この時期になるとどこにいっても花火、夏祭りとどこか週末はみんな浮かれ気分。
 例年なら私はそんなことはなかったけど、今年は違った。
 会社仲間や、その関係で強引に知り合った男にも誘われたけど、全部断った。
 彼の町の花火にカスミから誘われていたから。

 地元にいた頃は、浮かれるでもなくイベントごとの一つとして、毎年彼氏なり友人と行っていた。去年は彼と知り合っていたけど、祭の話はそれほどしてなかった。
 海沿いに上がる花火を浴衣を着て見る恒例行事。
 幸か不幸か、今は地元に帰るよりも彼の町に行く方が近いし、もし地元が近くても、地元に住んでいても彼のところに行ったと思う。
 浮かれていたのとはちょっと違う、何かすごく大事なものを残すためのもの。そんな感じ。

 今年は浴衣はなし。着付けは出来るけど期間限定の一人暮らしの生活に持ってきてるわけもない。
 花火は日曜だったから、祭の終わりに合わせて帰る予定にもしていた。タイミングのいいことに、今週は土日でなく日月と休みだったので、場合によっては一泊することもできた。

 カスミは今風で、ワンタッチ式の丈の短い浴衣。彼女には似合っていると思うけど、風鈴のピアスと言い、すごく若く、幼く見えた。私とは正反対。
 彼は普段どおりで、私は化粧と髪型、そして彼と同じ三角に開いたピアスに赤い石をはめた。やっぱりというか彼は目に入ったと思うけど何も言わなかった。カスミのようにいちいち許可をとっていたら断られるに決まっているから、黙ってやったもの勝ち。

 サークルメンバーも花火は見るらしいけど、花見とは違って人の多さもあったから、彼とアイの三人で行動。そして、驚くほど会場が狭かった。あるいは、会場のわりに人が多かったのかもしれない。
 カスミははぐれるからとかいうわけのわからない理由で手を掴んでもらっていた。可能性がないわけでもないけど、あれはただつながっていたいという理由だけのはず。
 先を越されたとも思ったけど、それほど残念な感じはない。彼とカスミを見ていると恋人というより姉妹とか、まさしく女の片想いという感じにしか見えない。
 くだらない、ほんの少しの優越感。

 花火は思いのほか近かったし、雑踏もあって相当近くで話さないと声が届かなかった。
 道路沿いの交通整備の笛の音と怒号が耳障りだった。
 距離的にカスミとは話せなかったし、彼女は携帯で必死にこの日をかたちに残そうとしていた。

 明日、休みなんだけど泊まっていい?

 カスミいるけどどうするつもり?

 耳元で囁くけど答えに違和感。この祭の雰囲気がそうさせたのか、なんで彼女が出てくるんだろう。カスミがいなければ私と一夜をともにすることも辞さない、そんな感じ。

 このあとみんなと合流するんだよね?

 そうみたいだね。どこかいく? 酒飲んだから動ける場所ってないけど。

 考えられるところは一つしかなかった。彼の家にはこの状況では無理だろう。絶対にカスミはついてくるだろうし、何より一軒家の一人暮らしで騒ぎたい放題、サークルメンバーも集まって二次会と称した飲み会があるのは目に見えている。

 とりあえず、私花火終わったら帰ることにするから、一人で見送り来て?

 わかった。

 そばにカスミがいながら何て会話だろう。友人だろうか、通りかかった女性と何か話してる。
 今夜のことは彼のせいにしよう。つい最近、彼とは関係をもったから。あの時の感触が忘れられなくて、まだ残っていて、それを欲していた。相性は抜群だと思う。それにあの温かさ、優しさとその間に見える激しさ。

 はしゃぎながら携帯で記録を残す彼女。目が合った。笑顔--- あとで送るからね。そう聞こえた。

 謝る必要はないけど、でも。
 ありがとう、ごめんね、カスミ。あなたにとってはいい日にならないかもしれない。
 私は今日も---