『編み物』に手を出して3日目の朝。

 

こういう手芸は

急いで結果を求めるのではなく

気長にやっていくのが正しかろう、と

家事の合間合間に

網目を増やす戦略を採用した私。

 

お風呂とトイレの掃除をして

洗濯機を回したら

編み物の段を2つ増やして、

庭の掃除をしたらまた編み物を

1段増やして、という感じに。

 

こんなに真面目に

編み物に向き合っているのに

何故また目が落ちていくんでしょう・・・

 

前の日に習った編み物の

『表』と『裏』を確認するも

特にその点で問題はない模様、

ということは単なる編み落としか。

 

まったくもう私の粗忽者!粗忽者!

 

でも大丈夫、対処法は万全、

網目が落ちたところまで

編み物を『ほぐし』て編み直す。

 

ハッハッハ、私、初心者にしては

編み物をほぐすのは上手なんですよ。

 

・・・そうせざるを得ない状況に

割と何度も陥っているせいで。

 

(注:ここは笑ってあげてください)

 

まあそれは冗談にしても

おかげさまで最初に編み物を

『ほぐした』時に比べ

作業時の恐怖感は格段に減りました。

 

はじめのうちはどうしても

「ほぐした後に目を

拾い直せなかったらどうしよう」

という不安が常に

付きまとっていたのですが

この頃になると

「その時はその時でもう1段

ほぐして取り繕えばいいだけだな」

という開き直りが出てきていたというか。

 

そんなわけで編み物をほぐし、

目を拾い直し、改めて編み直し。

 

よしよしこれで大丈夫、と

数段編み進んで確認すると

・・・また新たに目が落ちている。

 

これは・・・何がアカンのかしら・・・?

 

そんな自覚はないのだけれど

勝手に気が緩んでしまっているとか・・・?

 

しかし悩んでいても仕方ない、

網目をほぐして編み直すのみ。

 

ところがこの穴、何度編み直しても

私にはどうしても拾い直せませんで。

 

「何だ?何がいけないんだ?

目の数はあっているし、

表と裏も確認しているし、

編み方は間違っていないはずだし。

なのに何故この穴は

何度も何度も

登場してきてしまうのだ!」

 

私の問いかけに夫(英国人)は

静かに視線をそらすのでした。

 

事態、完全膠着。

 

なんかもうその2段を

編んではほぐし、編んではほどき、

あれ?神話でこういう話が

ありませんでしたっけ?

 

編み物が出来上がったら

結婚します、と宣言した女性が

意中の人が戻ってくるまで

夜は灯りをつけて編み物をし

昼にこっそりそれを

ほどき続ける、という・・・

 

ああ!神話の登場人物の

名前も思い出せないし

そしてこの迷宮から

抜け出す策も思いつかない!

 

・・・これはまた先生の家に

突撃を仕掛けるしかないのかしら・・・

 

しかし二晩連続で

そんな真似をしてしまうのも

あまりに迷惑、

編み物は何とかなっても

友情のほうに取り返しのつかない

もつれが生じてしまいそうな。

 

ああでもないこうでもないと

下手の考え休むに似たりな

試行錯誤を繰り返しているうちに

気がつけばもう時刻は夜更け。

 

「妻ちゃん、今日はもうそこで

手を止めたほうがいいんじゃないですか」

 

わが夫の言葉は

もっともではあったのですが

「いや、しかしここで止めては

この編み物に一晩穴が

開いたままになってしまうわけで

・・・夜の間に穴が

増殖しちゃったら困るだろ?」

 

(ちょっと思考が病み始めていた)

 

「君は相当疲れているようですね。

そういう時に無理をしても結果は良くないですよ。

明日、朝ご飯の後に先生に電話をして

助けを求めるのが一番じゃないですか」

 

「やはりそうか・・・うん、明日の朝に

先生に電話をして指示を仰ぐことにしよう」

 

その夜、私は夢の中でも

編み物をしていたのでございました。

 

人はこうして趣味に

嵌(はま)っていくのでございましょう。

 

続く。

 

 

今回のタイトル、

『編み物賽の河原』で

行くつもりだったんですけど

松の内にそれは

いくらなんでも縁起が悪い、と

 

趣味に耽溺しがちなあなたも

無趣味なことが悩みです、なあなたも

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