(投稿2025/8/20 16000字以上)

(修正2025/11/5 18000字以上)

前書き

12巻には高度な叙述トリックがありまして、嵌まる人も多いかなと思ったので解説を記事に上げます
内容は以前に上げている連続ツイートと同じもので再編集版となります

 

 

ツイートだとどうしても文字数制限が厳しくて、読み辛い
重要なのは結論ではなく、どうしてそういう結論が導き出されるかの理由のほうなんですが、
X上だとそれらの理由等まで書く文字数がありませんでした

そこで改めてブログにて、僕ヤバ11巻12巻に隠された恐るべき作劇の罠を解剖してみたいと思います


1章

僕ヤバ12巻は不思議な話でした
いくつかの事件が連続して起こりますが、それらに一貫した大筋テーマというのが感じられず
ページの多くを割いたのはおねえのバンドの解散事件でしたが
この事件は作品本来の主題である京太郎と山田の恋の行方とはあまり関係がありません
その事件がどうにか解決できたと思ったらいつの間にか山田との関係値が最悪になっており、
なぜか京太郎は山田から避けられる?ようになります
しかしその危機は、巻のラスト4pで京太郎が「何か」に気付いたことで突然に解決します

(僕ヤバ12巻表の解釈 所謂「A説」)

山田はkarte.170でkarte.168の渋谷徘徊の際の心境を語っていますね
自分たちは今勉強や仕事を頑張るべきで、大事な時期に相対を優先するのは子供だと思っていた
その言葉に嘘はないとしても最も謎だったのはkarte.166でライブに来なかった理由でしょう
大学生たちの協力もあって実現したつづくのライブ、聴かずに帰るなんて奏者に対しても失礼です
大人子供の話をするならライブには来るべきだ
karte.170で語った心境もkarte.166の謎の行動の説明までにはなっていません

そもそも12巻冒頭の物語は、山田が役者として売れ出したことで外を自由に歩くこともできなくなり
特に京太郎との交際がファンに知られれば致命的スキャンダルになり兼ねない
そこで京太郎はやむを得ず、外では山田とは会わない、という身を切る約束を交わしたところで始まります
読者も二人のイチャイチャが見られなくなるという、作品の根幹にかかわる大問題に直面していたはずです
この問題はどうなったんでしょうか?
物語の途中でおねえのバンド解散問題が持ち上がってからは触れられなくなり
次にこの話が大きく扱われるのはkarte.170になります
なんとこの問題がkarte.170であっさりと解決してしまいます
12巻の危機を乗り越えた山田は二人の約束を今の二人の歩幅に合ったものに決め直します
適切な距離を保っているならデートしてもOK
2人の関係が恋人同士であることのカミングアウトもOK
外での手つなぎはNG
敷地内は手つなぎしても良しとする、つなぎ方は恋人つなぎを基本とする
市川も山田も読者も満足の結果に落ち着きましてめでたしめでたし、ですね

・・・・、どういうことでしょうか?
外で会わない約束は市川が山田を衆目の視線から守るため「やむを得ず」決めたルールのはずです
長年の努力が実り人気タレントの仲間入りとなった山田は
それと引き換えにプライベートに制限が掛かるようになり
特に恋愛面に関しては事務所が山田の恋愛禁止の方針を決めかねない
そうなれば京太郎と山田は外で会えないどころではなくなります
その最悪の事態を避けるため、仕方なく受け入れた約束だったはずです

それなのにkarte.170では山田は二人で外を散歩してもいいというのです
しかも二人の関係が恋人同士であることまで知人に告げてしまいます
karte.154からkarte.170までの間になにか山田の状況に変化があったでしょうか
山田の芸能人としての知名度という点では、karte.154の頃より今のほうが大きくなって、
外でファンに見つけられる危険はむしろ増しているはずですが

ここでひとつの仮説が立ちますね
「山田の事務所は山田のプライベートや恋愛を禁止したい意向など、持っていないとしたら?」
事務所は山田を売り出すために市川との関係を邪魔に思っている、は真実なのでしょうか

確かに事務所は山田のプライベートの拡散を懸念する動きを何度も見せていました
SNSの投稿の削除を求めたり、なんと中学生に学校行事を欠席させたり、
学校にスマートフォンの使用を禁止にさせたりと11巻ではショッキングな事件が連続しました
しかし、それが京太郎と山田の交際まで快く思っていない事に繋がるでしょうか

そもそも事務所が山田の恋愛を禁止にすると言い出したのはいつ、誰だったでしょうか
はっきりとそれが示されたコマがどこかにあったでしょうか
あれだけの緊迫感で語られた事務所の恋愛禁止の意向が実は最初から存在しないとしたら?
11巻12巻のストーリーの認識が大きく覆ることになり兼ねません
ではここからは、
事務所が市川と山田の交際や逢引を問題視していると見做せるシーンがあったかどうか、
11巻からのストーリーを検証してみたいと思います

 


2章

karte.141
半沢さんとのデート回
ここではストーリーは動きませんが、山田の誕生日が9月10日でもうすぐであることが開示
(また市川と山田、半沢さんの親密度が大幅にUPしたことは後々の伏線になります)

karte.142
この回もまだストーリーは動いていませんね
夏休みが終わり、市川の受験勉強が本格化していきます
12巻後半でキーとなる萌子と木下の再会
そして受験組3人によるLINEグループがここで結成
(テスト中あれだけ雑念まみれだったのに)京太郎の模試の結果は好調でした、
京太郎のコンディションも好調だったことの表れですね
また劇中では久しぶりに京太郎がトイレですっきりするシーンが入ります
シーンに描かれなかっただけで京太郎はこれまでも日常的に発散していたのですが
シーンに組み入れることで読者に設定を思い出させる効果がありました

karte.143
物語が動くのはここからですね
山田の誕生日を前に学校内でのスマートフォンの使用が禁止になります
これを境に京太郎と山田は校内での意思疎通に制限がかかるようになりました
加えてその裏には山田の事務所からの働きかけもあったことが判明します
この校則自体は中学校が舞台であることを考えればいたって普通のルールの範疇ですが
京太郎目線では学校という空間にまで事務所が干渉してきたという事実が
ショッキングな出来事として印象に残ったことでしょう
山田にはプライベートと仕事の線引きが無くなり、
仕事中でなくても事務所の管理下に置かれた状態で生活していることになるからです
そしてこの回のラストで物語の転機となる大きな事件が起こりましたね
フラモブ事件です

karte.144
京太郎と山田の二人は、ここでクラス全員に交際を公表するか秘密にするかの選択を迫られます
ここで京太郎は山田の平穏な生活を第一に考え、交際を隠す選択を選びました
問題はそれに従った山田の内心です
ここで山田は本当は交際の事実をみんなに知らせたい気持ちがあったこと
しかし自分の立場や今後のキャリアを考えれば隠したほうが有利という打算があったこと
それが京太郎に対して負担になってしまう卑怯な選択であることをはっきり告げていますね
この部分は京太郎の認識と一致しています
ただし、事務所から恋愛禁止の指示をされていたかどうかでいえば曖昧ですね
山田目線で考えれば自分の立場が京太郎の負担となったことを純粋に謝っただけのように見えます
このシーンをもって、二人の交際が事務所から問題視されているとは結論できない
しかし京太郎の目線で見れば山田の謝罪の態度が
何者かに意思に反する行動を強要されているようにも見えた、かもしれません

この話を境に京太郎と山田は校内ではフラれた男とフッた女という関係で見られるようになります
教室内での会話も困難となり、校内でのLINE禁止に加えて意思の疎通がますます難しくなりました

karte.145
ここでの足立との会話は市川の想像を悪いほうへと誘導していまいます
karte.144で交際を隠した判断は、恋愛が芸能人にとって少なからずスキャンダルという一般論からです
karte.81で山田のマネージャーからも釘を刺されたことがあって
山田の交際を事務所が歓迎しているとは考え辛いですが
はっきりと事務所が山田の恋愛を禁止しているとか、事務所が山田と市川を別れさせたがっているとは
京太郎もこの時点では考えてはいなかったと思います
しかし京太郎の中で疑惑として持っていた気持ちを足立が言語化してくれたことで
京太郎の中でぼんやりとした疑いだったものが根拠のようなものを帯びていきます
足立は、中学生の自由のために戦う自分たちとそれを制限しようとする大人たち
という対立の構図で今の状況を捉えてしまっています
この時の足立は京太郎にとって唯一自分の本音を話せる親友でした
足立が自分の憤りに共感してくれたことが京太郎には救いとなり、言葉が染みこんでいきます

karte.145~148
縁日編のエピソードでは、山田が京太郎との恋愛を秘密にする理由が垣間見られます

京太郎と山田がお互いの気持ちを隠そうとするエピソードはシリーズ初期からのテーマでした
山田が京太郎への好きを自覚したのは2巻のラストからですが
中学生らしい恥ずかしさから山田は自分の気持ちを知られるのを恐れていました
澁谷デート編やバレンタインデーを経ても二人は好きを伝えることが出来ず、
やっと気持ちを伝えることが出来たのは8巻の告白、そこから二人の交際が始まります
その後も山田両親やおねえなど家族には交際の事実を自分たちから明かしましたが
親友である萌子、にゃあにも自分たちから積極的に交際を告げたわけではありませんでした
この辺りの山田の内心の事情はこれからの物語で語られる部分なので今は深掘りしませんが
少なくとも、タレントとして人気が出始めてから隠すようになったわけではない、
事務所から秘密にするよう言われたから、が原因ではないのは明らかです

karte.149
ランチバイキングで作戦会議をする回
山田はメガネで変装し、それでも見知らぬ学生から声を掛けられるという事件が起こります
京太郎の中で疑惑だったものに少しずつ根拠となるものが裏付けされていきました
「山田は賛成も反対もしない
事務所が恋愛禁止の方針だったらどうしようーーと考えているんだ」
山田は肯定も否定もしていません
なのに京太郎の中ではほぼ真実のように話が進行しています

おまけページでは山田が萌子に変装の相談をするシーンが描かれます
山田には芸能人が街中を変装して歩いたり恋人と秘密のお付き合いをすることに
ポジティブなイメージがあったことを思い出しますね
なにせ、サングラスをして商店街を徘徊し本屋でサイン待ちをするような女なんですから
女優がマスクやサングラスで美貌を隠して歩くことをカッコいいと思っている節が山田にはあります
山田が街に出るときに変装するようになったことを市川は不憫に感じていました
しかし山田がそんな自分を不幸と感じていたかどうかは疑わしいですね

karte.150karte.151
高校の文化祭に行く回
この時点で京太郎は山田と一緒に居る時に、周りからの視線に警戒を覚えるようになっています
山田との交際の秘密を隠し通さなければ山田と別れさせられるのではという恐怖に狩られています
山田と居ることが京太郎にはストレスになるという奇妙な状況が起きています

少し脱線
状況から考え直すとこの時の
「山田に気遣わせるな」は冷静な判断力から出た台詞ではなかったのかもしれませんね
確かにこの時の萌子の煮え切らない態度はいつも判断が鋭い萌子にしてはらしくなく、
一言いいたい気持ちも分からないでもない
しかし萌子と山田は親友の間柄であり、山田に対して何度も気遣いをしてきた恩人でもあります
萌子にも萌子の悩みがあって、それに山田が気遣う場面があってもいいはずです
この時の市川は異常に神経過敏になっていたのかもしれません

karte.152
文化祭で盛り上がる裏側で山田が映った画像がSNSにアップされます

karte.153
ついに文化祭
ここで市川の事務所への不信が決定的なものになります
山田は昨日あれだけ文化祭を楽しみにしていたはずなのに事務所から欠席を強要されてしまうのです
仕事を理由に中学生の人並の幸せすら奪ってしまうのか
芸能事務所はそんなに偉いのか
市川の憤りは頂点に達します

karte.154
この時の市川のモノローグは本当に痛々しい
言葉と同時に耐え難いのは市川の目に映る景色です
市川の目には諏訪さんの顔が恐ろしいものに見え、
また通いなれた廊下や教室も薄暗く不気味なものに映ります
しかし迷路の向こうに一つだけ輝くものを見つけます
山田です
市川は、山田に理不尽を強いる事務所、山田に好奇の視線を向け普通の生活もできなくさせる世間の目、
そしてそれらから山田を守れない無力な自分、世界の全てを呪います
無力な市川にできることは一つしかありませんでした
「外で会うのを止めよう」
最も苦しい誓いを立てることで市川は山田を理不尽から守ろうとします

karte.154の最終エピソード、ついに外で会わないの約束が結ばれましたが
ここまで読んでみても事務所が山田に対して市川と外で会うなとか、別れろ、とか
そういった強要を迫っていると確信できる裏付けはありませんでしたね
karte.154の諏訪さんの台詞、
絵の不気味さを消して台詞だけ読んでみると
学校現場にお騒がせをしたことを大人の立場で謝罪しているだけなんですよ
これを市川に対して釘を刺していると感じるかどうかは…正直人によります
遠回しに秋野杏奈はお前とは住む世界が違うんだと聞こえる言い方ではありますが

あえて好意的に解釈してみます
事務所が学校特定を恐れているのはマスコミ対応に慣れていない普通の公立学校の迷惑にならないためです
生徒の平穏を守るためです
そこには市川の生活の平穏も含まれています
しかも結局のところ山田は諏訪さんの手引きで一般の来場者として行事には参加でき
京太郎の作った巨大迷路とその反応、文化祭の一日目を存分に楽しむことが出来ました
生徒として出席していたら逆に味わえなかった体験です
ファンや下級生に囲まれてしまったら3-1の教室には近付くこともできなかったかもしれません
山田にとって仕事を理由に文化祭を欠席できることは
理不尽の強要どころかメリットの方が大きい、渡りに船の提案だった可能性があります・・・

「事務所は山田の恋愛を禁止したいと思っている。市川の交際も問題視している」
この認識を疑って読んでみると初見で読んだ当時と随分印象の違う物語になってしまった気がします
わたしは最初、山田の考えていることが分かりませんでした
京太郎の言うように事務所から恋愛禁止のプレッシャーをかけられているとしたら
山田には京太郎以上のストレスがかかっているはずなのにそれが描写に現れていなかったので
特にkarte.154の山田の表情には暗い影が全く描かれていない
karte.153で明日学校に出席できないことを告げられずに帰った
これは凄まじい葛藤の末のことであるはずなのに
11巻おまけページでは京太郎にサプライズを仕掛けたかっただけという拍子抜け
しかし山田や諏訪さんの言っていることが最初から裏表のない額面通りの真実だとしたら話が繋がります

karte.143~154までの積み重ねで京太郎の疑心暗鬼は最高に達してしまいました
山田の置かれている境遇が可哀そうでたまりませんが、もっと許せないのは自分はそれに何もできない事
京太郎は山田と学校でLINEが出来なくなり、親しく会話ができなくなり、
さらに外で会う事すらできなくなってしまいます
「京太郎のストレスは最悪の状況です」

一方山田はどうでしょう
11巻は本当に山田にとって幸せなエピソードの連続しかなかったことに驚きます
街でファンから声を掛けられるくらい売れること、変装が必要になったりすることは
小4の頃から芸能界に居た山田にとってはついに叶った夢だったんです
生活に不自由があること自体は認めてもそれは山田には不幸に繋がりません
待望だった君オクドラマの出演も果たし自分の動画はバズったことで学校のルールが変わってしまうのも
自己顕示欲の強い山田は申し訳のなさがあると同時に優越感も感じます
そして京太郎がクラスから認められたこと、これが何よりうれしい
(しかも高校は推薦内定でクラス中が勉強ムードの中一人だけ受験勉強も免除されていますね)
11巻での山田は実に幸せの絶頂を味わっており、「山田はこの時点でストレスなどを抱えていません」
京太郎の外で会わない約束の理由が実は事務所との関係にあるとはこの時の山田は思っておらず
おそらく京太郎が勉強に集中するため、などと考えていたのでしょうか
(高校受験前の2学期にデートしている学生のほうが稀ですから提案自体に違和感はありません)

これが11巻終了時点での二人の状況となります

ここからは「山田に恋愛禁止令は存在しない」という前提の元、二人の精神状態もこの状況に沿って
12巻の物語を読み返してみたいと思います
物語の再解釈となり、描かれていない部分についてはわたしなりの想像で埋めていくことになりますので
意訳が含まれることをご容赦ください


3章

karte.155karte.156
karte.142との対比、雑念が多かった割に結果が良かった9月模試に反して
京太郎は10月模試では成績を落としてしまいます
11巻の京太郎のストレスは成績にまで影響を与えていました
(京太郎の精神状態を考えると当然ですね)
karte.154の外で会わない約束は山田のバイタリティも蝕んでいます
山田も京太郎の受験のために我慢をしますが、すぐに限界を迎えます
外で会えないならと親の不在を狙って京太郎を自宅に誘い出す山田

ここで、とても恐ろしいことが起こります
山田は涙を流しながら京太郎に告げます
「やだよ~ホントはいつでもどこでも会いたいよ~これ以上の決めごとやだよ~」
京太郎には事務所から凄まじい圧力がかかっていることへの悲鳴のように聞こえたかもしれません
それでも山田の夢が女優だとしたら山田が我慢するしかない問題だとそう結論したのかもしれません
しかし事務所の圧力などは初めから存在しないとしたら
外で会うのを止めようの約束が沸騰した頭で考えた京太郎の暴走だったとしたら
無意味な決め事に対しては最愛の京太郎に対してもNOをいえる山田の勇気の訴えだったとしたら

この時の山田にプライベートに制限をかけてくる理不尽なんてものがあるとしたら
それは「京太郎」のことだったんです

京太郎の疑心暗鬼は最悪に達し、山田の言葉すら通じないまでになっていました
karte.154では、京太郎の目には周りの景色が不気味なものに見えてしまう描写が描かれました
世界で山田だけが輝き、それ以外は自分たちを引き離そうとする外敵のように映ります
あの光景はkarte.154だけの一時的なものではなかったのです
あの日以降も、京太郎の目には映るものすべてが恐ろしいものに見えていました
karte.154「山田は多分さ、事務所に反対されたらきっとそれに従うんだ」
この時の京太郎には目の前の山田すら信用することが出来ませんでした

山田はkarte.170にてこの時のやり取りをやり直し、外で会わないの約束は撤回させ、
お付き合いのルールを自分たちの身の丈にあったものに改定するのはご存じの通りです
つまりここからkarte.170までのエピソードは、山田と京太郎が
このときの話し合いの続きが出来るようになるまでの物語となります
しかしそのためには山田は京太郎を暗闇の世界から救い出さなければなりません・・・

karte.159karte.160
山田はおねえのバイト先に出向き、情報収集に乗り出します
山田はkarte.157の一夜のことやバンドの解散騒動の事なども聞こうとしますので
本題が分かり辛くなっていますね
この日、山田が本当に聞きたかったことはなんだったんでしょうか
それはおねえが察して、聞かれずとも教えてくれたこと
即ち、「京太郎の山田の仕事への印象」です
karte.156で何故か京太郎が自分の所属事務所を敵視してるらしいことを感じ取った山田
山田が現在も仕事を好きでいられているのは京太郎のおかげです
もし、京太郎が本当は自分に仕事を辞めてほしいと思っているのだとしたら
みんなの秋野杏奈ではなく京太郎だけの恋人になってほしいと思っているんだとしたら
山田の気持ちは決まっています
ですから最初にそれを確かめる必要があったのです
ここで山田の京太郎救出作戦の方向性が決まります
山田には仕事を辞める選択肢もあり得ました
もしそれを選んでいたら京太郎は自分のせいで山田が夢を諦めたことに耐えられたでしょうか
おねえは今回も京太郎と山田に正しい道を示してくれていたようです

karte.161
「・・・・・・図書室に萌子がいる」の台詞には裏の意味がありましたね
当初、この台詞は違和感でした
山田の嫉妬深さを表したような台詞、しかし今更萌子に対してそんなことを思うでしょうか
初見では山田の幼さに戸惑ったシーンでしたが今読み返すと意味が分かります
山田がこのとき抱いた感情は嫉妬ではありませんでした
警戒されず図書室に立ち入り、京太郎の隣にも座れる存在
山田は萌子に希望を見ていたのです
萌子を味方に引き入れることを閃いた瞬間です
山田にはおねえ以外にも頼りになる仲間がいたのでした

karte.162
状況を知った萌子の動きは早い
早速今後の戦略の要となる作戦が決行されます
karte.159では自身で詰め寄り、karte.160でおねえからの情報を得たものの、
山田はkarte.154であった京太郎と諏訪さんとのやり取りを知りません
未だに京太郎が何に怯えているのか、その核心が分かりません
分からないなら京太郎に直接聞いてしまおうというのです
文芸部を通じて市川京太郎氏にインタビューを仕掛け、本丸の内情を直接聞きだします
さらに同時に山田の好きを言語化させ、京太郎に今一度自分を見つめ直す機会とさせる
という一挙両得の大胆な作戦です
しかしこれには大変な危険が伴います
今の京太郎は山田以外はすべてが敵に見えてしまうという危うい状態
フラモブ事件のことを忘れてはいけません
信頼していたクラスメートに裏切られた経験が今の京太郎をおかしくした根本原因です
(karte.154から続いている視界の陰りは教室の中やクラスの仲間すら例外ではなかったのです)
この決死の任務に切り込む特攻隊長は半沢さん
比較的京太郎の信頼を得やすく、不自然なことを言っても疑われない絶好の立ち位置です
また半沢さんのほうにもフラモブ事件に巻き込んでしまった罪悪感もあったのかもしれません
山田が隠れて聞いていたことからフレンズたちの謀であったことは分かっていましたが
こんな緊迫のシーンだったとは!

karte.163karte.164
ここでも初見では違和感を感じたシーンがありました
京太郎は山田にしかLINEを送っていないのになぜおねえも一緒に来たんでしょうか
「何か」の事情があってこの日おねえは山田と会っていたということです
姉妹同然に仲のいい二人ですから一緒に遊んでいても不思議ではありませんでしたが
しかし今見返すと意味深いシーンでした
この時の山田の言い訳する態度もとても不自然ですね
普段の山田なら京太郎が女性と会っていたことに嫉妬するはずじゃないでしょうか
(わたしには山田はそれよりもっと別の事を心配しているように見えます)
紙面に描かれていないところでも京太郎の周辺では沢山の動きがあったことが想像できます

karte.165
今にして思えば、おねえにとってバンドの解散危機など問題ではなかったのでしょう
karte.158以降、おねえは山田に協力して京太郎救出作戦の顧問アドバイザーです
弟の危機とあっては自分のことなど後回しにしてしまうのがおねえという人
京太郎の活躍で解決できたかに見えた解散騒動ではありましたが、
おねえにとってはその気になればいつでも解決できる
弟と比べれば優先度の低い問題に過ぎなかったというのが真相だったのかもしれません

karte.166
冒頭でいきなりおねえとももちゃんが親友の距離感に戻ってるのは
初見だと展開が急すぎて時間が飛んだように感じましたが
はじめから解散危機は大学生たちの茶番だったと知ると合点がいきますね

「・・・ほんとに・・・ほんとにありがとう」
注目したいのはこのセリフの重さです
ライブを見せてくれるだけにしては山田の表情が重過ぎる
山田はライブに感謝した、だけではなく
今まで京太郎を支えてきてくれたおねえの偉大さに感動していたんですね

そしてあのシーンが訪れます
山田は京太郎と約束し、自分もあれだけ楽しみにしていたつづくを
京太郎と聴くことなくライブ会場を離れてしまいます
最初はあまりにも衝撃的で、同時に不可解な事件でした
山田が帰らなければならない理由はそのときは何も思い当たらなかったので

客席に居た京太郎が自分と居る時には見せない安らいだ顔をしていたから、ですね
karte.154から続いている京太郎の暗闇の視界がこの時だけは薄らいでいました
あの中に自分が混ざったらどうなるでしょうか
今の京太郎は山田に向かう周囲の視線がすべて敵に見えてしまう状況です
karte.150での険しい表情が思い出されます
その瞬間に京太郎の安らぎの時間は終わってしまうでしょう
今京太郎に安らぎを与えられるのは自分ではなく一緒に受験を頑張る友達だと知った
山田は今の自分は無力だと知った
今の京太郎にいらないのは自分だと知った
それが山田が客席に合流しなかった真相というわけです

ただし京太郎を孤立させることもしませんでした
京太郎のそばには萌子がいましたね
初見、わたしには学園祭編の萌子に目立った場面がなく終わってしまったのが謎でした
木下はkarte.165で市川をサポートしていましたので
萌子もkarte.166で山田をサポートする役割があると思っていたのに目立った活躍無し
いいえ、萌子はここでもちゃんと活躍していましたね
萌子が居たから山田は先に帰るという判断をすることが出来たんです
自分が合流できないとはいえ京太郎と木下だけを会場に残すことも危険でした
萌子は最初から山田に京太郎を頼まれて学祭に来てくれていたんでしたね

karte.167
おねえ会心の秘策、「ライブでつづくを二人で聴く」すら不発に終わった京太郎救出作戦は
長期戦へと発展していきます
学校でLINE出来ない、教室で親しくできない、どころか
自分が近くに居ると一層京太郎を追い詰めてしまうかもしれないという塞がれた状況
山田が次に打った手は、実に市川京太郎の恋人らしい行動でした
自分も同じだけ傷つくことで少しでも彼と寄り添おうとする!
しかし山田が一緒に苦しみを味わおうと京太郎が苦しみが和らぐわけでもありません
山田も、京太郎と同じ過ちに陥り沈んでいきます
会いたいと思う自分のほうがわがままなのか、そんな恐ろしい考えが過ります
LINEの向こうの彼は気が触れるほど追い詰められているはずなのに
自分には相談をしてくれないのです
(木下や萌子には相談しているみたいなのに・・・)
香菜にすら救えなかった京太郎を救い出すなんて、やっぱり山田には無理なんでしょうか

それを見ていられなかったのは萌子です
karte.167で萌子が市川に言った台詞は、そっくりそのまま山田に対しても言っていたんですね

karte.168
karte.166から2か月近くが経過します
12月24日が訪れました
山田も京太郎と同じく、去年と同じ渋谷の街をうろつきます
なにか思惑があって、山田は京太郎の後を付けていたわけではないと思います
山田は12月24日だけでなく、karte.166のライブの日以降ずっと、
時間の許す限り京太郎のそばに寄り添っていたのではないでしょうか
karte.166で山田は市川香菜という人の凄さを知りました
おねえはkarte.158から京太郎を心配し始めたのではありません
中学受験に落ちたあの日から、ざっと3年間、弟を見守り支え続けていたんです
京太郎を直接助けることができず、陰で見守るしかできない日々は山田にとって地獄でした
しかしその地獄に3年も耐えてきた人がいたのです
1年の時には京太郎が登校拒否になるというもっとつらい時期もありました
山田杏奈は京太郎への献身においては相手がおねえであろうとも負けるわけにはいきません
山田にとっては12月24日もこれから何年でも戦い続ける1日に過ぎませんでした
(だから一度は帰ろうとしたんですね)

・・・・・・・。
そして京太郎の逆転の告白により二人の関係は元に戻りました
京太郎が疑心暗鬼の罠を振り払い、目を覚ますことが出来たということです
いつ、どこで、何をきっかけにして京太郎は目を覚ますことが出来たんでしょうか
その伏線もちゃんと劇中に示されています
karte.154の京太郎の悍ましい視界は一時的ではなくその後も、12巻以降続いていたと説明しました
しかし京太郎はこれと反対の経験を過去にしたことがありましたね
karte.48「イルミネーションがこんなに綺麗だなんて初めて知った」
それまでは煩わしく聞こえた喧噪がなぜかそのときは自分たちを祝福してくれているように感じられた
あの時の視界が今と重なることで京太郎の視界の陰りは吹き飛んだ
つまりkarte.168p3が京太郎の呪いが解けた瞬間です
karte.168p4からはついに戻ってきた本来の京太郎
karte.168p4以降の京太郎の行動の早さ、察しの良さはp3以前とは別物です
再び山田をときめかせるのに7ページもあれば十分でしょう
さきほどまで京太郎を支配していた恐怖はどこへやら
rte.149「山田はー事務所が恋愛禁止の方針だったらどうしようーと考えているんだ」
karte.154「山田は多分さ、事務所に反対されたらきっとそれに従うんだ」
こんなことに悩んでいたこと自体、京太郎はすでに忘れてしまっているようです
今の京太郎は、ただただ山田への愛しい気持ちが溢れて止まりません
この時の京太郎の気持ちを表す言葉は一つしかありませんでした
「愛している」
山田にはすぐにわかりました
京太郎から怯えが消え去り、本来の彼が戻ってきたことを
「やったー」の意味は京太郎の快気祝いです
京太郎も一緒に走るのは当然ですね

これまで京太郎は山田を守るとき、代わりに自分が傷つくという方法で山田を助けてきました
山田を守れるなら自分だけ恥をかいたり怪我をしたりすることに躊躇がありませんでした
わたしたちもそれを応援していたと思います
世界最高の美女である山田杏奈と添い遂げるためには並々ならぬ苦労があるのが当然で
その目的のために京太郎は限界を超える努力をし続けなければならない
山田杏奈との将来はその繰り返しの先に到達できる
京太郎はもっと頑張らなければならない
やがて京太郎の中で自分が傷付くことで山田を守るが
山田を守るためには自分が傷付かなければならないに変じていきます
しかしいつそんなことを山田が望んだでしょうか
京太郎の自己犠牲はいつからか京太郎の「エゴ」になってしまっていたのです
山田の望みは、京太郎に幸せになってくれること
京太郎の望みは、山田に幸せになってくれること
京太郎が傷付いているのに山田が幸せであるはずがありません
山田の幸せには京太郎も含まれていなければならないのです
山田を幸せにしたいなら京太郎はまず自分を幸せにしなければならなかったんです
最後の「やったー」はその誓いです
京太郎も一緒に走るのは当然ですね
この日はじめて二人が見据える将来の形が重なりました
交際開始から6か月、やっと二人は本当の恋人になることが出来たのです
いくつもの回り道を経て、独りよがりな「恋」をしていた市川京太郎は
ようやく本当の山田と向き合う「愛」に辿り着くのでした

しかし真実には彼一人で辿り着けたわけではありません
その背景には山田、それに彼の危機に団結する女の子たちの奮闘があったのでした
結局、彼の周囲には彼と恋人を引き離そうとする見えない理不尽などは存在せず、
あったのは見返りを求めず力を貸してくれる素晴らしい隣人たちだったのです
やっと愛の意味を知った京太郎ですがそのことにまでは気付けていないようですね
市川京太郎の成長の物語はまだまだ先が長そうです


4章

12巻の物語が全然別のものになってしまったんですけど~~~!?
「山田は事務所から京太郎との交際自粛を命令されている」←?
この情報1つを嘘とみなして読み返した、だけのはずですが・・・

しかし山田の恋愛禁止令が現状存在しないというのは、今考えてみるとそうとしか思えません
karte.149で事務所と話し合いに行くといった話も本編ではとっくに消滅していますからね
仕事に支障をきたすようなら考える・・・という諏訪さんの台詞はあったので(karte.81)
将来的にどうかは知りませんが市川が心配するような具体的な動きは現在までにはありません
だとするとkarte.154の京太郎のモノローグは言いがかりだったことになり、
外で会わない約束は過剰防衛だったことになり、
karte.156で決めごとの撤回を退けたのは横暴だったことになり、
会えない日々に苦しんでいたのは自爆だったことになり、
この構図をのりお先生が気付いていないはずがない
karte.168には、もともと2通りの見方が出来る回でした
迷子の山田を京太郎が見つけ出したようにも見えます
あるいは人によって迷子の京太郎を山田が見つけ出したようにも見えます
karte.168のサブタイトルというと・・・答えは最初に提示されていたんですね

12巻は14話中の8話のサブタイトルが「私・・・」で始っています
山田の登場頻度は全編を通しても少ない巻にも関わらず
理由は12巻の「真の主人公は山田」であったからです

「山田の事務所の恋愛禁止の方針」
この情報の真偽をどう捉えるかで描写の解釈やキャラクターのイメージまで
すべてが反転してしまいます

・市川香菜
バンドの解散の危機を放置して解決を弟に任せ、他人の世話は得意でも自分のことは疎かな大学生、
かと思われたおねえは実は京太郎救出作戦参謀
バンド解散騒動はその気になればいつでも解決できる優先順位の低い問題だったに過ぎません
京太郎はおねえを助けているつもりで実は自分が助けられていたようです

・関根萌子
萌子と山田の関係はライバル?山田は萌子に嫉妬している?と勘違いさせる描写が続きますが
実際の二人は最高の相棒です
karte.166では山田は「京太郎の隣に萌子が居たことで」ライブ会場に来ることはありませんでした
(ただし意味が違います)
いつも颯爽と現れ的確なサポートをしてくれる彼女ですが
今回も困難な作戦を次々と成功させる名サポーターっぷりを発揮、裏の主人公の一人とすら言えます

・半沢ゆりね
半沢さんのイメージは以前から善良で変わりありませんが
実は勇気ある女性の一面があったことは新たな発見ですね
市川はあまり親しくない他クラスの生徒からすれば
授業中に模造紙を切り裂いたり自転車を川に投げ入れたりと悪評が絶えない危険人物?です
「あの」市川くんが恋人の山田さんでも手に負えないほどおかしくなってしまった!?
そんな彼と今回最も危険な対決をしたのは彼女でした
さすが前作主人公!

・ももちゃん
ももちゃんの物語上の役割にも触れておきたいです
12巻でのももちゃんは本当にどうしようもない人物として描かれていますね
香菜が就職すると聞けばそれだけでバンドも辞めてしまうと早合点
拗ねて話を聞かず、周りを巻き込んで迷惑をかけ、
特に印象が最悪だったのはkarte.165ではないでしょうか
誤解が解けたのであればせめてごめんはももちゃんから言うべきだったと思います
しかしももちゃんは最初の「ごめんね」も先におねえに言わせてしまいました
京太郎から見ると「なんでこんな人とおねえは付き合ってるんだ?」という迷惑な人物
読者の印象も最悪ですね
なぜここまでの描かれ方をしたんでしょうか
ももちゃんは、京太郎の写し絵だったんですね
のりお先生はももちゃんを使って京太郎の本当の姿を描いていたんでした
京太郎が関係的にはどうでもいいももちゃんを弁護したのはももちゃんの中に自分を見たからです
しかし12巻の京太郎が山田やおねえ以外にはももちゃんのように見えていたんだとしたら
そんなどうしようもない京太郎を萌子が助けた理由はなんだったんでしょうか
萌子も京太郎に自分を見つけたという事、でしょうか?
この部分は今後の伏線になってくるのかもしれませんね

・諏訪祐希
コマに映っていないからといって、この人の活躍を見逃すわけにはいきません
時間の許す限り京太郎に寄り添いながらそれが理由で仕事に支障が出てもいけない
この不可能任務の達成は諏訪さんの全面協力なくしては成り立たなかったでしょう
京太郎が会ったこともないのに想像で敵視していた事務所の人たちとは
山田にとっては家族に次いで大切な人たちであった
多くの誤解の積み重ねによって生まれた今回の事件、
二人の最大の解釈の齟齬は「事務所の人たちのイメージ」でした
未だ本編には登場していないストライクプロモーションの全貌ですが
「京太郎が抱いたイメージの反対」を想像してみればどんな人たちかが分かりますね
11巻で諏訪さんが山田の自由を制限する動きを見せたのはプライベートを守るためでした
山田にとってのプライベート、とは言うまでもなく主に京太郎との関係の事です
厳しく見えた諏訪さんの行動も思い返してみれば京太郎のための行動だったのです

ところでこの大掛かりなトリックが、いつから仕掛けられていたのか…ですけど
実は相当に初期から、かもしれません
設定自体は最初期からあるはずのストライクプロモーションのスタッフが
これまでほとんど登場していないことが重要な鍵となっているからです
また逆に言えば登場させなかった理由が12巻のエピソード終了とともに消滅したと言えるので
今後は諏訪さん以外の事務所社員のキャラクターも登場するかもしれませんね

・山田杏奈
そして山田
萌子に嫉妬している?京太郎に構ってもらえなくて拗ねた?
いいえ、山田が京太郎とのデートを諦める理由なんて京太郎のため以外にないでしょう
当初、わたしは山田の行動が彼女の我儘に見え、11巻までのキャラ像と一致しなかったんですけど
これで11巻まで、それにkarte.169以降の山田とイメージと繋がりました
やっぱり山田は最高にいい女でした!
初見だと非常に幼く見えた彼女の行動でしたが
実際の山田の成長度合いは今のところ京太郎より山田のほうが進んでいるようですね
最後の決め手こそ京太郎の覚醒であったものの、それ以外は終始山田が京太郎を先導する立場でした
二人で一緒に幸せになろうとする愛の形も山田はずっと前から辿り着いていましたからね
karte.170の二人のやり取りはそのイメージ通りですし
karte.174のオチも12巻現在の二人の成長度合いから考えれば納得のいく結末です

交際が秘密ということになっている件、がどうなるかですが
事務所から強制されているわけではない、というだけで
山田自身には出来たら秘密にしておきたい意思があることには変わりません
しかしばやしこに対してだけはいつか打ち明けなければならないでしょう
フラモブ事件以降学校内で京太郎とベタベタできなくなったのもそのままですし
すべての事件がきれいに解決したわけではないですね

・市川京太郎
大学に乗り込んで7歳も年上の大人たちの問題を解決するスーパー中学生、
そんな彼の本当の姿はあまりにも意外で、なのに実に彼らしい、等身大の中学生でした
京太郎はわたしたちが思っていたほど超人ではなかったし
わたしたちが見てきた京太郎は本来よりずっと背伸びしてきた彼だったようです
京太郎の成長度合いは作品の理解の重要なキーとなる部分
大学生同士の諍いを解決し山田も元気づけて救い出したスパダリイメージのままだと
ストーリーの解釈にも祖語が出てきます
京太郎の成長度合いについては解釈を大幅に下方修正しなければならなくなりました
実際のこいつは太田や足立たちの猥談を真に受けて精神を病む程度には子供だったので(karte.61)
しかしだからって努力が足りないと考えなくてもよいというのが12巻の教訓でもあります

山田との交際が世間に公になると事務所に別れさせられる、の誤解は
京太郎の中ではkarte.170以降も生きています
山田のほうにも交際を隠そうという意思はありますからね
(そうする理由の重大さは京太郎と山田で全然違うのですが)
学校で交際を秘密にしていたのは10巻以前からそうしていましたから
誤解は訂正しないまま進めるんだと思います


おそらくのりお先生はあらかじめ2通りのプロットを作成し
12巻のストーリーは京太郎視点でも山田視点でも漫画に描けるように設計されています
京太郎視点の物語は不可解な事件が連続し、物語がどこに向かっているのかわからない不安と恐怖
自分の問題を自身では解決できず、誰かの救助を待つヒロインの不安といら立ちが感じられました
対して山田視点の物語は、冒頭ではっきりとした物語の目標が提示され
ひとつひとつのエピソードは一筋の線で繋がり、
仲間を集めつつ困難な課題を解決するたびに京太郎救出の大目的へと近づいていきます
終盤手前では盛大な負けイベントを経験しますがラストはヒロインの覚醒を経ての逆転勝利!
山田視点のプロットは難解どころか、実にお馴染みの、勇者山田の痛快活躍譚です
(山田がバンドの解散騒動にほとんど関わらなかったのは
山田視点の原稿ではバンド解散騒動はわき役たちのサブストーリーで処理されてるためでしょう)

一人称視点の漫画において読者と認識を共有しているはずの主人公が
エピソードの途中から認知をおかしくしてしまうという禁じ手の叙述トリック
見えていなかったのは常に差し伸べられていた救いの手
会えなくても途切れない深い愛情、友人たちの優しさ
画面に山田は写っていないのに山田の存在感は強く感じられる
本当にすごい巻でした
史上最高と思われた8巻を上回った10巻を12巻はさらに上回ってしまいました
日本漫画史上に奇跡的傑作が誕生しました!





と、ここまで書いても桜井のりお先生の恐ろしさを半分も説明できたことにはなりません
どうしてこんなあからさまな叙述トリックが成立したんでしょうか
rte.149「山田はーーーー事務所が恋愛禁止の方針だったらどうしようーと考えているんだ」
karte.154「山田は多分さ、事務所に反対されたらきっとそれに従うんだ」
なぜ、わたしたちはこんな頓智気なモノローグをすんなり飲み込んでしまったんでしょうか
1~10巻までの山田を知っていれば違和感しかない台詞だったはずです
丁寧なエピソードの畳みかけで少しずつ違和感をそぎ落とし、読者の判断力を麻痺させる
まともな判断力を失い振り回されたわたしたちはまさに12巻京太郎の疑似体験
12巻の神業を超えるのは読者の常識すら書き換えた11巻の悪魔的ミスリード力です


あとがき

12巻であがった数々の疑問、
事務所のスタンスを確かめると言っていた件どうなったのか
なぜ山田はライブに来なかったのか
京太郎が辿り着いた愛とはなんだったのか
なぜ、唐突にそれを閃いたのか
以上がその解説となります

12巻の疑問はなくなったでしょうか
わかった、納得できた、という方は下記にてコメントをください
いやまだ分からないところが残っている、ここがおかしいという方はコメントにて教えてください
それならここはどうなんだ、追加の疑問質問も大募集です
考察に加えさせていただきたいです

しかしそれらは急いてやることではありません
それより早急に取り掛からなければならないのは・・・11巻12巻を読み返しましょう、今すぐ!

 

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