土壌改良によるCO2固定化に関して、竹炭と4パーミル・イニシアチブの話題を挙げたが、今回は身近な家庭菜園の話。

そもそもCO2固定化や土壌改良の話に一気にのめり込む事になった切っ掛けは、軽い気持ちで始めた家庭菜園の初心者が、元気な野菜を育てるには土壌が肝だと分かったからだ。そして調べる内に米糠、カルスNC-R、EM、菌ちゃん農法と次々に知らない話が出て来て振り回されてしまい、訳が判らなくったので一度落ち着いて調べ直す事にして漸く今に至った。

 

NHKの超進化論:

昨年末から今年に掛けて、NHKで超進化論というタイトルで3回のシリーズ番組が放映されたが、土作りに関する話も出て来て興味深かった。

3回の内訳は植物・昆虫・微生物だが、底通するテーマは「進化は競争のみでもたらされるのではなく、共生という要素が大きく関わって居る」という事。

植物は根だけで養分を吸い上げているのではなく、微生物の菌糸(キノコの元)と共生し、菌糸からは窒素成分を受け取る代わりに、菌糸には光合成で得たエネルギーを与えている、という話があったが、これは菌ちゃん無肥料型農法のキーになるメカニズムだ。番組では「今回の放映の内容は最近の研究で明らかになったものが多く含まれている」という様な事を言って居たが、菌ちゃん無肥料型が今後普及して行く可能性を示唆しているのかもしれない。

 

「大地の五億年」や関連するサイトで得た知見:

私なりに整理してみた。

① 土を耕すと土壌は劣化する。

② 従い土壌の為の理想は、自然の力を活かして無起耕で栽培し、敢えて雑草とも共生する自然農法。次善の策は、土地の性質に応じて、なるべく起耕を少なくした方法。

③ 地域毎に土地固有の性質は様々であり、自然農法にはどちらかと言うと乾燥して酸性度の低い土地が向いているので、多雨で酸性度の高い日本は寧ろ不向きな土地が多く、何れにせよ日本中何処でも可能という訳には行かず、現実問題はその土地固有の性質を踏まえて最適な手法を取る事になる。

④ 土壌の劣化という観点では、微生物の餌にならない化学肥料のみに頼るのは弊害が最も大きい。その典型は大規模機械化農法であり、重い機械で締め固める上に、微生物が居なくなり腐植と団粒構造が失われる。

⑤ 有機肥料の方が化学肥料よりも土壌への影響は少ないとは言えるが、耕起が前提であり人為的に栄養や微生物の餌を与える点では土本来の力の再生とは言えず、家畜由来の堆肥に頼り過ぎるのも、土本来の生態系バランスを崩す要因となる。

⑥ 商業ベースの農業を営む場合は、一定の収穫効率を得なければ採算に乗らないという宿命がある為、理想通りには行かず色々妥協せざるを得ないが、家庭菜園の場合は理論優先で実験出来る強みがある。

 

貸農園の土壌作りプラン:

という事で、勢い余って借りた貸農園50m2の畑を自分はどんな土壌にしたいのか、あれこれ思案した結果は以下の通り。

私が借りた貸農園のオーナーは有機肥料派で雑草は刈り取って下さいという立場の人なので、土地の向き不向きを考える以前に、雑草と共生する自然農法は許可して貰えなさそうだ。なので、自然農法以外でなるべく化学肥料を使わないやり方を試したい処。但し初心者として難度を上げ過ぎると、失敗して挫けそうなので、拘り過ぎずに3つの候補に絞ってみた。

(1)菌ちゃん無肥料型: 耕起は少なく済ませた土に、木・草・籾殻だけを乗せ、これが微生物の餌になる。NHK超進化論でもあった様に、糸状菌と窒素固定化細菌が窒素を作物に与え、作物は光合成で作ったエネルギーを菌に与える互恵関係のお陰で、無肥料栽培が可能となる。但し覆いとして使う黒マルチだけは石油由来の製品という点だけがマイナスだが、準自然農法とは言えそう。

(2)EMボカシ型: EM(微生物資材)に米糠、糖蜜、籾殻等の有機物を混ぜで、EMボカシという堆肥を作って土に投入し耕起する。フカフカの土になる様だが、肥料を投入する点で、自然農法ではなくなる。

(3)カルスNC-R型: カルスNC-Rも微生物資材であり、これに植物残渣、米糠、籾殻等の有機物を混ぜて耕起する。これもフカフカの土になる様だが、化学肥料も適宜使う事になる様で、自然農法とは言えない。

 

菌ちゃん農法が成功出来ればベストなのだが、畑で過去に使った堆肥や化学肥料の影響が残って居たりすると、最初は上手く行かない事もあるらしく、初年度は期待し過ぎないのが良さそうだ。首尾よく3パターンの畝作りが準備出来れば、同じ作物を植えて成長度合いを比較出来れば面白いと思う。

今月中は家を離れる用事があって土作りが出来ないので、3月から始めると植え付けは5-6月とかなり気の長い話になるが、農業の時間軸はそういうものだろうから、焦らないのが良さそうだ。