飴と、ニット帽と、温かい飲み物、
あとはナイフ。
ナイフって言っても、小さいけれど。
「っぢ!!」
水筒に入れたカボチャスープが熱すぎて叫んだ後、私は慌てて口を覆った。
お母さんは、蟻の子の泣き声まで聞き取れるんだもん。
私は《警察》みたいに姿勢を低くして、
泥棒みたいに音を殺して、
ドアを少しだけ開けて、その隙間からゆっくり抜け出す。
お母さん、ごめんなさい。
ちゃんとお話は聞いてたよ。
でもね、
私はみんなと違って、
注意されたら余計にやけちゃうみたい。
しょっぱい水?
火を吹く山?
未知なる生物?
全部全部、私の夢見る理想郷!
「…私は悪くないもんね」
行くなって言われたら、
行きたくなっちゃう。
考えるなって言われたら、
余計に胸が踊っちゃう。
しょうがないでしょ?
霧の中をすり抜けて、
夜闇をこっそり駆け抜けてみた。
いつもなら明るい花屋さんも、
色んな服が並ぶショーウィンドウも、
楽しいけどちょっぴり怖い人形屋さんも。
こんな時間だと、影と同じ色になって
なんにも見えない。
「…あった!!」
ああもう、前髪もっと切れば良かったなあ。
前髪をピンで止めて、
私は目の前にあった螺旋階段に飛び乗った。
この階段は、普段は大人たちが
見張ってて、私たちが近づこうとしたら
すぐ追い払って怒ってくる。
近付くな、危ないぞ、って。
「はぁ、はぁ、」
興奮して、じっとしちゃいられない。
だって気になっちゃうんだもの。
しょうがないでしょ?
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