我が家の盲導犬候補生

アーシー(仮名)との歩行訓練で

結構な数のスーパーやカフェなどの

商業施設に足を向けている私でございますが

これまでのところ

「犬連れでのご来店はお控えください」と

お店の人に言われたことはありません。

 

毎回毎回お店の入り口で店員さんに

「盲導犬候補生の訓練中です。

お店に入れていただいていいですか」と

確認を取ってはいるのですが

それは本当に『念のため』という感じです。

 

パピーウォーカー(盲導犬候補生が

訓練学校に入るまで生活を共にし

『人間との生活』に慣れさせる役目)に

立候補した時は、実はもう少しこう

「申し訳ありませんがウチは犬は・・・」

みたいなことを

こういう時に言われちゃうのでは、と

考えていたのですが、

本当にそんなことはまったく起きず。

 

「いや、そりゃ普通のペットは

入店お断りってしていますけど、

盲導犬をお断りする訳はないし、

盲導犬を受け入れるのなら

未来の盲導犬、盲導犬候補生を

受け入れるのも当たり前でしょ?」

という雰囲気を

ひしひしと感じるこの心強さ。

 

 

そんなわけで本日も

アーシーとともに某大型スーパーに足を運び

「よし、じゃあアーシー、ここから屋内だ。

今日は特に屋内でリードを『引っ張らない』よう

気を付けて歩いてみよう。いつものことながら

屋内ではトイレ禁止、よそ見禁止、じゃあ行くよ!」

 

そう言いながら入店し、ここはもう何度も何度も

訓練に利用させてもらっているお店なので

ちょうど近くにいた体の大きな警備員さんに

IDカードを示して笑顔でその場を過ぎようとしたら

・・・その警備員さんが横歩きでするすると

私と犬の前に立ちはだかって来るではありませんか。

 

あれ?

 

そう言えば私はこの警備員さんとは

特に面識がないというか顔に見覚えがない、

あ、そうか、ちゃんと説明しないと駄目か、と

再びIDカードを高くかざして

「こんにちは。この犬は盲導犬候補生で

私はそのパピーウォーカーです」

 

「うん。わかっている

 

わかっている、とおっしゃりつつも

警備員さんは私と犬の正面から動く気配がない。

 

「えーと・・・こちらのお店ではよく

歩行訓練をさせていただいておりまして・・・」

 

「うん。当店は盲導犬及び各種介助犬の

訓練受け入れに積極的であります」

 

警備員さんは頭髪を剃りあげていて

全身の筋肉が隆としていて

そんな殿方がまさに我々を

『とおせんぼ』しているというこの不条理な状況。

 

「その・・・よろしければ本日も

うちの犬を店内で

少しばかり歩かせていただけないかと・・・」

 

「勿論それは問題ない。

しかしちょっと待ってくれたまえ、

この犬を見たのは僕は今日が初めてだ

・・・(警備員さんは直立したまま

目線だけ下に落とし)このワンちゃんめ、

さては君は新顔だなっ?えっ?訓練なんて

偉いじゃないか!えっ?この新人め!」

 

それだけ言うと

この英国風武蔵坊弁慶は

すっと横に身をかわし

「はい、ではご入店ください」

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

 

 

歩行訓練をしながら考えたのですが

警備員さんの言う通りたぶん

このお店は盲導犬・介助犬候補生の

人気訓練施設で、そうした犬が

よく来店するのではないかと。

 

故にお店の人もそうした

盲導犬・介助犬候補生との接し方、

『訓練中の犬にみだりに話しかけては

いけない』の基本原則をよく知っていて、

だからたとえどれだけ自分が犬好きでも

腰を屈めたり膝をついたりして

犬に話しかけることはご法度、と

警備員さんも自分を戒めていたのではないかと。

 

でも今日はこれまで見たことのない犬が来た!

 

ちょっとくらい近くで見たい!

 

でも犬に話しかけてはいけない!

 

なら犬を連れている人間を足止めして

『人間と話している』フリを装いつつ

犬を近くで眺めちゃおう!みたいな

行動だったのではないか、と。

 

・・・盲導犬は社会に護られて育成される。

 

ありがたい環境であると思っております。

 

 

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