京都から大阪にバスで移動します。難波で降りて歩きます。なかなか都会です。目的地はかの有名な西成。治安が悪い、近寄ってはいけないと言われますが実際はどうなのでしょうか。行って確かめてみる事にします。
朝5時頃に難波に着いて早朝の大阪を歩いているといきなりパチンコ屋よりサイケデリックな光が。かなり遠くからでも視認できる玉出の二文字。近くのパチンコ屋を完全に喰っています。何故スーパーの方が派手なのか。ここが他とは一線を画す特殊な地域である事を一目で確信させる店構えです。前回、愛車を失った悲しみが薄れていきます。
せっかく西成に来たのでドヤに泊まってみる事にします。『ドヤ』とは宿の体裁を成しているが人が居られる程の代物ではない宿泊施設を揶揄して、宿を逆さに読んでドヤとされる場所の事です。西成だけでなく全国各地に日雇い労働者が集うドヤ街があった様ですが、今ではそんな場所も無くなりつつあり、西成も例に漏れずドヤ街としての色は失われつつある様です。実際、西成を歩いていたのは殆どが高齢者の男性です。ここでは40代以下の人は相対的に若者です。COVID-19の流行とともに急速に高齢化が進んだらしいです。
初日に泊まったのは比較的高めの価格帯、といっても一泊1400円のドヤです。ロビーでやけに愛想の悪いおじいちゃんの受付を済ませて、エレベーターで上階へ。部屋に入ってみると思いの外、清潔感と広さのある部屋です。もうちょっと狭いと思っていました。泊まる場所としてはネットカフェなんかより余程良いです。
泊まったところは禁煙室で匂いもないです。冷蔵庫、エアコンもついています。
結構普通の宿だなーと思って、窓を開けてみると目の前が警察署です。しかもこの警察署には堅牢な門と門番の警官が2人います。ドラクエの城かと勘違いするほどの厳戒態勢。ここは異世界なのでしょうか。やはりここは普通の街ではない様です。
その辺を散歩する事にします。その辺を歩くだけで異世界転生を確信させる張り紙が各所にあります。土地の所有者が書いているであろうものもありますが、落書きっぽいのもかなりあります。共通して言えるのは前向きな言葉が多い事です。たまにカルトっぽい雰囲気のものもありました。（ヤバそうなのはここには載せません。）様々な理由でここに流れ着く人がいる様ですが、便所の落書きよりも心に響くものがあります。
落書きとしては破格の前向きさです。『負』の文字の点がやたら多いのが味を感じます。
メッセージ性があるのか無いのかよくわからない文字列です。
中でも異質なのは駐車場に貼られた『居酒屋で覚醒剤を売るな！』の看板です。黄色地に緑文字のインパクト。どうやらこの地域の警戒色は黄色の様です。海の中の魚なら一発で毒を持ったウミウシを見抜ける様に、人間はこの看板の異常性を一目で見抜けます。しかもこれ、看板の上に更に看板を貼るという他では見られない代物です。これって警察じゃなくて駐車場のオーナーさんが貼っているのでしょうか。
お昼時になったので新世界で昼食を済ませます。ホルモン鍋を食べました。かなり美味しかったです。しかも安い。この鍋は1000円以下でした。訪れたのは数年前なので流石に値上がりしていても驚きませんが、当時の感覚でも安かったです。
モツ煮とビールも頼んで一人でも楽しく過ごせました。モツは小腸だけでなくフワ（肺）も入っていました。関東だとあまり見かけませんが、大阪ではポピュラーな食材なのでしょうか。西成周辺の飲食店では結構見かけました。
店を出て新世界周辺をぶらついていたら夜になりました。流石に治安が悪いと言われる西成の夜を歩くつもりにもなれないので宿という名のドヤに帰ります。写真は撮っていませんが、この日に泊まったドヤには共同のお風呂がついていました。ちゃんとシャワーと湯船もあって、肉体労働者が集う場所だけあってかなり熱めの湯が張ってありました。浴槽は常にお湯が出しっぱなしになっていたので清潔感もあります。1400円にしては相当の完成度です。
お風呂を出てスーパー玉出の惣菜を食べます。私は旅行に行ったら現地の食文化を感じたいタイプです。西成の食文化といえばとりあえず玉出の惣菜なのかなと思って、紅生姜天と豚足、適当なスナックと発泡酒を購入しました。レンジも共同のものを使えるので、温めて食べました。肝心の味ですが、紅生姜天は普通に美味しかったです。若干萎びている感じがしないでも無いですが、如何にもツマミ然とした味でした。豚足については買わなくて良かったかなという感じです。端的に言えば美味しく無い。もっと言えばマズイ。色は醤油味ですが、味は塩味の少ない豚のブリブリです。とにかく味が薄い。玉出には色々な惣菜が置いてありましたが、どれも食欲をそそられない色をしています。その中でも比較的美味しそうな物をピックアップしてきたつもりでしたが甘かった様です。機会があればまた挑戦したいですね。
