「恩をアダで返す」
この諺には、チャットで2通りの解釈が成り立つ。
すなわち、
①男性が女性に親切にしてあげた結果、
女性がアダルトな行為を提供してくれること。
②女性が男性へ親切にしてあげたにもかかわらず、
男性がその恩を仇で返してしまうこと。
今日は、淋しいけど、後者のケースを語ろう。
TIM(この女性には「ティム」と呼んであげてほしい;
俺たちティー・アイ・エムでは悲しすぎる)は、
30代前半の既婚女性。
旦那とは結婚5年以内で、いまもなお現役ラブラブ中。
子供はなく、平日昼間は仕事バリバリの
キャリア・ウーマンである。
だから、彼女がインするのは、
平日の夜中――それも夫と交わったあとか、
さもなくば、その早朝に限られる。
顔出しは常にNGなのだが、
パジャマ姿でのインに、
どこか誇らしげな雰囲気が伝わる。
けっして、満たされていないわけではない。
もっと満たされるために、インしてくる。
そんなTIMは、真面目に仕事の内容を語りながら、
タイピングの途中で、手が胸元や股間に向かい、うずき出す。
TIMの「2回戦目」に5~6回お相手願い、
すっかり「お気に入り」に認定してもらっていたが、
ちょうど、その頃、私自身の仕事がピークに達し、
以後数ヶ月、全くチャットすらインできない状態が続いた。
季節が移り変わり、ようやくTIMにインしてみると、
「あれ?」
そのルームが開かない。
何度やっても、TIMの待機映像に繋がらない。
最悪のことに、メールも送信できない。
幸い、彼女は他のサイトにも登録していたので、
別サイト経由で、その旨を質問したら、
即座に返信が届いて、ホッとする。
その本文とは……
「私、男性がしばらくインしてくれないと、
焼き餅を焼いて、その方をキックしちゃう癖があるの。
ごめんね。いま、解除しておくわよ!」
ネットで焼き餅を焼くなんて、お茶目な人妻だな。
そして待つこと、10分、20分、30分…。
インしようと、サムネイルをクリックしても、
やっぱり待機映像は繋がらない。
――いやっ、困ったな。
結局、その日のインはあきらめた。
ところで、時折、
フリーメールのアドレスを教えたチャトレさんから、
メールをいただく。
このメアドには、サイト本部からの連絡事項も届くので、
適時受信するようにしている。
数ヶ月ぶりに、このメアドのメーラーを立ち上げてみた。
すると、どうだろう。
発信者のほとんどは、TIM、ないしは、
TIMのメッセージを仲介してくれた管理人からであった。
――ギャツビーさん、こんにちは。
――ギャツビー、元気にしている?
――ねぇ、会いたいなー。
――インしてる?
そのテンションは、
デクレッシェンドになりつつあったとはいえ、
彼女は何度も私信を発してくれていたのだ。
それも、ありきたりの勧誘メールなんかではない。
れっきとした自分宛のメッセージだった。
その厚意に、全く応えてやれなかった。
♪黒ヤギさんたら 読まずに…♪
仕事だったとはいえ、
TIMに少しも構ってやれなかったことを悔むばかり。
こうして、オキニとの別れは、突然やってきた。
「泣く子とチャトレには勝たれぬ」
――これが、チャットにおける第2の諺である。