珍説5・化学兵器は人道的 | 誰かの妄想

珍説5・化学兵器は人道的

これはネット上の珍説ではないが、面白いので。


【珍説】

兵器の目的は、敵の戦闘能力を減殺することである。このためには強いて敵兵を殺す必要がなく、むしろ多くの障害者を出し、なるべく第一線の参加兵員を減らすことがよいのである。何となれば一人の死者は敵戦闘員一名を失うに過ぎないが一名の傷者は、これを看護するため数名の敵兵が必要だからである。以上に述べた目的は、化学兵器では他の火器あるいは白兵の場合に比べはるかに有効に達せられるものであり、ガスは拡散して広い範囲に多数の負傷者を出す特性をもっている。そして、その傷害は致死的でないという点で戦闘に有効でもあり、人道的である一つの根拠である。更に、化学兵器が他の兵器に比べ人道的であるとする著名な事実としては、ガス中毒の死者の割合は、他の一般の負傷者の割合に比べ、甚だ小さく一二分の一に過ぎないという点である。


中村隆寿 陸軍大佐(1936年12月15日発行「化学兵器の理論と実際」)
http://homepage3.nifty.com/dokugasu/dengon/dengon091.html



【事実】
70年前のトンデモ化学兵器擁護論です。現代において、このトンデモを支持する論者はまず皆無でしょう。
中村大佐の論拠としては、「ガス中毒の死者の割合は、他の一般の負傷者の割合に比べ、甚だ小さく一二分の一に過ぎない」というもので、これをもって「化学兵器が他の兵器に比べ人道的である」と主張しています。

ある兵器をもって、非人道的であるか否かを判断するには様々な指標があり、かつそれらも時代によって一般大衆の人道観の変遷とともに変化しています。死亡率の高さというのもその指標の一つではあるでしょうが、全てではありません。
兵士と民間人を区別しない無差別性や、負傷後のQOLを考慮した後遺障害の程度、不発弾・残留毒物などによる戦闘後も残る危険性、死亡や負傷の際の苦痛の度合い、見た目の悲惨さなどなど。現在、化学兵器を非人道的とみなす論者は、こういった様々な指標を総合的に判断して非人道的であると主張していると思います。


70年前の戯言か、と思うかもしれませんが、現在でも似たような比較をする論者がいるので頭が痛くなります。


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