ギターをボトル・ネックでスライドさせて響きさせるサウンドで絶対的地位を築き上げたエルモア・ジェイムス。おそらくブルースを少しでも知っている人に異論はないと思います。

 いろいろな紹介記事でも言われていますが、エルモアと言えば「ダスト・マイ・ブルーム調」という言葉が使われますが、とにかくブルース史上、最上のオリジナル・スタイルを持っています。

 エルモアはロバート・ジョンソンから受け継いだといわれているオープンDチューニングのエレキ・ギターコードごとに3連でガシガシと攻め立てるスタイルで、強烈に歪んだスライド・ギターで世間を魅了してきました。私もブルースにハマってから、即、エルモアのブルースになすすべもなく溺れてしまったのです。 

 私の感覚としては、エルモアのスライドするギター・サウンドは強烈で一発でノック・アウトされたのですが、もう一つ、印象的というか虜になったのがそのボーカルです。ジャケット写真のエルモアから、私が勝手に想像していたボーカルとは全く違う、ゴスペルチックでダイナミックなボーカルと評されていますが、とにかくエルモアのボーカルもギターの迫力に負けないぐらいの凄さがあります。

 1951年にデビューし1963年に亡くなるまで、モダン・チェス・ファイアなどのレーベルに数々の作品を残していますが、エルモアの場合、どのレーベルでも、どの時代でも傑作が多いのではないかと思います。ボトル・ネック・ギターと歌の凄さからしたら想像できませんが、晩年は長年患っていた心臓病の手術もしていたとの事です。それでこの迫力と凄みを作品として多数、それもすべて「最高!」と言われており、まさに命を削って作品を作り続けたブルース・マンであったようです。

 

 右はエルモア後期のファイア/エンジョイ・レーベルの全セッションを収録した3枚LPのBOXセット。当然、収録内容は素晴らしいのですが、ライナーノーツに「エルモアの思いで」という事で、J・Bハットー、サミー・マイヤーズ、ジェイムス・コットン、ホームシック・ジェイムスなどが語っていたり、レーベルでの4年間一緒であったプロデューサーの話など、当時のエルモアの様子が垣間見ることができます。P-VINEのファイン・プレーだと勝手に思っています。

 左はモダン・レコードに遺されていたデビュー曲から50年代前半の全録音が収録されている3枚のCDからなるBOXセット。鈴木啓志氏による英文ライナーの翻訳や解説がされています。こちらは若き頃のエルモア全開といったところです。

 

 左は私が一般最初に購入した、日本で初めて編集されビクターから出されたLP。1952~56年のモダン・レコードの録音から、福田一郎・中村とうよう・桜井ユタカの3名が選定委員として曲の選択をしています。1970年に発売されているのですか、私は学生時代に唯一近くにあった中古レコードショップで見つけて買った物。実は学生の私には結構高価な値段であったため、バイト代をもらったその日に直行して買いました。7年前ぐらいに東京のショップで見かけましたが、その時の値段が私が買い求めた時の半額ぐらいになっていました。でもこのジャケットが印象的で、今でいう初めてのジャケ買いであったかもしれません。

 右は確か吉祥寺にあった輸入レコード屋さんで買った物。A面はエルモアが7曲、B面はエディー・テイラーとジミー・リードで7曲という構成になっています。こちらも高地明氏による丁寧で詳しい解説がされており、読むことによってブルース・マンの情報をどんどん蓄えることができたものです。

 

 左はP-VINEからチェスから発売されたエルモアとジョン・ブリムのLP。帯には「南部の大物エルモアとシカゴの底辺ブリムがチェスに参加」とあり、エルモアが9曲、ブリムが5曲という構成になっています。しばしば耳にするのですが、チェスはレーベルとしてエルモアの良さを引き出すことが出来なかったと言われているようですが、これはこれで好きです。

 右はこれも吉祥寺の輸入レコード屋で手に入れたLP。帰って直ぐに聴いたのですが、何か聞いたことがあるような…と思い、調べてみたら内容は全く同じというものでした。当時の(今でもそうかもしれませんが)輸入レコードにはライナーノーツなどは無いので、ジャケ裏の英文を読むしかなく、輸入レコードには1曲ごとのメンバーが記されており、これはこれで興味深いものです。

 

 エルモアの作品は今でも手に入れやすいと思いますので、スライド・ギターの迫力とダイナミックなボーカルを堪能していただければと思います。