今日は映画『ファーザー』を見ました。

 

映画『ファーザー』

 

見ている最中、そして見終わった後も頭の中がグルグルとしています。

この映画を「新感覚」とか、「スリラー」と表現している方がいますが、どちらもその通りだと思います。

私は今までこのような映画を見たことがなかったです。

鑑賞しながらずっと不安で、混乱していました。

理由は、この映画の演出方法にあります。

 

この映画は、認知症の男性が主人公で、彼の視点を通して物語は進行していきます。主人公・アンソニーは認知症の症状が進行していて、記憶が曖昧になり、時間の感覚が失われつつあります。

 

そのため、何気ない日常の場面が淡々と展開していきますが、どこか違和感があるのです。同じシーン、同じアイテムが場面や人を変えて何度も登場したり、以前に話していた会話の内容を場面を変えて相手に話してみても「そんな話をしたことはない」と言われ、全く通じない。

 

見知らぬ女性が自分の娘のアンだと名乗ったり、アンのパートナー・ポールは場面が変わると、アンの夫になったり、恋人になったりする。アンがフランスに引っ越すことになったかと思えば、別の場面ではロンドンに居続けると言う。

 

どれが現実で、どれが幻想なのか、情報が大量に何度も形を変えて頭の中に入ってくるので、その整理にどんどん追いついていけなくなるのです。

 

アン役のオリヴィア・コールマンは「台本を読んだとき、難しくて分からず、何度か読み返した」と話していて、複雑な物語なんだろうなと覚悟して見に行ったのですが、予想の上を行っていました。

 

矛盾、苛立ち、不安、恐怖、自信喪失、絶望。アンソニーの心の中が手に取るように理解でき、辛かったです。

 

アンソニーが子どものような表情で介護士のキャサリンに語りかけるラストシーンのアンソニー・ホプキンスの演技は圧巻でした。

 

「まるで全てを葉のように失っていくようだ」

「旅に向けて心構えはできている」

 

この言葉がとても印象に残りました。

人生について、家族について、観客に問いかける作品だったと思います。

 

今日はこんな感じです。