栗の山に心を預けて──佐久市「ピータース」の和栗モンブラン体験記
秋の風が頬を撫でる頃、長野県佐久市にある洋菓子店「ピータース」に足を運んだ
目的はただひとつ。SNSで見かけて以来、ずっと気になっていた「和栗モンブラン」を味わうこと。栗好きとしては、見逃せない逸品だ。
店内に入ると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。焼き菓子の香ばしさと、生ケーキの繊細な香りが混ざり合い、まるでお菓子の森に迷い込んだような気分になる。ショーケースの中には、宝石のようなケーキたちが整列していて、その中でもひときわ存在感を放っていたのが、目的の「和栗モンブラン」だった。
見た目からして、もう芸術
まず目を奪われたのは、その造形美。細く絞られた栗のペーストが、まるで山の稜線のように幾重にも重なり、頂にはふんわりとした生クリームがちょこんと乗っている。
粉砂糖が雪のように舞い降りていて、まさに“モンブラン”の名にふさわしい姿。
紙製の器に収まっているのも、どこか素朴で温かみがあって、和栗の優しさを引き立てている。
ひと口目。フォークを入れると、栗のペーストがしっとりと崩れ、中からふわふわのクリームと、香ばしいメレンゲが顔を出す
口に運ぶと、まず広がるのは和栗の深い甘み。
洋栗とは違い、どこか土の香りを感じさせるような、自然の滋味が舌に染み渡る。砂糖の甘さではなく、栗そのものの甘み。これは、栗を知り尽くした職人の仕事だと感じた。
食感の三重奏
食べ進めると、食感の変化が楽しい。外側のペーストはなめらかで、内側のクリームは軽やか。そして底のメレンゲがサクッと音を立てる。この三層が口の中で混ざり合う瞬間、まるで秋の山を歩いているような気分になる。落ち葉を踏みしめる音、澄んだ空気、遠くに見える山の稜線──そんな情景が浮かぶのだ
ちなみに、モンブランの名前の由来は、フランス・アルプスの最高峰「モン・ブラン(白い山)」から。その名の通り、雪をかぶった山のような見た目が特徴だが、日本では栗を使ったものが主流。特に長野県は栗の名産地として知られ、佐久市周辺でも質の高い和栗が採れる。ピータースのモンブランも、地元産の栗を使用しているとのことで、地産地消の精神が感じられるのも嬉しいポイントだ

心に残る余韻
食べ終えた後も、口の中に残る栗の香りが心地よく、しばらく余韻に浸っていた。コーヒーとの相性も抜群で、苦味が栗の甘みを引き立ててくれる。店内の窓から見える佐久の風景も、どこか優しくて、モンブランの味と重なって見えた
ピータースは、地元の人々に愛される洋菓子店で、季節ごとの限定スイーツも人気。今回の和栗モンブランは、秋限定とのことで、まさに今しか味わえない贅沢。遠方から訪れる価値は十分にあると思う。

まとめ:栗好きの聖地、ここにあり
「ピータース」の和栗モンブランは、ただのスイーツではなかった。それは、秋という季節の記憶を閉じ込めた小さな芸術作品であり、栗という素材への敬意が込められた一皿だった。見た目、味、食感、そして余韻──すべてが調和していて、食べる人の心をそっと包み込んでくれる。
佐久市に訪れる機会があるなら、ぜひ立ち寄ってみてほしい。そして、ひと口食べた瞬間に広がる栗の世界に、身を委ねてみてほしい。きっと、あなたの秋が、ひとつ豊かになるはずだから。


