「金融権力」本山美彦 | グローバル化するコンサルの記録

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金融権力―グローバル経済とリスク・ビジネス (岩波新書 新赤版 1123)/本山 美彦
¥819
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5月上旬に丸善丸の内でトップを走っていたため、購入しましたが

新書で久し振りのヒット。

同氏の「戦争の民営化」の本も面白いです。



【スナップショット】

・「金融」とは、「金」を「融」通するという意味

→融通とは、「溶かして通りをよくする」こと

→偏在している金を溶かして、社会的な金の流れをつくる

→自由化の名のもとに金融システムを作り上げている金融複合体

=つまり、「ウォール街、IMF、ワシントン複合体」(J・バグワッチ)によるワシントンコンセンサス

→アジア通貨危機を象徴

(→その後、ワシントンでは「市場開放とセットでガバナンス」の重要性が高まった)


・経済のグローバル化を推進した起動力は金融

→英米の日本に対する構造改革圧力は金融システムの改革


・経済学では確率として数値化できる命題も数値化できない命題も同様に重要視されるべき

=政治経済、あるいは経済は歴史学に戻るべき(ヒックス)


・70年代のアポロ計画、80年代のスターウォーズ計画の終了

→NASAの科学者・数学者が大量にリストラ

→クオンツと呼ばれる定量分析者(Quantitative analyst)になり、

金融機関で金融商品の数学モデル開発に従事

→デリバティブやリスク分散のロジックがはじまる

→サブプライムの遠因とも


・戦後~60年代、食糧難で庶民が苦しんだ

→当時、米は日本政府の統制下で米穀通帳が発行された

=住所移転の際に米屋に米穀通帳の移転手続きが必要だった

=食管会計は必要な政策だった

=市場依存者が正しく、市場を規制するものが悪と断定できるほどシンプル

な歴史ではない


・金融権力は好況の時には政治権力を批判するが、苦境になると政治権力にすがる


・インフレと失業の相関=フィリップス曲線(2006)は長期的には妥当しない

=労働者はインフレに対抗するため賃金上昇を要求するため (←この仮説は今後問われる)


・日興コーディアルとシティの金融コングロマリットの誕生の意味

→日本の銀行、証券、保険、クレジットカードの間の垣根が事実上撤廃

→国内金融市場の領域が拡大、既存の金融機関は競争激化すると予想