東北・関東で河川氾濫、
大きな浸水被害が出ているとのこと、
現地の皆様、どうかお気を付けください
フランスはジヴェルニー、
『モネの庭』には
『モネの邸宅』も併設しており、
というか、この2つを合わせて
『モネの庭園と邸宅』という名で
観光名所となっているのですが、
まあそんなわけでモネ氏の残した
お宅にもお邪魔しました。
モネ氏の作と思われる名画の数々が
割と無造作に、というか思い切りよく
家の壁の至る所にかけてあり、
またモネ氏が収集した
他の画家の作品なども気前よく
そこらじゅうに展示してあり、
これ、絵画好きの人は一日いても
絶対に飽きないと思うんですよ。
夫(英国人)はモネ氏の集めた
日本版画などを眺めて喜んでいました。
私?
私はですね、今、実は
『寝椅子』が欲しいんですよ。
モネの家にあったこれは
悪くないデザインではあるんですけど
でも我が家には猫がいるからなあ、と。
(Norizoさん、真面目に観光しなさい)
さて、ご想像の通りこの
『モネの庭園と邸宅』は人気観光地でして、
モネの家を覗き見、もとい、見学するのにも
ちゃんと邸宅内の『順路』をたどらなくてはいけない。
階段とか普通の個人住宅サイズなので
そうしないと途中で上から来る人と下から来る人で
間違いなく交通渋滞が発生してしまうと思われ、
それはそれで賢明な措置だと思うのです。
ルートとしてはまず表玄関が入り口で、
1階の西半分を見て2階に上がり、
2階をぐるっと見たところで階段を下りて
1階の東半分を見て、台所の勝手口から退場。
「なかなか面白くはあったな」
「ええ、僕は一番最初の部屋にかかっていた
日本の浮世絵というんですか、
色つき版画がとても興味深かったですね」
「私は最後から2つめの部屋にあった
白い陶器製の猫がよかったな」
「あれはアジア陶器っぽいですけど、
中国製でしょうか日本製でしょうか」
「あれは日本の焼き物だと思うな、
色の感じとか猫の表情とかからしても・・・
あ、しまった、私はあの猫を
眺めてニヤニヤするのに忙しくて
写真を撮るのを忘れてしまった」
「猫の写真だけ撮ってきたらどうですか?」
「猫のためだけにあの長大な順路を
もう一度最初からたどるのもなあ・・・」
「理由を話してお勝手口から
入れてもらえばいいんじゃないでしょうか。
延々と順路を逆走したら迷惑でしょうけど
あの猫、『出口』のすぐそばにいましたし」
そう言ってカメラ片手に
夫はモネの邸宅の『出口』に向かったのですが
数分後肩を落として戻ってきて
「出口のところに係のお兄さんがいて
猫の写真だけ撮らせてくれ、とお願いしても
『ノン、入り口はあっちだ、ここは出口だ』
と取り付く島もないんです・・・
他の人の迷惑にはなりません、
写真だけ撮ってすぐに出てきます、と
ちゃんと説明したんですけど・・・」
「そうか・・・向こうもそれが仕事だろうしな」
「あ、妻ちゃん、でも僕は駄目でしたけど
君が行ってお願いしたら
許可をもらえるかもしれませんよ」
「パルドン、ムッシュー?」
「フランス男は女性に甘いことで有名です。
僕は頭から無視されましたけど
君がにっこり笑って話しかけたら
きっと係員の対応も変わると思います」
・・・うーん、でも私、美貌の全盛期は過ぎているし、
というか、そういう話の流れでお願いをしに行って
お願いを断られたら倍傷つくっていうか・・・
しかし夫の期待に満ちた目を見ていると
ここでその提案を無碍に退けるのもどうかと思われ、
仕方なくカメラ片手に『出口』に向かうと
そこにいたのは『冷たい系』ハンサムな若者で
ああ、私、このタイプは完全に守備範囲外ですわ、と
黙ってその場を立ち去ろうとすると
彼は私の姿に気付くなり
それまでの冷たさを顔から消し温かい笑顔を浮かべ
「何か御用ですか、マダム?」
「あ・・・いえ・・・その、この隣の部屋にいる
猫の写真が撮らせてシルヴプレ、という
お願いをしたいところなのですが、
でもあれですよね、ここは『出口』ですから
ここからは入っちゃいけないんですよね」
「ああ、マダム、その通りです、
残念ながらここは出口、本来ならノンノン、
でも!貴方のことはこの僕が
突別にお目こぼししてあげます!
さっ、他の係員が来ないうちに入って!」
「おう・・・メルシー、ムッシュー」
私の言葉にお兄さんはウインクを返し
さりげなくその場を離れていきました。
お兄さんのおかげで撮れた
猫の写真がこちらです。
「まあ結論から言うと
フランス男というのは凄腕だな、あれは」
「何なんでしょうね、あの態度の違い。
僕が男だからでしょうか、それとも
僕が英国人だからでしょうか、それとも・・・」
夫の鬱屈はしばらく続いておりました。
フランス男には勝てませんよね、
とお考えの貴方も
いえ、でもイギリス男の
隠れた色気もなかなかですよ、
とおっしゃる貴方も
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大きな浸水被害が出ているとのこと、
現地の皆様、どうかお気を付けください
フランスはジヴェルニー、
『モネの庭』には
『モネの邸宅』も併設しており、
というか、この2つを合わせて
『モネの庭園と邸宅』という名で
観光名所となっているのですが、
まあそんなわけでモネ氏の残した
お宅にもお邪魔しました。
モネ氏の作と思われる名画の数々が
割と無造作に、というか思い切りよく
家の壁の至る所にかけてあり、
またモネ氏が収集した
他の画家の作品なども気前よく
そこらじゅうに展示してあり、
これ、絵画好きの人は一日いても
絶対に飽きないと思うんですよ。
夫(英国人)はモネ氏の集めた
日本版画などを眺めて喜んでいました。
私?
私はですね、今、実は
『寝椅子』が欲しいんですよ。
モネの家にあったこれは
悪くないデザインではあるんですけど
でも我が家には猫がいるからなあ、と。
(Norizoさん、真面目に観光しなさい)
さて、ご想像の通りこの
『モネの庭園と邸宅』は人気観光地でして、
モネの家を覗き見、もとい、見学するのにも
ちゃんと邸宅内の『順路』をたどらなくてはいけない。
階段とか普通の個人住宅サイズなので
そうしないと途中で上から来る人と下から来る人で
間違いなく交通渋滞が発生してしまうと思われ、
それはそれで賢明な措置だと思うのです。
ルートとしてはまず表玄関が入り口で、
1階の西半分を見て2階に上がり、
2階をぐるっと見たところで階段を下りて
1階の東半分を見て、台所の勝手口から退場。
「なかなか面白くはあったな」
「ええ、僕は一番最初の部屋にかかっていた
日本の浮世絵というんですか、
色つき版画がとても興味深かったですね」
「私は最後から2つめの部屋にあった
白い陶器製の猫がよかったな」
「あれはアジア陶器っぽいですけど、
中国製でしょうか日本製でしょうか」
「あれは日本の焼き物だと思うな、
色の感じとか猫の表情とかからしても・・・
あ、しまった、私はあの猫を
眺めてニヤニヤするのに忙しくて
写真を撮るのを忘れてしまった」
「猫の写真だけ撮ってきたらどうですか?」
「猫のためだけにあの長大な順路を
もう一度最初からたどるのもなあ・・・」
「理由を話してお勝手口から
入れてもらえばいいんじゃないでしょうか。
延々と順路を逆走したら迷惑でしょうけど
あの猫、『出口』のすぐそばにいましたし」
そう言ってカメラ片手に
夫はモネの邸宅の『出口』に向かったのですが
数分後肩を落として戻ってきて
「出口のところに係のお兄さんがいて
猫の写真だけ撮らせてくれ、とお願いしても
『ノン、入り口はあっちだ、ここは出口だ』
と取り付く島もないんです・・・
他の人の迷惑にはなりません、
写真だけ撮ってすぐに出てきます、と
ちゃんと説明したんですけど・・・」
「そうか・・・向こうもそれが仕事だろうしな」
「あ、妻ちゃん、でも僕は駄目でしたけど
君が行ってお願いしたら
許可をもらえるかもしれませんよ」
「パルドン、ムッシュー?」
「フランス男は女性に甘いことで有名です。
僕は頭から無視されましたけど
君がにっこり笑って話しかけたら
きっと係員の対応も変わると思います」
・・・うーん、でも私、美貌の全盛期は過ぎているし、
というか、そういう話の流れでお願いをしに行って
お願いを断られたら倍傷つくっていうか・・・
しかし夫の期待に満ちた目を見ていると
ここでその提案を無碍に退けるのもどうかと思われ、
仕方なくカメラ片手に『出口』に向かうと
そこにいたのは『冷たい系』ハンサムな若者で
ああ、私、このタイプは完全に守備範囲外ですわ、と
黙ってその場を立ち去ろうとすると
彼は私の姿に気付くなり
それまでの冷たさを顔から消し温かい笑顔を浮かべ
「何か御用ですか、マダム?」
「あ・・・いえ・・・その、この隣の部屋にいる
猫の写真が撮らせてシルヴプレ、という
お願いをしたいところなのですが、
でもあれですよね、ここは『出口』ですから
ここからは入っちゃいけないんですよね」
「ああ、マダム、その通りです、
残念ながらここは出口、本来ならノンノン、
でも!貴方のことはこの僕が
突別にお目こぼししてあげます!
さっ、他の係員が来ないうちに入って!」
「おう・・・メルシー、ムッシュー」
私の言葉にお兄さんはウインクを返し
さりげなくその場を離れていきました。
お兄さんのおかげで撮れた
猫の写真がこちらです。
「まあ結論から言うと
フランス男というのは凄腕だな、あれは」
「何なんでしょうね、あの態度の違い。
僕が男だからでしょうか、それとも
僕が英国人だからでしょうか、それとも・・・」
夫の鬱屈はしばらく続いておりました。
フランス男には勝てませんよね、
とお考えの貴方も
いえ、でもイギリス男の
隠れた色気もなかなかですよ、
とおっしゃる貴方も
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