1ドル硬貨というと、最近のアメリカでは、2007年から発行・流通している「大統領1ドル硬貨」を指すらしいのですが、ここでは古くからあった「銀貨」の話です。


 銀1オンスのコインとして作られたのが、ワンダラー。
「ダラー」というアメリカの通貨の呼び方は、ボヘミアの1オンス銀貨「ターラー」を真似て作った事から来ています。コインが「ドル」の名前の元だったんですね。
 1794年から鋳造され、江戸時代末期の日本では一分銀3枚と交換された、という、銀ならではの異国の流通が可能な貨幣でもありました。

 何度かデザインが変更され、サイズも時代によって微妙な違いがあるそうなのですが、代表的なものは直径37mmです。通貨としてはかなり大きいコインです。
 後に銀ではなくニッケルで作られた時も、このサイズは継承されました。
 これがマジシャンにとってもなかなか絶妙で、五指に挟んで見せるのにぴったりです。

 コインは、ボールより指に挟み辛いので、挟める限界のサイズもボールより小さいものになります。
 たとえば直径40mmのコインは、45mmのボールと同じくらいの指の広がりが必要です。
 また、ボールは指の広がりが少しくらい不足していても、なんとか持てるのですが、コインは「指先側から見て一直線にする」というディスプレイの必要性から、指をさらに広く開く必要があります。

 37mmは、日本人の手でもそれほど無理がありません。程度問題ですが、女性でも訓練すれば持てるサイズでしょう。4枚持つと累積して幅が増えるので、たった3mmでもかなり違いがあります。

 ただし(四つ玉をおやりになった方はお分かりかと思いますが)、直径4cmでも舞台では決して大きくありません。
 言葉を使わないアクトの場合は特に、照明、音、動作やタイミングをフルに使って、存在感を上げていく必要があります。

「通貨である」という事は、素材の持つ利点です。お金はベタな演目とも言えますが、それだけ注目度も話題性も高いのです。
 ワンダラーは現在では通貨ではありませんが、特有の「雰囲気」があります。
 基本的な形状ですが、個性的な性格を持つアイテムです。

 もしも、意味合いを増す演出があるとすれば、かつて「1オンスの銀」が流通していた、古き良き時代をイメージとして使うのがいい気がします。