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M・W・N リポート NO,60 消えた国盗り物語 ダブルとトリプル 4

『・・・何となくここで全体の構図が視えて来たような気がするのだが。Mr.ハンニバルが会見の始まりの方で、全地球を地中海化するのが目的であると仰ったハズだが、その運動の軌跡みたいな事が・・。』 とグレゴリーは応えた。
『どんな風に想像しておられるのでしょう・・? よろしかったらお聞かせ下さればそれに補足させていただくことも出来るかと思いますが・・。』 とハンニバル。
『それは私に対する挑戦ですかな・・? 』 とグレゴリーはハンニバルに唇を(へ)の字に結んだ眼差しで質問した。そして続けた。
『良いでしょう・・・必ずしもMr.ハンニバルのご期待に沿った考えとはそもそも思わないですがな・・。』
『それはまぁ、何とも申し上げられませんが・・。』 とハンニバルは腕を拡げたジェスチャーと共に応えた。
『ふむ・・。つまり、アメリカの存在はヨーロッパ文明を越えた太古時代の・・ギリシャ文明草創期を勢力下に置いていた地中海世界の謎の都市国家文明であるミノア文明の様な・・・時間を遡ったというか、まるで原初地中海文明への回帰を目指しているのではないのか、とね・・。まぁ、そんな風な感じで捉えているのだが。』 とグレゴリーは自制するかのように応えた。
『えぇ、基本はそう考えてもらえれば良いかと思いますね。何といってもヨーロッパを越えようと意識すれば、ギリシャ神話世界の大本を押え、且つそれを体現化すればアメリカのルーツ、ヨーロッパを睥睨(へいげい)する事は容易くなりますから・・。』 とハンニバル。
『・・全世界を地中海化するのが目的である、みたいな事を仰ってらしたのは単に古代ローマ帝国の様な権力構造だけではダメで、古代ローマ共和国成立のお手本であるギリシャ共和国をもその支配下に治めていたミノア文明にまで遡らなければダメという事ですな。・・・という事は? ・・つまりこぅいう事ですか・・・』 とグレゴリーはふと思い付いたような顔をして再び続けて応えた。
『ニッポン神話のイザナギ/イザナミの例の婚姻儀式で柱を真ん中に右回り、左回りの話がありましたな。それで始めは女方のイザナミの誘いで国産みすると未熟児というか、まともな子供が生まれず捨てられてしまう。そして今度は男方のイザナギの誘いで国産みをしてゆく・・そうしてニッポン列島の開闢となるのだが、ヨーロッパにもそれと似た様な状況があった訳だ。ニッポンは火山列島に相応しく、地球造山運動を連想する話になっているのは判るが、果たしてヨーロッパはというと・・? 半島大陸で安定した大地・・そして太陽神ミトラスに、北欧神話、ギリシャ神話と牛を巡る話が多いですな。ひょっとして牛とはやはり牛の形をしたヨーロッパ全体の事を暗示したモノなのだろう・・。しかし何と言いますか、ニッポン神話の様な、男女神の交わり的な事が国産みしたとかは無いような感じですな・・。』
『全体的に、氷河期から脱して地中海が拡大して行く辺りを北欧神話は捉えているようですね。それがヨーロッパの地質的な国産みだと思います。しかしゼウスは牛に変身して北アフリカの女王、エウローパを誘惑したりと、ニッポン神話に負けず劣らずお盛んダト思いますよ・・。』 とハンニバルは答えたのを受けつつも少々イラついた感じで応えた。
『・・いゃ、それはいいんだが・・・何か引っ掛かるんだがね。ゼウスが牛に化けるとして、ミノス王の件で・・何故、ポセイドンから白い牡牛を犠牲に捧げる事を約束しつつも裏切り、他の黒い雄牛を犠牲として捧げ、ポセイドンから預かった白い牡牛を手に入れたのか・・? これはやはり、ヨーロッパ全体を手に入れる、乗っ盗る事の暗示と捉えるべきなのか・・。全能神ゼウスの兄、ポセイドンを謀(はか)ってまでも。つまりこれもヨーロッパの将来的な展望としての預言の話になっているのだろうか、とね・・。』 とグレゴリー。
『・・良い視点だと思います。乗っ盗る事でポセイドンの呪いを受け、牛頭人身のミノタウロスを出現させてしまう訳です。ここにヨーロッパ版//海幸・山幸神話であるゼウスとポセイドンの確執の歴史が隠されているのです。とりわけ、20世紀以降のアメリカがヨーロッパにとっても、アジア圏ニッポンにとってもドッペルゲンガーとしての存在に堕して行く過程・・陸のヨーロッパ/ゼウスに対する海のアメリカ/ポセイドンという対立図式をベースにした新たな古代ギリシャ神話の時代が巡って来るという図式ですね。』
『・・ポセイドン。海が主役という訳か。そういえば確か、アメリカは大陸国家にも関わらず、地政学的にはどちらかといえば海洋国家としてその国の方向性を拡大して来た歴史がありましたな。』 
『えぇ、建国そのものが広大な大西洋を渡るところから始まってますから・・。そして広大な大陸平原と砂漠を越えたところで再び、広大な太平洋を前にした訳です。海の主としてのポセイドンは、ゼウスの居ない大陸を見渡して、ちゃっかり二足の草鞋(わらじ)をゼウスに邪魔される事無く履く事が可能であると気付いたのだと思いますね・・。』 とハンニバルは神話ベースでアメリカ開拓史を述べた。
『ほほぅ、なるほど。ヨーロッパ大陸ギリシャ文明・草創期以前の地中海文明の雄、ミノア海洋文明の精神ポセイドンを引継ぎ、復活した古代ローマ帝国として同時に白い牡牛で象徴するヨーロッパ大陸の精神をも盗み取った訳ですな。』 とグレゴリー。
『そうです。ゼウスの立場をコピー・・・ドッペルして手に入れた訳です。』
『なるほど。広大な大陸のうま味と大西洋と太平洋のど真ん中に位置した地政学的なポジションから、両海洋に対して開かれている・・・前にMr.ハンニバルが仰ってた地中海に孤立的に伸びるイタリア半島の移写拡大バージョンが南北アメリカ大陸であるという事が、太平洋における古代ローマ帝国的なポジションを20世紀に誕生させた訳だ。後は歴史を繰り返せば良い訳だ・・。してそのドッペルした姿がミノタウロスという事で良いのでしょうな?』 とグレゴリーは質した。
『えぇ、繰り返せば良いという事で、古代ローマ帝国はニッポンでいえば、ヨーロッパ//ゼウスという「タカマガハラ」に昇って来るスサノオであり、ヨーロッパではオリオンとなりますね。この構図を星座に置き換えれば、牡牛座とオリオン座の天空での闘いが地上に映されて繰り返し時を刻んで行きます。ドッペルしたゼウスだからこそ牡牛の姿を留めたオリオンとなる訳ですね。』 とハンニバル。
『つまりは、ドッペルしたゼウスだから、ゼウスを象徴する牡牛の頭をしたオリオン戦士としての身体をも併せ持ってミノタウロスになる訳ですな。』 とグレゴリーは納得した様に応えた。
『そうです。従って北アメリカ大陸が牡牛の姿を留めているのも納得出来ますし、ミノタウロス伝説が伝える、ミノタウロスを退治するためにミノス宮殿の地下迷宮に入った英雄テセウスの生還を引っ繰り返す様な政治悲劇が、1962年のキューバ危機を無事に治めた英雄に対して翌年下された事が実は、アメリカがヨーロッパの歴史と伝統を引っ繰り返すドッペルゲンガーに成長した瞬間だった訳です。』 とハンニバルは一種、感慨深くも歴史の悲劇に圧倒された感じを覚えつつ答えた。
『フーム、なるほど。結局は、古代ローマ帝国という組織立った軍事力というシステムが国を越え、地域を越えて世界中、人類史が続く限りそれと並行するかの様に存続してきましたわな。その象徴としてミノタウロス伝説を捉えていらっしゃる訳ですな。それは良いとしてその辺りの事情をもう少し詳しくお聞かせ願いたいですな・・。』 とグレゴリーは応えた。
『・・そうですね。基本はギリシャ神話のゼウスvsポセイドンという対立構図の中から出現して来ました。そこで対比として出しますが、ニッポン神話のスサノオでは父のイザナギに海原を治めるように命を受けますが、亡き母を慕い募るあまりに、母の居る黄泉に降るという逸話がありますね。その前に姉の居るタカマガハラに昇って、別れの挨拶をしてからにしようという処からアマテラスの天上界とスサノオの降った・・黄泉では無くイズモという二項対立構図が出現するのです。これと同じ様な構図がヨーロッパでもあると思っております。』 とハンニバルは思わせ振りに答えた。
『ほほぅ、それで? 』 とグレゴリーは表情も変えずに続きを促した。
『えぇ、それでヨーロッパですが、ゼウスは主神として天空を治める全知全能な存在ですが、兄であるポセイドンはスサノオと同じく大海と地上を支配する存在で、その威力はスサノオの乱暴狼藉を彷彿とさせる凄まじさという事で、ここにもニッポン神話と同じ様な構図があるのが解ります。ニッポン神話では、アマテラスとスサノオは「ウケイ」というどちらが優れているかという事を競う儀式で表していますが、ギリシャ神話ではそれは、地中海クレタ島のミノス王に働き掛けての奸計という形で表れていると思います。ゼウスが支配する人と神々の平安秩序に対抗しようと謀った構図の中でミノタウロスという平和な秩序を搔き回す、あるいは破壊する軍事力原理・・とでも言いましょうか・・を仕込んだという神話構造だと思います。』 とハンニバル。
『・・仕込んだ、と言いますと後に出現するローマ帝国ですな。守護神が軍神マルスで、確かに古代ローマ帝国は地中海全域周辺はもとより、カエサルを始めとするヨーロッパ北進政策・・彼の著書「ガリア戦記」は名著として有名ですな。これなど立派なタイムマシン、タイムカプセルだと思いますがな・・それはともかく古代ローマ帝国の支配はイギリスにまで及んだハズですな。』 とグレゴリーは歴史好事家の表情を露わにして応えた。
『・・えぇ、そこで軍神マルスですが、これはギリシャ神話ではアレースと言いまして、ゼウスの息子であるとされています。そこにニッポン神話の父イザナギに抗議するスサノオという構図、父性原理に対抗する母性原理という構図が隠れている様にも思います。ニッポン神話では黄泉から脱出したイザナギの「ミソギ」という清めの儀式からいわゆる三貴神・・アマテラス、ツキヨミ、スサノオが産み落とされますが、ヨーロッパでも三貴神・・アポロン、アルテミス、オリオンがヨーロッパの地政学として初めて出現したと視ておりますね。』 とハンニバルはちょっと自信深げに答えた。
『ほほぉ! 意外な事に地中海の小島・ミノス島の地下迷宮から、ヨーロッパの反対に位置するニッポンの地政学/神話原理である三貴神とシンクロナイズするヨーロッパの三貴神が出現したとは・・? 』 とグレゴリーは質しながらハンニバルに続きを促した。
『・・それはやはり古代ローマ帝国のカエサルのヨーロッパ内陸部への北進政策が発火点となっております。具体的には、ヨーロッパ中央部全域の森林地帯にケルト民族が居た訳ですが、ローマの領域が拡大して行くに従って遠く、イギリス島、アイルランド島にまで逃れて行っているのです。後の時代に古代ローマ帝国は、北方からのゲルマン民族の南下現象の中で・・太陽神の鉄槌(てっつい)の様な審判にさらされて崩壊して行きますね。ローマが崩壊した後、ヨーロッパ全域に渡って覇権を敷いたのは御存知、北欧のヴァイキングの出現まで待たねばなりませんでした。それはともかくここに後のヨーロッパの地政学基本原理・・アポロンとアルテミスとラテン地中海のオリオンが出揃った訳なのです。ニッポンの三貴神がイザナギとイザナミの黄泉での追跡劇と脱出によって出現した様に、ヨーロッパでも北欧の父性原理と南欧の母性原理の対立関係・・奸計の中で、三貴神が出現した訳です。この東西の三貴神構造が、15世紀から20世紀に架けての世界構造を出現せしめた訳です。』 とハンニバルはここまで答えて息を着いた。


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M・W・N リポート NO.59 消えた国盗り物語 ダブルとトリプル 3

『・・鏡の中の闘いで、ドッペルゲンガーに喰われたカタチになりますな。【「正邪」必衰の理り】とは北欧神話の最大のメインテーマでもあるが、どこかインド哲学・・ブッ教の空無の思想の様でもあるな。』 とグレゴリーは知ったかぶりの風に応えた。
『イエローストーン超弩級火山を聖方位リングの位置関係で視てみると、アメリカという新大陸は、プレアデスの精神に基ずいて建国されていると前に言いました。つまり、ヨーロッパのコピーであるという事なのですが、同時にプレアデスに対抗する、オリオンとしての性格も併せ持つ様です。何故ならば、ヨーロッパのコピーであるという事は、ヨーロッパが太陽神ミトラスに剣で屠(ほふ)られている牡牛の姿という神話の形で存在すると仮定しておりますから・・であるならば、イタリア/古代ローマ帝国が象徴するオリオンとしての剣・・イタリア半島に対応する処が無ければいけないからです。そしてアポロンに対応する処が無ければいけません。・・とこの様に考えて来ますと、北アメリカ大陸も牡牛ヨーロッパ型地形の様に、牡牛の形をしているとなる訳なのですが、果たしてその通りであると言えますね・・。』 とハンニバルは答えた。
『・・それはまたどういう視方ですかな? 太陽神アポロンの様に牡牛に張り付いているカタチが新大陸の地理上にも在るという事になるが・・・ご教示願いたい。』 とグレゴリーは質問した。
『それはアラスカを頭部として牡牛を上方俯瞰(ふかん)視点から下に眺めるという感じで・・そうしますとそれが地球・球面体上に四肢を拡げて張り付いている様に視えないでしょうか? 』 とハンニバル。
『・・ウ~ム、何となく視えない事も無いが・・。』 と言ってグレゴリーは口を濁らせた。
『・・ではこれは如何です? 』 と言いハンニバルはグレゴリーの机上スクリーンにに画像データを送りつつそのまま続けた。
『ご存知、フロリダ半島の下、メキシコ湾に位置するキューバ島ですが・・ヨーロッパ半島大陸に剣を突き刺す太陽神ミトラスがスカンジナヴィア半島で表現されていれば当然ながら新大陸にもそれに匹敵する表現が無ければいけないとなります。ここまでは良いでしょうか? それで果たしてそれは在るでしょうか? 』 とハンニバルは問いかける様に答えた。
『キューバ島がそれに相当すると仰りたい訳ですな・・? 』 とグレゴリー。
『そうです。ちゃんと地球人の歩む歴史事象に合わせる様な表現でそれが新大陸に付随するカタチで在るのです。これを発見した時は思わず声を上げて笑ってしまいましたが・・。』 とハンニバルは少々二タッとした表情で答えた。
『ほおぅ、Mr.ハンニバル程の冷静さを持つ人物を笑わせてしまうとはさぞかし的確な表現が成されているのでしょうな・・? 』 とグレゴリーは皮肉を込めて言った。ハンニバルはそれを受け流し、グレゴリーの理解をサポートする様に続けた。
『・・確かに在ります。初めはセルバンテスの有名な寓意小説、ドン・キホーテの騎馬姿だと思ったのですが。実は今でもそう考える方が良いと思っているのですが・・それはともかく、キューバを最大の島だとしたらそれに付随する様に東方に向かって続けて点在するジャマイカ島、ハイチ、ドミニカ共和国、それにプエルトリコ島と来て、更にキューバの北方に点在するバハマ島とその他の島々及び環礁群全体で、ドン・キホーテの騎馬姿が新大陸に向かって進撃する様子を表現していますが如何でしょう・・? 』 ハンニバルはグレゴリーのスクリーンに画像データを更に送ると、グレゴリーはどれどれといった面持ちで観始めた・・。
『ははん、なるほど。丁度、馬の胴体部分から下はカリブ海の水面下に隠れ、キューバ島が表現する首部から東部に架けて点在する島々で、必死にドン・キホーテを背負いながら新大陸に向かって海水を掻き分けつつ進撃している様に視えて来た感じがしますな、確かに。ふむ、面白い・・。大航海時代にヨーロッパから数多くの帆船を伴って、荒くれ男達が新大陸、アフリカ大陸、アジア大陸に向かって船出して行く歴史事象の象徴みたいな感じで島々が点在していた訳か・・。』 
『えぇ、そう解釈するのが自然でしょう。新大陸に馬は元々生息していませんでしたから。ヨーロッパから人間が渡って来るまでは・・。』 とハンニバルはさり気なく人類史の中での旧大陸と新大陸の最大の相違点と、両大陸が交わる時代背景にはどの様な歴史が繰り広げられたかを込めて発言したのをグレゴリーは見逃さなかった。・・ハンニバルは続けた。
『またドン・キホーテといえば妄想に憑りつかれて風車小屋を敵の襲撃と見間違い、攻撃を仕掛けるなどしますが、ヨーロッパが新大陸に住む原住民に対して行った数々の蛮行・・・人類全体から視ればある種の偏見という色眼鏡で新大陸を視ていた事へのそれは痛烈な風刺となっております。』
『・・確か、ドン・キホーテの向かって行く風車小屋は当時の新興国オランダの象徴でスペインとと対立関係に入っていたハズだ。そして来たるべくスペインの没落とオランダを始めとする新興国がヨーロッパの主流に成って行く暗示であるとする分析もあったのではないですかな・・。』 とグレゴリーは話のポイントをつかんだ様に感じつつ応えた。
『えぇ、そうですね。同時に旧教と新教の交代劇でもあった訳です。その図式がそのまま新大陸への侵略と開拓として輸出され、その図式の狭間に挟まれて犠牲となった訳ですね、原住民たちは・・。従ってメキシコ湾の入り口にドン・キホーテを彷彿とさせる島々の配置が在るのは実に預言的であると思われるのです。初めニューヨークはニューアムステルダムと呼ばれていた事はご存知でしょうか・・? 実質としてはヨーロッパ旧教国が南北アメリカ大陸を獲得領土としておりましたが、後からやって来た新教徒達が買い足して次第に合州国としての形を創り上げて行く過程が新大陸の歴史観なのですね。もちろん、戦争としての解決手段も行われたのは言うまでも無い事ですが・・。』 とハンニバル。
『・・そうすると、ヨーロッパでの長期間にわたる抗争の歴史を短縮する形でコピーするかの如くに歩んで来たのが合州国となるのか・・。』 とここまでグレゴリーは意見を述べたところで何か気付いた様で続けて言った。
『・・・コピー、コピー・・どこか前に、ニッポンの歴史はヨーロッパのコピーの様な歴史事象を狭い国土の中で、ニッポン神話の骨格構造をベースにしつつ築いて来たという様な事を先ほど自分で言いましたな。アメリカも実はその国内史に於いては、ニッポンと同じような成立過程を経て来たのであろうか・・? 』 
『えぇ、そうだと思いますよ。従ってそういう意味でニッポンとアメリカは、ニッポン神話とニッポン神話の変異バージョンに基ずいた、太平洋を挟んでの陰と陽の関係にあるのです。ここにシントー儀式での鏡の鏡像原理である相対性の警告としての意味があったのです。それはともかく、両者共にその飛躍のチャンスを握っていたのが兎であり、月でもあるイギリスとの関係であるのは今までで説明して来た通りです。新大陸にとって、イギリスが横槍を入れて来る事は当時、最も厄介な政治問題で、イギリス、アメリカ双方険悪な間柄になっていたのは歴史書の語るところです・・。』 とハンニバルは答えた。
『・・とおっしゃると、ニッポンはその飛躍のチャンスを打ち消す事で後の時代のアメリカに押されまくる下地を作り、アメリカはイギリスの手枷足枷(てかせあしかせ)を断ち切る事で、第二のヨーロッパ世界を創り上げた、とこういう事になりますな・・。ある意味、ニッポンがアメリカの発展を許してしまった・・障壁に成るのを辞退してしまった結果というべきなのか・・。』 とグレゴリーは発言しつつ、口籠る様に考えに沈んだ。
『そして時が降った第二次大戦後の1962年、キューバ危機が勃発します。この国際政治的な事件は、新大陸にとっての旧世界からの剣の一刺しであった訳です。勇者ドン・キホーテの突撃にも関わらず、アメリカは辛うじてオランダの風車小屋の風車の如く、ロシアの・・当時のソヴィエト連邦の軍事圧力を跳ね返しましたが・・。これなど牡牛ヨーロッパ地形にまたがり、屠ろうとする太陽神ミトラスの象徴となっているスカンジナヴィア半島が剣を突き刺しているヨーロッパ旧世界を、新大陸でも同じ様に繰り返して再現している図柄だと思います。まさにパロディーとして繰り返しているモノと解釈します。』 とハンニバルは畳み掛ける様に答えた。
『・・なるほど。しかしパロディーと言われるほど喜劇的とは言えませんがな。かなり深刻な状況であったと地球人類史で学んだ記憶がありましてな・・。核戦争一歩手前まで行ったとか・・。まぁ、後の時代に同じ様な状況を作り出して崩壊して行ったのだから、予告であったトハ言えるかも知れないが・・。』 とグレゴリー。ハンニバルはその発言を気にする風でも無く続けた。
『・・この様にドン・キホーテの物語など古典として長期間にわたって読み継がれて来たモノには何某かの真理が隠され横たわっていると思いますね。作者の思惑を超えた未来の構図が無意識的に描かれる訳です。その骨格には必ず神話構造が在ると思います。そしてその神話構造は、ギリシャ神話の時代を越えた太古時代の太陽と月と地球を巡る三角関係が原点になっており、その原初的な神話を保持しているのが御存知ニッポン神話である訳です。そしてギリシャ神話の原点としてのエジプト神話なんです。・・蛇足ですが、ニッポン文字でキューバとかバハマと綴(つづ)る場合、ride on a horseの意味があり、それがキューバとなり、horse landing on a beachの意味がバハマとなるのです。』 
駆馬➔CUBAキューバ。               馬浜➔BAHAMASバハマ。
それに対してグレゴリーは素っ気無く応えた。
『・・便利ですな。それにしても太陽神の一突きと、人間がこしらえた不完全で原始的な太陽の一突きが対応している様で興味深いですな。20世紀後半からは核兵器のひと睨みが二項対立、東西冷戦構造と確か言いましたか・・の最大の抑止力として機能していたのですな。何かこぅ~っ時代が下って、パロディーとして人間が神話劇を地上で顕現させる場合は巨大な国際政治的な動きとして、それと気付かない構図で差異を伴いながら反復するのですな・・。』 と応えるにとどめた。
『それがフラクタル構造体の性質でもある訳です。ところで前に私は第二次大戦までで、第二次国譲り神話は世界規模で実現し、それ以降は第三次国譲り神話の世界的規模において成就するための準備過程期間であるというお話をしたと思いますが、1962年の例のキューバ危機がヨーロッパのドッペルゲンガーとしての存在態であるアメリカ合州国を根本的に基礎付けした国際事件であると思うのです。』 とハンニバル。
『・・アメリカはニッポンにとってもニッポン神話的にドッペルゲンガーであり、ヨーロッパにとってもニッポン神話的かどうかは知らないが、ドッペルゲンガーとしての存在という訳か・・? 』 とグレゴリーは質した。
『えぇ、そうです。それはニッポン神話の三貴神の三項関係と同列なエジプト発、ギリシャ神話の三貴神を地政学として動いて来たヨーロッパ中世から近世に架けての発展史より、遥かに時代を遡った時代のヨーロッパ史を形成したと思われる二項関係・・ニッポンのイザナギ/イザナミ神話に同列なのが、太陽神ミトラスによる牡牛供犠だと思います。つまり何を言いたいかと申しますと、アメリカは地の次元での太陽はイエローストーンとして受け継いでいますが、人の次元での太陽神の移植は第二次大戦以前には実行されていませんでした。』 とハンニバルはひとまずといった感じで息を着いた。
『太陽神の移植・・? まぁ、アメリカは何でも外から移植する移民国家でしたからな・・。あり得ますな・・。』 とグレゴリーは頷きつつ応えた。
『えぇ、そうでしょうね・・。そこでですが、アメリカはソヴィエト共々ヨーロッパ大戦末期のどさくさな混乱にかこつけて、太陽神ミトラスの牡牛供犠・・牡牛座生まれのカリスマを屠ります。以上はいいでしょうか? 』 とハンニバルはグレゴリーに向かって目配せすると、グレゴリーの右手が続けて、という仕種をするのを見てそのまま続けた。『・・そしてギリシャ神話でヨーロッパの主神ゼウスのライバルであるポセイドンから白い牡牛を生贄にする約束で借り受けたミノス王の様に、白い牡牛を生贄にせず手に入れてしまい、代わりの雄牛を生贄に捧げる訳です。ヨーロッパ内陸文明が勃興する遥か以前、エジプト文明とも交易して繁栄したミノア文明のクレタ島の神話ですが。そこから例のミノタウロス伝説が生まれて来たのですが・・御存知でしょうが・・。』 とハンニバルは答えた。グレゴリーはそれに対して顔をしかめながら、『うん? それは一体全体どういう関係になってくるのです・・? よく判らないが。』 と応えた。
『・・つまり第二次大戦を境にして、アメリカは形而上学的にヨーロッパ北欧と南欧の歴史をコンパクトに神話劇の様に、政軍事な人の動きをする事でヨーロッパを自家薬籠中のモノとした訳です。イザナギ/イザナミの不自然な交わりによってヒルコが誕生した様に、ポセイドンはミノス王の妻、パーシバーエに呪いをかけ、パーシバーエは牝牛(めうし)の着ぐるみに入って、雄牛と不自然な交わりをします。それによって誕生したミノタウロスという凶暴性を内に抱え込む事になりましたが・・。』 とハンニバルが答えると、グレゴリーはその、奥歯にモノが挟まった様な物言いに少々戸惑い、いらつきながら応えた。
『それで・・? 』
『女神アテーナーの名に由来するパルテノン神殿が中心にそびえるギリシャの都市国家アテナイ・・クレタ島のミノス王の勢力下に当時在り、毎年七人の若者と七人の乙女をミノタウロスが棲む洞窟に生贄として捧げるよう強制されていたところへ、アテナイの王子テセウス・・アリアドネーの助けを借りて生贄の一人となってミノタウロスの洞窟ラビリンスに入り込み、ミノタウロスを退治する事に成功した・・・この辺り、アメリカはその神話構造を逆転させて、自国アメリカをヨーロッパのコピーとしたのかも知れません・・。』 とハンニバル。
『逆転させた・・? つまり、伝説の英雄テセウスを葬り去り、その代わりにミノタウロスを解き放ってしまったという事かな・・? 』 とグレゴリーは合点がいったという面持ちで応えた。
『そういう事ですね。』 とハンニバルは簡潔に答えた。

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M・W・N リポート NO.58 消えた国盗り物語 ダブルとトリプル 2

『と仰ると・・? ヨーロッパの三貴神の内、聖方位リング上で欠落していると仰る太陽を巡る動きが、北欧神話とギリシャ神話に共通していると・・? 』 とグレゴリーは質した。
『とりわけ、ヨーロッパ中央の仮定上のYの字剣地形をギリシャ神話の視点からは、これまでお話して来た様に、アポロン/アルテミス/オリオンと読みますが、北欧神話の視点からは北欧神話構造を摸式化した図、「ユグドラシル」という世界樹と視ます。北欧神話をざっと見渡してみるとそれは、北欧世界が南欧・・地中海世界権力の北上に伴う歴史的な敗北を象徴的に預言として表したモノと考えられます。北欧側から視れば、「タカマガハラ」に昇って来る乱暴者のスサノオであり、南欧側から視れば、「タカマガハラ」から「イズモ」へのスサノオの降臨・統治という相対的には同じニッポン神話構造が有ると思います。地中海世界は基本的に、タカマガハラであるエジプト文明を淵源〔えんげん〕とし、ギリシャ文明を母とする文明世界であり、北方域世界を蛮族の棲む世界であると低く視ていましたから、その様に相対的な視点で相手を視る事は自然かも知れません。』 とハンニバル。それに対してグレゴリーは、思い出したという感じで言った。
『・・そういえば北欧神話の神々は最後には死ぬ運命にあるのでしたな。それで世界も崩壊して行くというのが大筋でしたか・・。となると、ヨーロッパは南欧と北欧に大きく分かれて、つまりニッポンの古代国内史または、ニッポンvsアメリカの太平洋戦線というタカマガハラvsイズモ紛争統治を北欧神話の立場からと、ギリシャ神話の立場から、双方共に譲らず延々と繰り返して来た事になるのだろうか・・。争いが絶えなかった訳ですな。実際、地球世界がその運命を辿ってしまった過去、一千年間はその復活の世代だったのだがとなるのか・・。これぞ北欧ヴァイキングの伝統、ヴァルキューレの騎行の世代だったのかも知れませんな・・。ヴァイキングとモンゴルが世界を復活させたのだから・・。』 とグレゴリーは少々詠嘆な声音で応えた。
『えぇ、その様な世界崩壊後の復活劇でさえ、ヴァルキューレの騎行として預言されていたのかも知れません。それはともかく、敗北して行く神々の運命のままにヨーロッパ南北史は、北欧神話がモデルになっているのではと思われるのです。例えば、古代ローマ帝国の北進に伴うカエサルとガリア地方の族長として名を成した、ウェトリンゲトリクスとの対決で、ウェトリンゲトリクスの敗北であり、中世期の旧教と新教のせめぎ合いであり、それ以前のヴァイキング/ノルマン人のヨーロッパ支配と、その衰退であり、ルイ14世太陽王とそれに続くナポレオンのヨーロッパ席巻と敗退であり、神聖ローマ帝国無き後、ゲルマン民族の復活を賭けた地政学上の位置から視ても、アポロン神としての復活としてのナチス・ドイツ/ヒットラーの勃興と敗退として括られます。ヒットラーが北欧神話に心酔していたのはよく知られております。そしてそのヒットラーですが、またローマ帝国の復活をドイツの地にて実現しようとしていた事もまた事実なのです。北欧系の人々には20世紀になっても、過っての古代ローマ帝国、ギリシャ共和国に対する憧れは健在でしたし・・。』 とハンニバル。
『・・そぅ言えば、事実19世紀までドイツ地方一帯の北方では、神聖ローマ帝国が続いていましたな。帝国とは言っても名ばかりの、地方自治州の穏やかな連合体だったと記憶しているが・・確か。しかしそれはどういう事なのです? 第二次大戦時、イタリアとドイツは同盟関係にありましたな。ヨーロッパ全体が結局は、ギリシャ神話の世界観で統一しようとする野望が展開されたという事ですかな? 』 とグレゴリーは質した。
『えぇ、そういう事です。北欧神話とギリシャ神話は合わせ鏡の様になっている訳ですね。ヨーロッパ戦線で、アポロンの復活に伴ってまさに月が呑み込まれんとする時、まず旧態依然としてヨーロッパ精神の土壌として君臨していたオリオンとしてのイタリアは、三体問題としての「偽のアポロン」として昇って来たアメリカに征服、敗北させられました。月は偽のアポロンの輝きを反射して、辛うじて照り輝きを復活させます・・お解りかと思いますが・・。第二次大戦では太平洋と大西洋の二か所で、三体問題を繰り込む事で一方は、アマテラス。そしてもう一方はアポロンという象徴太陽の組み換え、入れ替えが行われた事になりますね。第二次大戦は、東西共に神話学的には太陽を巡る戦いであったのです・・。』 とハンニバルが答えると、グレゴリーは意外といった表情で応えた。
『ニッポン神話構造、健在ナリ・・といった処ですな。』 と応え、姿勢を直すと腕を組み、そのまま続けて言った。
『・・ところでヨーロッパ情勢で考えれば、ニッポン神話の二項対立、アマテラスとスサノオのタカマガハラ対決という事で宜しいですな? 』
『実は二項対立と三項対立の構図があると視ています。何故ならば今言いました様に、ギリシャ神話の世界観が根底に在るという事で、そこには古代ヨーロッパを代表する3つの民族を巡る三項対立の構図が深層的に反映されていると考えられるからです。アポロンとアルテミスとオリオン三貴神に対応したヨーロッパ全体の動きを規定する3つの代表民族です。』 とハンニバル。
『ほほぅ、その3つの民族とは・・? 』 とグレゴリー。
『そうですね。まずは中東域は拝火教の流れを汲む、インド・ヨーロッパ語族の流れでもある北方ゲルマン民族で、牡牛ヨーロッパ地形にまたがり、牡牛の首部に剣を突き立て屠る太陽神ミトラスであり、後の西アジア源流の太陽神アポロンと同格な存在として対応します。また北方より文化程度が遥かに高く、ギリシャ文明~ローマ帝国でその絶頂を極めた地中海世界の雄、ラテン民族の流れで、これはオリオンに対応して来ます。そしてケルト民族は、ヨーロッパ中央部の森林地帯/山岳地帯を居城にし、ニッポンのシントー儀式に通ずる「杜〔もり〕の宗教」を持ち、ヨーロッパの民族の大移動、流動性の流れを受けて、最終的にはイギリスやアイルランドにまで逃げ延び、その生活圏を拡げた経緯を持ちます。つまり月の女神アルテミスに対応します。因みにケルト民族とゲルマン民族の融合がイギリス人の主たる構成で、アポロンとアルテミスの姉妹関係を超えた、婚姻関係で象徴預言されていたと視ています。』 とハンニバルは説明した。
『ふむ、なるほど。私の記憶違いで無ければ、北欧神話の三貴神の中のオーディンは知識と叡智を手に入れるために、片眼を巫女に差し出す程の貪欲な戦争と死の神として有名ですな。コレなど、アポロンと共通項が有る様な・・。またエジプト神話のホルス神が片眼を失い、それが月に成ったというエピソードを彷彿とさせますな。』 とグレゴリーは応えた。
『えぇ、アポロンは知識と叡智、そして医術、運命を司る神ですから、北欧神話ではオーディンに比定出来ると視ています。通説では違うのですが、ヨーロッパの中でイギリスの誕生を視るに付け、Mr.グレゴリーのその様な視方を支持します。それでヨーロッパ半島大陸はある意味、ニッポンと同じ様に月の不在を招く事に注目して頂きたいと思います。そこでヨーロッパは北欧と南欧の二項対立関係に入って行く事になります。』 とハンニバル。
『あぁ、そういう事か。3つの主要民族の流れと北欧およびギリシャ神話がマッチしている訳だ。そしてそれが全体的に、ニッポン神話の三貴神の内、月の不在として不思議と重なって来る訳ですな。・・しかし不思議なモノですな。東西のシンクロは本当だったのか・・? 』 とグレゴリーは再び詠嘆な声音と表情で応えた。
『そしてイギリスで象徴する月が、ヨーロッパとは一線を画し、地球の裏側のニッポンとの関係上にて、イギリス発の聖方位の基点となる訳です。従ってヨーロッパの大陽は、イギリス発の聖方位リング上には載って来ないという事なのです。そしてスサノオ~オリオンは地球の東西を地政学として連結する物理的にも象徴的にも中間子としての働きのために、ニュージーランドとして在る訳です。この二つの地球を取り巻く聖方位リングの基点としてのイギリスとニッポンを基軸として歴史の巨大な流れが生み出されるのです。東西はシンクロしていますが、これはひとえに東西にニッポン神話構造の原理が横たわっているからです。極論すれば、ギリシャ神話にも北欧神話にもミニマムに、ニッポン神話構造が織り畳まれていると思います。聖方位リング上でその基点が太陽のニッポンと、月のヨーロッパの相違がその神話構造を同じくしながら、異なったストーリーとして在り、その地域に根付いているのに過ぎないと思います。』 とハンニバルは答えた。
『ほほぅ、なるほど。そしてその神話構造の底をそれが重奏低音として響き、文明衝突としての歴史を演出して来たのか。しかもそれが民族構成の地政学的な配置と動きで展開している訳ですな。』 とグレゴリー。
『えぇ、その最大のモノが北欧神話の世界観である世界樹・ユグドラシルであり、ヨーロッパ世界の南北環境図を上手く採り入れて描かれていると考えられます。それがギリシャ神話の三貴神と対応する主要三民族の歴史、古代期/展開分布図の地理学的な説明になっていると視ます。そしてそれが実際の地理上にて、ヨーロッパ牡牛型地形にYの字剣地形を突き立てる太陽神ミトラスが描く、ギリシャ神話/三貴神に集約されて行く・・。そして太陽神ミトラス~アポロンはイギリス基点の聖方位リング上には載らず、アルテミスとオリオンのみ天空・夜空に架かる神話のままに地球上全域に、イギリス発の聖方位リング世界観として拡大して行きます。いわば、ヨーロッパとその周辺域との関係が、ギリシャ神話で普遍化して拡大して行く感じでしょうか・・。一方、ヨーロッパ内陸部で太陽神は取り残されて暗く燻〔くすぶ〕り続け、そのパワーを爆発、昇華する機会を待つ事になる訳ですね。20世紀まで・・。』 とハンニバルは少々意味深な口調で答え終えた。グレゴリーはその意味を推察はしたが、努めて自然態で疑問点を質した。
『・・つまり取り残された太陽神ミトラス~アポロンは、南欧オリオンとの二項対立で、ニッポン神話で言う処の「タカマガハラとイズモの対立」を、ヨーロッパ国内史として演出して行く訳か。しかしそれでは、イギリス・・アルテミス基点の聖方位リングには、ニッポン基点の聖方位リングの様な太陽は載って来ず、ヨーロッパに置き去りにしてしまう事になるのだが、それで宜しいのか・・? 』
『えぇ、基本はそういう事で宜しいですが、イギリス基点の聖方位リング上には実は、北アメリカ大陸のイエローストーン国立公園であった処の超弩級火山が載って来ます。コレは当然、ヨーロッパ半島大陸に取り残された太陽神と対〔ツイン〕関係を成す存在であり、前に説明しました様にアメリカは、ヨーロッパの深層文化をコピーとして受け継いだ存在ですから、イエローストーン火山がその象徴となりますね。・・極めて危険な代物を受け継いだモノだと思いますが・・如何でしょうか・・? 』 とハンニバルは少々とぼけた様な声音で答えた。
『おぉっ! ある意味、時限爆弾だった訳ですな。』 とグレゴリーは意外な驚きを隠そうともせず応えた。
『因みに言いますと、イギリス基点の聖方位リング上にはハワイ諸島も載って来るのですが、それに関しては、ここでちょっと面白い事が視えて来るのです。イギリス基点からの聖方位に直角するリングと、ニッポン基点からの聖方位リングに直角するリングを地球周回上に設定するとした場合、ニッポンからのラインは、イギリスからのラインと東南アジアはマレー半島で交点を結びます。一方、ニッポンの東方では、ニッポンからのラインは、イギリスからニュージーランドへ向かう聖方位リングとハワイ諸島の北方域で交点を結びます。丁度この2つのポイントは、1941年ニッポンvsアメリカ/イギリス/オランダの太平洋戦線の火蓋〔ひぶた〕が切って落とされたポイントになる訳なのです。』 とハンニバルはここまで説明しちょっと息を着いた。
『ほほぅ、それで・・? 』 とグレゴリーは先を促す様、ハンニバルに応えた。
『・・それでハワイ北方域に待機するニッポン海軍のレンゴー艦隊から飛び立ったゼロ・ファイターと艦爆機と爆撃機の編隊がパール・ハーバーに向かって南下し、奇襲攻撃に一応は成功したとされます。一方、西方マレー半島沖海戦では、イギリス主力のアジア艦隊が遊弋〔ゆうよく〕しておりましたが、航空機の攻撃で戦艦を沈める事は不可能である、という当時の世界常識に従って航空機の支援無しに展開しておりました処へ同じく、ニッポン海軍のゼロ・ファイターと艦爆機と爆撃機の編隊が攻撃を加え、イギリス主力アジア艦隊が全滅するという開戦劇となったのは御存知かと思いますが・・。この事例はハワイと合わせて史上初の事で、戦争の形態に革命が起きた瞬間であったのです。』 とハンニバルは少々の小気味よさを感じつつも淡々と答えた。それに対してグレゴリーは少々ムッとした感覚を覚えながら応えた。
『しかし、つまりある意味ではニッポンは既に、アメリカとイギリスによる挟み撃ちの状態にその時点では置かれていた訳ですな。苦しい戦いであった訳だ。そして何れにせよ、ニッポンは二回目の失敗をする方向に突入して行く訳だが・・。』 と、両手を拡げるジェスチャーを交えて応えた。それに対してハンニバルは一言、言っておく事にしようと決め、答えた。
『いいえ。アジアを植民地奴従の世界から解放するという事では、ニッポンの戦いは一応は成功したとは言える訳です。表面上の勝敗とは別にして、ニッポンはアジアの次代のプレゼンスを高める意識を、奴従状態にあったアジア人の認識と、敵国としてのヨーロッパ~アメリカ人の認識として植え付ける事に成功した訳です。テクニカルな戦いの勝敗とはまた違った意義が有ったとは思います。ところで、イギリス基点からの聖方位リングはこうして、太陽と月と星が揃った訳ですから当然、ニッポン基点の聖方位リング上の大陽とも対関係に成る事は御分かりでしょう・・。』 とハンニバルは、グレゴリーの言に反論しつつ、二つの聖方位リングが二つの太陽により、東西の結びと崩壊の力を内包したモノであると暗示しつつ答えた。
『うぅん? それはどういう事だろう・・。ニッポンとアメリカの鏡像原理と何か関係があるのだろうか? 例のホンモノとニセモノとの・・。』 とグレゴリー。
『えぇ、まぁ。コレがプレアデスとオリオンの天の闘いが、地上での闘いのひとつのカタチとして、人次元で演じられて招く結論でしょうか・・。即ち、ニッポンからの太陽の封印が解かれない場合、イギリス基点からの聖方位リング上の太陽が解放される事になる訳です。』 とハンニバル。
『ほぉっ!! 事実は果たしてその様に展開した様ですな! イエローストーン火山の爆発崩壊の影響で、北アメリカ大陸の大半はほぼ活動を停止しましたな。地球全域も大幅な活動が停止状態に成ったではありませんか。・・全てを斬り尽して仕舞った訳ですな。原子爆弾にスーパーヴォルケーノとは至れり尽くせりですな・・それにしても。』 とグレゴリーは少々感嘆して応えた。
『全てはバランスの中に在りますから・・。これで全世界は、その積み重ねた自身のカルマを全て解放する事に成功した訳です。』 とグレゴリーは少々皮肉交じりに淡々と答えた。
『・・それでは、つまりは17世紀の世界運営の2つに1つの分かれ目と同じ状況が、カタチを換え21世紀文明にも有ったという事か・・? その選択に誤って、結局は息の根を止められてしまったという様な・・。』 とグレゴリーは応えた。
『えぇ、そう考えられます。』 とハンニバルは簡潔に答えた。

to be continued to next.                                            ハンク マルス マン


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