かつて働いていた書店で、この本と目が合った。


『店長がバカすぎて』早見和真

目が合ったのでそのまま手に取り、レジへ。

2020年の本屋大賞ノミネート作。

私はあまり話題性で本を選ばないのですが、この本は、その話題性で選んだわけではありません。


というのも、私は書店員経験者です。
学生時代、バイトしてました。

バイトといえども、大学在学中ずーっと同じところで働き続けてて、レジはもちろん、電話応対、予約注文の手配、それに加えて本以外のCDやらゲームやらも置いてあったので、いろんなことしてました。

CDやDVDの特典に付くポスターも巻いたし、ブックカバーかけるのは今でも上手いし!(自画自賛)


今でも元バイト先の書店へは足を運ぶことが多いのですが、そこでたまたま本書と目が合ったのが偶然とは思えなくて、手に取りました。



読み進めている段階から、「全書店員に読んでほしい!!!」と強く思った作品。
そもそも本屋大賞ってそういう賞がノミネートされたり選ばれたりするんだもんね。


そんな書店員あるあるだけではなく、最後の最後に、伏線回収があったり、そこからの、さらなる伏線回収があったり。
飽きることなく楽しく読めました。



物語の舞台は、言わずもがな、書店。
主人公は、そこで働く30手前の契約社員。
そして、同僚たちや、バカすぎる店長の存在。
いるよね、こういう人。

しかも、バカすぎるのは店長だけでなく、小説家だったり、社長だったり、出版社の営業だったり、神様という名のお客様だったり。



個人的に一番肩震わせて笑ってしまったのが、「神様がバカすぎて」の冒頭に出てくる、3人の“神様”の描写。

特に、“神様A”みたいなお客さん、私が書店で働いてたときにも多数いらっしゃいましたね。


私が書店で働いていたときのことを思い返すと……

「誰々さんが表紙の本!」とだけ告げてくる神様、いらっしゃいました。
それが最新の本なのかどうかも分からないから困るのよね。

あと、「新聞で紹介されている本」は新刊とは限らない。
この件も、書店員への問い合わせあるあるですよね。

そして、他の店舗から取り寄せると1週間近くかかる旨をお伝えすると、「Amazonのほうが速いじゃないか!」と怒り気味になる神様も、いらっしゃいました。
正直、頭の中では「だったらAmazonで頼めよ」なんて言葉も脳裏をよぎったのですが、そこはグッとこらえて丁寧に対応した思い出。笑


そんな書店員時代を思い出してしまうほど、リアルな描写が楽しかったです!



書店員目線で薦めてしまったけれど、もちろん書店員経験者以外にも読んでほしい!
共感できるかどうかは人それぞれだとは思うけれど、お仕事小説や、ちょっとした伏線回収を楽しみたい方にもオススメです。

私の場合、元書店員で、お仕事小説が好きで、伏線回収がスカッとする作品が大好きなので、見事にぴたりとハマりました。


あちこちでレビューを検索してみたら、評価が分かれていたんです。
書店員経験者や、それに近い人なら、共感しながら楽しく読める人が多いのかも。
「書店で働いたことはありませんが〜」と書かれているレビューほど低評価だったので、書店のリアルと、そこで働く人の心情に重きを置いているから、そうなるのかな。


レビューにもよく書いてあったのだけど、たしかに終盤は駆け足だったかもしれない。
でも、続編があることを考えると納得かも。
続編も、文庫で出たら読んでみたいです。



特別付録の対談で、ドラマ化の可能性についての対談が載っていました。
たしかにこれはドラマ化できそう!

それこそ、NHKのドラマ10でやっていた『これは経費で落ちません!』のように描けそうじゃないかしら。
私はあの作品を、まずドラマを観てハマり、そこから原作も揃えてさらにハマりました。
山田太陽みたいな人が職場にいたらいいのに(遠い目)。

……どうやら私は、同年代の子が活躍するお仕事小説が好きらしいです。



話が逸れましたが、学生時代のバイト先=書店での経験を思い出させてくれた、面白い本でした。
冒頭にも書いたけれど、特に書店員経験者で読んでない方がいたら是非とも読んでほしいー!