マジックの百科事典、ターベルコース。
1926年より順次書かれたものですが、現代にも通じる示唆に飛んだ内容が書かれています。
ただしこれは、入門に向く書ではありません。時代の壁は思ったより大きいのですが、それ以外にも「入門者にはわかりづらい所」があります。
第1巻のレッスン1と2は、マジックの根本について語る文章です。トリックの解説ではありませんが、これはある程度経験を積んだ後に重要になってくる、含蓄の深い章です。
逆に言うと、初心者の内は意味がわかりづらいものです。
レッスン3からは、いわゆるマジックの解説書の体裁になります。技法の解説、トリックの解説が書かれます。
しかし、ここにも……
不可解な記述があります。
かつて初心者だった頃、コインのステージアクトをやる事になったものの、どうすればいいのかわからず困り果てた当時の私自身に向けて、この「1巻レッスン3」の注釈を書いてみます。
・64ページ5行目に、コインの練習・演技用具として「ギザがしっかりと刻まれて扱いやすい50セント銀貨のサイズのコイン」が売られている、という記述があります。
しかし日本のマジックショップでも海外コンベンションのショップでも、ギザがしっかりついているものを見たことがありません。
薄いコインは数種類売られていますが、エッジがつるつるです。用途にもよりますが、まずは普通の50セント銀貨を用意しましょう。
ステージで大きめのコインを使いたい人は、お金を溜めて1ドルコインやニールセンコインを手に入れて下さい。ギザが必要なら、自分で刻みを入れます。
※ステージに使うワンダラーサイズのパーミングコインはあまり売られていないので、私は最初、手に入らず困った末に、金属粉入り樹脂で作ってヤスリでギザを付けました。当時の学生はコインのステージアクトを行う事になると、真鍮版をハサミで切るなど手作りの道具でなんとかしていたのです。ニールセンコインもショップにはそんなに大量には置いてないようですので、コインアクトはまず、必要なコインを用意する時点で困難が発生しやすいのです。
・64ページ・技法の1。「フロント・フラットパーム」という用語は現代ではほとんど使われません。「クラシック・パーム」です。
よく使う技法が書かれていない、または形が標準的なものと違うため、この章のパームは初心者の内は特に覚える必要はありません。むしろ、古いコインの文献にあたる際の用語辞典だ、と思う方が適切でしょう。
・68ページ・消失方法
19種も紹介されていますが、どれも初心者が行うには難しい技法です。そもそも記述があっさりしすぎています。おそらくこの部分は、それまでに出ていた奇術書からの引き写しですね。(ターベルの改良したフレンチ・ドロップは除く)
実演できる人に見せてもらえる状況でなければ、最初は別の詳しい入門書(または現代ならDVD)を参照する事をお勧めします。
・78ページ・消失方法の18
どう考えても不可能な記述「ダウンスやマヌエルは、たくさんのコインでこの技法を行います。1ダースや2ダースのコインをパームすることは、彼等にとって簡単でしょう」というのが出てきます。
実際には、小指の第一関節から指先までの間に、物理的にそんな量のコインが挟めるはずがありません。いくら名人の話をするにしても、誇張しすぎだと思います。薄いパーミングコインでも6-7枚が限界でしょう。
また「多数のコインを扱う方法は後述するとして」と書かれていますが、それは後になっても出て来ません。
※Boboの「モダン・コイン・マジック」310ページには、6枚を使う絵が書かれていますが、著者の注として「ダウンズや他のパフォーマーがこれを行ったのかには疑問がある。ダウンズは三枚でしか行っていないとも言われている」という記述があります。
・82ページ・消失後の処理
ステージで一枚のコインを消失させた後にすぐ処理、というシチュエーション自体があまりありません。正直、それは手順として無茶です。最後に書かれているターベル氏本人の「どうどうと置いてくる」方法であれば実用的です。
・82ページ・チェンジオーバーパーム
・83ページ・サムチェンジオーバー
何も持たずにチェンジオーバーパームを行う、というシチュエーションはできるだけ避けるべきです。これは経験者でも難しい動きです。
・その他
三巻にもステージ向きのコインアクトの紹介がありますが、あくまで「しゃべる事を前提にした、ダウンズから続くマイザーズ・ドリームの系統」だ、という事に注意が必要です。
指導書の最初に間違いがある、というのは、流派の秘密を守ったり指導者の必要性を作るために、わざと行われる事があるのですが、ターベルコースに関してはそんな必要はないでしょうし、単に旧版や参考資料から書き写した際のミスがあるのでしょう。
少なくともコインについて、初心者に「ターベルコースを読め」というのは現実的ではありません。混乱するだけだと思います。
ステージアクトの参考資料なら、マジシャンの演技の映像を探して来るのが、とりあえず最も参考になる方法ではないでしょうか?
1926年より順次書かれたものですが、現代にも通じる示唆に飛んだ内容が書かれています。
ただしこれは、入門に向く書ではありません。時代の壁は思ったより大きいのですが、それ以外にも「入門者にはわかりづらい所」があります。
第1巻のレッスン1と2は、マジックの根本について語る文章です。トリックの解説ではありませんが、これはある程度経験を積んだ後に重要になってくる、含蓄の深い章です。
逆に言うと、初心者の内は意味がわかりづらいものです。
レッスン3からは、いわゆるマジックの解説書の体裁になります。技法の解説、トリックの解説が書かれます。
しかし、ここにも……
不可解な記述があります。
かつて初心者だった頃、コインのステージアクトをやる事になったものの、どうすればいいのかわからず困り果てた当時の私自身に向けて、この「1巻レッスン3」の注釈を書いてみます。
・64ページ5行目に、コインの練習・演技用具として「ギザがしっかりと刻まれて扱いやすい50セント銀貨のサイズのコイン」が売られている、という記述があります。
しかし日本のマジックショップでも海外コンベンションのショップでも、ギザがしっかりついているものを見たことがありません。
薄いコインは数種類売られていますが、エッジがつるつるです。用途にもよりますが、まずは普通の50セント銀貨を用意しましょう。
ステージで大きめのコインを使いたい人は、お金を溜めて1ドルコインやニールセンコインを手に入れて下さい。ギザが必要なら、自分で刻みを入れます。
※ステージに使うワンダラーサイズのパーミングコインはあまり売られていないので、私は最初、手に入らず困った末に、金属粉入り樹脂で作ってヤスリでギザを付けました。当時の学生はコインのステージアクトを行う事になると、真鍮版をハサミで切るなど手作りの道具でなんとかしていたのです。ニールセンコインもショップにはそんなに大量には置いてないようですので、コインアクトはまず、必要なコインを用意する時点で困難が発生しやすいのです。
・64ページ・技法の1。「フロント・フラットパーム」という用語は現代ではほとんど使われません。「クラシック・パーム」です。
よく使う技法が書かれていない、または形が標準的なものと違うため、この章のパームは初心者の内は特に覚える必要はありません。むしろ、古いコインの文献にあたる際の用語辞典だ、と思う方が適切でしょう。
・68ページ・消失方法
19種も紹介されていますが、どれも初心者が行うには難しい技法です。そもそも記述があっさりしすぎています。おそらくこの部分は、それまでに出ていた奇術書からの引き写しですね。(ターベルの改良したフレンチ・ドロップは除く)
実演できる人に見せてもらえる状況でなければ、最初は別の詳しい入門書(または現代ならDVD)を参照する事をお勧めします。
・78ページ・消失方法の18
どう考えても不可能な記述「ダウンスやマヌエルは、たくさんのコインでこの技法を行います。1ダースや2ダースのコインをパームすることは、彼等にとって簡単でしょう」というのが出てきます。
実際には、小指の第一関節から指先までの間に、物理的にそんな量のコインが挟めるはずがありません。いくら名人の話をするにしても、誇張しすぎだと思います。薄いパーミングコインでも6-7枚が限界でしょう。
また「多数のコインを扱う方法は後述するとして」と書かれていますが、それは後になっても出て来ません。
※Boboの「モダン・コイン・マジック」310ページには、6枚を使う絵が書かれていますが、著者の注として「ダウンズや他のパフォーマーがこれを行ったのかには疑問がある。ダウンズは三枚でしか行っていないとも言われている」という記述があります。
・82ページ・消失後の処理
ステージで一枚のコインを消失させた後にすぐ処理、というシチュエーション自体があまりありません。正直、それは手順として無茶です。最後に書かれているターベル氏本人の「どうどうと置いてくる」方法であれば実用的です。
・82ページ・チェンジオーバーパーム
・83ページ・サムチェンジオーバー
何も持たずにチェンジオーバーパームを行う、というシチュエーションはできるだけ避けるべきです。これは経験者でも難しい動きです。
・その他
三巻にもステージ向きのコインアクトの紹介がありますが、あくまで「しゃべる事を前提にした、ダウンズから続くマイザーズ・ドリームの系統」だ、という事に注意が必要です。
指導書の最初に間違いがある、というのは、流派の秘密を守ったり指導者の必要性を作るために、わざと行われる事があるのですが、ターベルコースに関してはそんな必要はないでしょうし、単に旧版や参考資料から書き写した際のミスがあるのでしょう。
少なくともコインについて、初心者に「ターベルコースを読め」というのは現実的ではありません。混乱するだけだと思います。
ステージアクトの参考資料なら、マジシャンの演技の映像を探して来るのが、とりあえず最も参考になる方法ではないでしょうか?