ロールダウンとは、コインのテクニックで、四枚のコインを五指の間に広げてみせるものです。
 コインロールとは違い、丸い形が見えたまま横に指の間を移る感じです。
 普通コインが「転がる」というと、こっちのイメージですね。

 最初は一枚でも難しいのですが、慣れるといろんなバリエーションができるようになります。

 私がステージマジックで最初に教わったのは、このロールダウンだった記憶があります。
 18歳で最初にステージ手順を組んだ時から今まで、少しずつ改良しながら使っています。

 ただ、最初から今までずっと、疑問な事があります。
 

 これ、マジックじゃないよね?


 マジックで品物が増加する現象には、「出現」と「分裂」があります。ロールダウンは分裂です。
 小さい違いのようですが、マジカルさに大きな違いがあります。

 代表的なマニピュレーションを例に、三つに分けてみます。


・カードマニピュレーション・タイプ
 空の手からいきなり大量に出現。

・シンブル・タイプ
 何もない指に出現するが、独特な手の形をうまくカバーする必要はある。

・四つ玉・タイプ
 最初は出現、後は分裂。


 仕事としてマジシャンに採用されているのは、カードマニピュレーションが多いのですが、これは他のアイテムより不思議さが強く、派手さもあるためでしょう。
 先人の智慧と努力の結果ですが、両手を空に見せるための、信じられないような技が存在します。

 おそらく種類が多いのが、四つ玉タイプ。
 仕掛けとテクニックの両方を使うのですが、これはなんというか「増えるようにできてるんでしょ」という身も蓋もない感想をもらう事があります。「増加」するタイプの最大の弱点でしょう。
 確かに極端に言うと、テクニックが必要ないような仕掛けは考案可能でしょうね。
 もっとも、(やってみないとわかりづらいのですが)仕掛けを使うより練習した方が実用的、という結論になりやすいのです。
 不思議さの有無は、手順構成でかなり工夫はできるのですが、そこにはアイテムごとにいろいろと制限があります。

 これ以外の、たとえば容器から出すものは、マニピュレーションではなく「プロダクション」という扱いになるようです。

 
 さて、コインのロールダウンは、最初の一つを常に見せている必要があります。
 四つ玉にかなり近いのですが、もっと悪い事に「平らな形だから重ねて持ってる」という想像がしやすいものです。
 このため、マジカルさを犠牲にして「大量に出す」とか「テンポとリズムで見せる」などの、限定的な使い方になります。マジカルさに難がある上に、四つ玉より難しいため、この分野を演ずる人はかなり少ないようです。
 
 せめてシンブルのように、制限はあっても「空の手」から出せるようになれば。
 いきなり指の間にコインを出現させたい。

 そんな想いを持って早や10年。
 実現の希望が出てきたのは、最近のことです。