彼とは、会った。
私からすればやっと、という感じ。知り合って半年くらい過ぎた時のある日だった。年末は結局別れた彼女と会うという理由で断られた。まだ邪魔をするのかと思った。
関係の難しさはわかる、遠距離の気持ちもわかるし、それ以外にもいろいろ大変なことはあるだろうから。何より彼女はまだ若い。
好きだけど一緒になれない気持ち。付き合う段階で想像がつくことを、付き合っていく段階になって考え直したりして、それを別れる理由にしてるならどうしようもなく最低だけど。
彼とは離れたり、本当に大変なことがたくさんあったけど、この日が来たからよかった。
何度も拒まれて、何の気まぐれか会うことを了承してくれた。彼女とも別れてるし、私も別に付き合ってる人はいない。
私は彼のことを想ってる。彼は別れた彼女を想ってる。
正月休み明けの次の週、連休と有休を利用して会いに行った。年末彼に会う予定もつぶれて、年始はやけになって早めに仕事を始めたから簡単に休みはとれた。
それくらいしないと、1日で会うには移動に時間がかかりすぎる、そんな距離だったから。
一泊やそこらじゃ往復の移動時間の方が長い。
実は、彼は私の顔を知っているけど、私は彼の顔を知らない。でも、そんなことはどうでもよかった。
年明け間もない真冬の深夜、初めて降りた駅。自分の町を出るときは雪が降っていた。
彼と会う街はちょっと暖かくて雪の気配すらなかった。
広い階段の横に、この時間だからなんだろうけど、もう動いてない狭いエスカレーター。
わざわざそこを上がってきた。
駅の東西をつなぐ連絡路。一部が吹きさらしになってて、確かに風は冷たかった。
顔はわからないけど、雰囲気でそうだと思った。そもそも地方都市の夜遅い駅なんて人がいないから、雰囲気でわかったのは言い過ぎかもしれない。ただ単に人がいなかっただけ。でも、私とは無縁のロマンチックな出会いだと思って、ドキッとした。
もう遅いながらも、目の前にある柱に隠れて、上がってくる男性の死角に入ろうかとも思った。
彼だった。
お互いを認めたうえで、特に会話することもなく彼の来た階段をおりていく。
駅前の広場、噴水があった。そこで座って話をする。
言葉しかかわしたことがないけど、イメージとそんなにかけ離れていなかった。
意外と優しかった。画面の向こうの彼は、優しさと冷たさが半分くらいだった。会った時の印象は大事。画面越しの付き合いの時にあった冷たさが抜けると、ますます会ってよかった、それだけじゃない、好きになってよかった。
地方都市の田舎の深夜は本当にやることがなかった。彼も寒そうだったし。平気な私からすれば笑えた。寒さに震える彼は聞いてきた。
どこいこうか?
ホテルでよくない?
彼は何も言わずにほんの少しだけ前を歩き、きっと私の歩幅に合わせるようにして、乗り場に行き、タクシーに乗り込んだ。
ファミレスだとか、お互いの年齢を考えるとゲーセンでもない。お互い歌は好きだからカラオケならありかもしれないけど、もっと他に確かめることがあった。触れられる距離にいる彼をもっと感じたい。
ホテルの前にあるコンビニで軽く買い物をしてそのままホテルへ。手馴れた感じ、よく使ってるんだろうな。
彼はソファーに、私はベッドに腰掛ける。他愛もない会話をして沈黙の繰り返し。
このままじゃ何も起きなさそうだったから、自分から動こうと決めた。
私が望んだことだからそれでよかった。
彼を先にシャワーに促す、タイミングをみはからって、私はその後を追った。
私一人がシャワーを浴びてる間に、彼がいなくなることを想像したから。
彼は少し驚いた様子で浴室に入る私を見た。キスすらしてないのにお互い裸で顔を合わせるって少し笑える。銭湯とか温泉に来た感じ。お互い意識しつつも触れ合わずにそれぞれのことをする。湯船に一緒に入ることもなかった。
シャワーからあがり、着の身着のままで部屋へ。大人の男女だ、会話もそれほどない。
他にやることなんか残ってなかった。でも、
後悔しない? 初めて顔も見た男だよ? 今ならまだ戻れる。
顔なら駅で見た時からわかってるよ、何もない方が後悔すると思う。
軽く頷くと彼は少し微笑んでくれた。ここまで着てようやく彼の体に初めて触れることができる。心は私に向いているとは思えないけど、温かかった。それは純粋に彼の体温だったのか、心だったのか。
私からすればやっと、という感じ。知り合って半年くらい過ぎた時のある日だった。年末は結局別れた彼女と会うという理由で断られた。まだ邪魔をするのかと思った。
関係の難しさはわかる、遠距離の気持ちもわかるし、それ以外にもいろいろ大変なことはあるだろうから。何より彼女はまだ若い。
好きだけど一緒になれない気持ち。付き合う段階で想像がつくことを、付き合っていく段階になって考え直したりして、それを別れる理由にしてるならどうしようもなく最低だけど。
彼とは離れたり、本当に大変なことがたくさんあったけど、この日が来たからよかった。
何度も拒まれて、何の気まぐれか会うことを了承してくれた。彼女とも別れてるし、私も別に付き合ってる人はいない。
私は彼のことを想ってる。彼は別れた彼女を想ってる。
正月休み明けの次の週、連休と有休を利用して会いに行った。年末彼に会う予定もつぶれて、年始はやけになって早めに仕事を始めたから簡単に休みはとれた。
それくらいしないと、1日で会うには移動に時間がかかりすぎる、そんな距離だったから。
一泊やそこらじゃ往復の移動時間の方が長い。
実は、彼は私の顔を知っているけど、私は彼の顔を知らない。でも、そんなことはどうでもよかった。
年明け間もない真冬の深夜、初めて降りた駅。自分の町を出るときは雪が降っていた。
彼と会う街はちょっと暖かくて雪の気配すらなかった。
広い階段の横に、この時間だからなんだろうけど、もう動いてない狭いエスカレーター。
わざわざそこを上がってきた。
駅の東西をつなぐ連絡路。一部が吹きさらしになってて、確かに風は冷たかった。
顔はわからないけど、雰囲気でそうだと思った。そもそも地方都市の夜遅い駅なんて人がいないから、雰囲気でわかったのは言い過ぎかもしれない。ただ単に人がいなかっただけ。でも、私とは無縁のロマンチックな出会いだと思って、ドキッとした。
もう遅いながらも、目の前にある柱に隠れて、上がってくる男性の死角に入ろうかとも思った。
彼だった。
お互いを認めたうえで、特に会話することもなく彼の来た階段をおりていく。
駅前の広場、噴水があった。そこで座って話をする。
言葉しかかわしたことがないけど、イメージとそんなにかけ離れていなかった。
意外と優しかった。画面の向こうの彼は、優しさと冷たさが半分くらいだった。会った時の印象は大事。画面越しの付き合いの時にあった冷たさが抜けると、ますます会ってよかった、それだけじゃない、好きになってよかった。
地方都市の田舎の深夜は本当にやることがなかった。彼も寒そうだったし。平気な私からすれば笑えた。寒さに震える彼は聞いてきた。
どこいこうか?
ホテルでよくない?
彼は何も言わずにほんの少しだけ前を歩き、きっと私の歩幅に合わせるようにして、乗り場に行き、タクシーに乗り込んだ。
ファミレスだとか、お互いの年齢を考えるとゲーセンでもない。お互い歌は好きだからカラオケならありかもしれないけど、もっと他に確かめることがあった。触れられる距離にいる彼をもっと感じたい。
ホテルの前にあるコンビニで軽く買い物をしてそのままホテルへ。手馴れた感じ、よく使ってるんだろうな。
彼はソファーに、私はベッドに腰掛ける。他愛もない会話をして沈黙の繰り返し。
このままじゃ何も起きなさそうだったから、自分から動こうと決めた。
私が望んだことだからそれでよかった。
彼を先にシャワーに促す、タイミングをみはからって、私はその後を追った。
私一人がシャワーを浴びてる間に、彼がいなくなることを想像したから。
彼は少し驚いた様子で浴室に入る私を見た。キスすらしてないのにお互い裸で顔を合わせるって少し笑える。銭湯とか温泉に来た感じ。お互い意識しつつも触れ合わずにそれぞれのことをする。湯船に一緒に入ることもなかった。
シャワーからあがり、着の身着のままで部屋へ。大人の男女だ、会話もそれほどない。
他にやることなんか残ってなかった。でも、
後悔しない? 初めて顔も見た男だよ? 今ならまだ戻れる。
顔なら駅で見た時からわかってるよ、何もない方が後悔すると思う。
軽く頷くと彼は少し微笑んでくれた。ここまで着てようやく彼の体に初めて触れることができる。心は私に向いているとは思えないけど、温かかった。それは純粋に彼の体温だったのか、心だったのか。