珍説4・(追記あり)白燐弾は昔からあったが2005年の報道でいきなり非人道兵器として捏造された | 誰かの妄想

珍説4・(追記あり)白燐弾は昔からあったが2005年の報道でいきなり非人道兵器として捏造された

【珍説】
白燐弾は問題化したのがつい最近の話

JSF
(軍事学的考察上の必要性に鑑み,必要部分を引用しています)
http://obiekt.seesaa.net/category/909880-1.html



【事実】
おそらく、2005年のイタリアのTV番組が白燐弾非難の嚆矢だと言いたいのでしょうが、それは嘘です。

白燐弾を問題視する意見はそれ以前からあります。ベトナム戦争時には、ナパーム弾と並んで黄燐(爆)弾の使用が非難されています。


(1965年5月12日 衆議院外務委員会)
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また、さらにアメリカ軍は、大臣も御承知のとおり、ナパーム弾を使っている。しかも、そのナパーム弾は大半が日本においてつくられておる。一発の爆弾でもって二キロ四方にあるところのものが一切焼けただれてしまうというような日本製の爆弾を無差別に南ベトナムの農村地帯にたたき込んでおる。黄燐爆弾あり、毒ガス弾あり、これらの化学兵器を使って、そうして無辜の住民を殺戮しておる。また、大量バーベキュー作戦といいますか、実に一個大隊規模の部隊を焼き殺してしまうというようなことまでやっている。
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(1967年4月27日 衆議院予算委員会)
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ベトナム戦争の爆撃で、御承知のとおり、罪もとがもない、がんぜない子供がたいへんな被害者になっておりますね。これはもう、むざんな事実については天下周知の事実だ、私もそう思っております。これの被害を与えるについては、そう言ってはなんですが、世界で一番優秀な兵器、世界で一番精鋭な人物、頑強な人物、そういう人が精巧な飛行機に乗って爆撃をしておる。そのために子供はナパーム弾、黄燐弾、こういうものでたいへんな被害を受けておることはあなたも知っておられると思う。
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これらの惨状を踏まえて、
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1972年、赤十字国際委員会主催の「武力紛争の際に適用される国際人道法の再確認と発展のための政府専門家会議」において、エジプト、フィンランド、メキシコ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、ユーゴスラビアの七国共同で、「ナパーム又は燐を含む焼夷兵器は、禁止される」旨の提案がなされている。
http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090203/p1
(参考:http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090218
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こういった白燐弾を問題視する議論を経て1980年、特定通常兵器使用禁止条約(焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書(議定書III))が成立する。しかし、禁止対象をナパーム弾のみに限定したいと考える米ソの抵抗によって、「焼夷効果を第一義的目的にしていないとの理由」で白燐弾は発煙弾という名目で生き残ることになった。


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もっとも、かかる除外規定が恣意的に運用されるのを防ぐため国連会議では、同規定は誠実に解釈されるべきであって、議定書の意図を変更し、歪めて適用してはならない旨の共通理解を成立させている。
(櫻川明巧「特定通常兵器の法的規制」『立法と調査』109、1982.4、P20)
http://d.hatena.ne.jp/higeta/20090208/p1
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つまり、条約成立の1980年当時から、発煙弾名目で実態は焼夷弾として白燐弾を使用する危険性が懸念されていたわけだ。2004年のファルージャでも2009年のガザでも白燐弾使用地域が人口密集地であったことから「除外規定が恣意的に運用」された疑いがそもそも強い。そして2005年のイタリアのテレビ報道は、元米軍兵士による白燐弾使用証言とファルージャでの民間人犠牲者のショッキングな映像の相乗効果により、白燐弾が改めて強く非難されたのである。
「白燐弾は問題化したのがつい最近」などというのは無知のたわごと。


scopedog


(追記2009/5/18)
JSFは「白燐弾が騒がれだす2005年11月8日(RAIの白燐弾特集放送)以前」(http://obiekt.seesaa.net/article/115525087.html )と書いているので、明らかに”2005年のイタリアのTV番組が白燐弾非難の嚆矢だ”と主張しているわけですね。無知ですな。