「月」と「愛」は犬猿の仲!? | 「ガイドが教える 仙台城を10倍楽しむ方法!」

「ガイドが教える 仙台城を10倍楽しむ方法!」

仙台城のボランティアガイドが、仙台城の魅力や伊達政宗のトリビアな話を出し惜しみせず、ボリューム満載で語り尽くしまーす。(^_^)

仙台観光をお考えの方は、旅支度の前に予習としてご一読を頂ければ、仙台城が10倍楽しめるかも。

仙台城ガイドボランティア会のブログをごらんいただきまして、ありがとうございます。

 

聖徳太子の十七条の憲法の中に「和を以て尊しとなす」という条文があります。

太古の昔から、和=協調を常に大事にしてきた私たちの住む国、日本。

 

いつの世も争いが絶えることはありませんが、仮に内心反りが合わないと思う人がいたとしても、お互い立場をわきまえたいい大人ですから面子を重んじ、波風を立てないように接するのが人としてあるべき姿なのでしょう。

 

でも、どうしても馬が合わない「犬猿の仲」というのもあるものです。

 

では、我らが伊達政宗様と犬猿の仲だった人と言えば、誰でしょう?

第一候補として挙げられるのは、蒲生氏郷でしょうか。葛西・大崎一揆の時には相当な駆け引きやつばぜり合いをしていたと伝えられています。見知らぬ土地で氏郷が失点すれば、政宗様にとっては勢力を拡大出来るという思惑もあったのかもしれません。ただ、結果的には、須田伯耆の裏切りに合って、逆に政宗様の方が窮地に陥ってしまった因縁の相手。

第二候補としては、政宗様が「絶縁状」を送り付けて絶交状態となった浅野長政かもしれません。伊達家と浅野家が和解したのが、平成6年(1994年)ですから実に398年も絶交していたというのが話題となりましたね。

では、本当に犬猿の仲だったのは?というと、お近くに「愛」の似合う人がいましたね。

そうです、名前を「山城守直江兼続」と申しまして、大河ドラマ「天地人」の主役を務められた武将です。

彼は「愛」を兜の前立てに掲げてはいますが、彼は「愛」の伝道師だったりした分けではなく、この「愛」は「愛宕権現」、「愛染明王」、「愛民」の精神から取ったということのようです。

彼の逸話として有名なのが、関ヶ原の戦いのきっかけになった?とも語り継がれていますが、今では実際に存在していたのかが疑問視もされている「直江状」。時の最高権力者である内府殿(家康)に正々堂々と喧嘩を吹っ掛けるようなお手紙を本当に出していたんだとしたら、頭の切れる優れ者であった一方で、フラストレーションが頂点に達すると何をしでかすか分からないキレやすい性格だったのではないか?とも言われています。

政宗様と兼続は本当に仲が悪かったようで、次のような話が残されています。

ある時、伊達政宗様が珍しい金の大判(慶長大判)を大名たちに見せながら、自慢をしていたことがありました。まあ、こんなことは今の時代でも、よくあることですね。そこで、政宗様が直江兼続に対して「手に取って見てみるように」と言ったところ、なんとその大判を扇子に乗せて受け取り、跳ね上げながら裏表を見たのです。

当然、頭にきた政宗様が「なぜ手に持って見ないのか?」と聞いたところ、直江兼続はこう答えたそうです。

「我が手は上杉の軍配を握る手で、このような不潔なものを触る訳には行かない」と。


 なんともプライドの高い、上から目線のご発言。


さらにもう一つ、

江戸城の廊下ですれ違った際に陪臣の直江兼続は大名である政宗様に礼をするのが礼儀ですが、それをしないことに怒った政宗様が「何故礼をしない」と問うたところ、彼はこう答えました。

 

「ああ、誰かと思えば政宗公でしたか。戦場では何度かお目に掛かっていますが、顔が分かりませんでした。いつも負けて逃げ帰る後姿しか見ていないものですから。」

 

ここまで来ると、厚顔無恥なのか本当に顔も見たくなかったのか、無礼にしてもほどがある。


こうしたエピソードは江戸中期に書かれた説話集の中の逸話とも言われており、実際にあったのかは微妙なところなのですが、二人の関係が「共演NG」だったということだけは、巷に知れ渡っていたのかもしれません。
 
上杉家とは伊達家が竹に雀の家紋を頂戴したり、長谷堂城の戦いで和睦を破って伊達家が最上に加勢したりと、何かと因縁に近いストーリーが積み重ねられてきた上杉家と伊達家。

 

でも、「月」と「愛」は心を通わせれば、本当は一番絵になるはずなんですけどね。

 

※昨今の歴史研究の進展は目覚ましいものがあり、過去の書物に記された史実や出来事などとは別の説が発表されたり、歴史認識が改められたりしている事も多く見受けられます。このブログで書かれたことは、諸説ある中でも多く語られることの多い部分を抽出して書かれたものであり、歴史認識や見解の確からしさを断定するものではありませんことをご理解頂きますようお願い申し上げます。