで話があると家を訪れた時、荷台が空の5トントラックを一人で運転してやってきた。自家用車も金も家も全て内縁の妻にあげてしまったのだと言う。
それもこれもミルドレッドと一緒になりたいがために・・・
でも僕には俄かに彼の言っていることが信じられなかった。繰り返し言うが、彼の元にはミルドレッドよりはるかに若くて、美人で、スタイルの良い女達が群がってくるのだ。
僕は決して女性の外見だけで、その人を判断するわけではない。
ただ、ボボイのことを良く知っていると思ってる自分には、彼の心境の変化にも素直にうなずくことができなかった。
「気まぐれではすまないんだぞ、ボボイ」僕は彼を睨んでそう言った。。
あの時の思いに沈むようなボボイの顔がいまだに忘れられない。

そしてついに僕の心配していたことが起きてしまった。
式の直前になってボボイが雲隠れしてしまったのだ。
やっぱりただの気まぐれだったのか・・
それなのに、式の日になれば、彼が必ずやってくると信じていて、予定通りに式を行うと言ったミルドレッド。
何もかもが痛ましかった。

現在ミルドレッドは、故郷の島に帰って心の平静を取り戻そうともがいている。
でも焦ることはない。ゆっくりとやればいい。
今は時間だけが頼りなのだから。やがて晴れる日がくることを信じて・・・・

ミルドレッド、僕たちはいつまでも君を待っている。