戦前の一般家庭収入 | 誰かの妄想

戦前の一般家庭収入

従軍慰安婦の収入が、現地インフレなどによりネトウヨが言うほど実勢価値が高くないことは以前述べた。
数値の残っているものについて当時の物価指数などを考慮すると、月収は平時の内地における30円~70円程度と推定できる。
では、これは高いのか?

そもそもネトウヨの持ってくる比較対象が、陸軍大将であったり、首相であったり、兵卒であったりと、何故に公務員ばかりかが不明。


上記以外に警察官の初任給との比較をしているのもある(そもそも慰安婦の収入をインフレを無視して考えているので比較に意味はないが)。
http://yamushokey.com/modules/weblog0/details.php?blog_id=80

「「月給300円以上!3000円まで借金が可能!。警察官(巡査)の初任給が45円の時代。」
などが分かる。
なんだか今と同じくらいの収入じゃないか。
新入社員の初任給と、ソープランドや風俗で働く女の収入格差と似ているんじゃないか?」

「そうかも知れない。
とにかく、経済的にはすごく魅力的ではある。
初任給が45円だと、年収540円になる。
その時代に、慰安婦の年収は3,600円以上になるんだ。
一般サラリーマンの六倍以上のお金を得ていたことになる。
しかも、借金(前金)が3,000円も出来る。」


意図的ではないのだろうが、警察官の初任給45円がいつの間にか一般サラリーマンにすり替わってしまっている。


実態はどうだったか。
http://nyanko001.blog.ocn.ne.jp/kabu/2007/01/post_9f01.html
のサイトでは、大正15年1926年(昭和元年)の税制改正で、課税最低額が900円から1200円に引きあげられていることから、昭和初期における収入の基準が年収1200円、月収100円であると述べている。

実際、第063回国会 予算委員会 第17号(昭和四十五年四月九日(木曜日))にはこんな発言がある。
戦前は課税最低額が平均所得に対して高く、サラリーマンの負担は小さかったのに、今(昭和45年)はそれが大きくなっていることを批判する発言の中のことです。

「○加瀬完君 戦前、年収千八百円というサラリーマンはごく少数ですね。したがいまして、独身者で千五百円、今日に直しますと八十四万円以上。八十四万円まで課税されないということは、いまの課税最低限とははるかに意味が違ってくると思うわけです。そこで、平均国民所得は戦前は千四十五円、それに対して課税最低限は千八百七十五円。四十二年は、国民所得の平均は百六十二万二千四百五円、課税最低限は七十一万千八百九十九円。」


戦前がいつを指すのか不明瞭だが、昭和初期と考えると、当時のサラリーマンの年収は平均で1045円。月収で87円程度。
平均的なサラリーマンの年収を500円~600円とみなすのは、かなり的外れと言えよう。



さらに酷いのは、兵卒の給与と比較している例。
http://ameblo.jp/scopedog/entry-10035492983.html
「1940年当時で月給70円で、インフレを考慮して1944年の募集広告では月給300円で募集だったから、つじつまが合いますね。 兵士の金子安治さんの月給が8.5円だったから、そんなもんでしょ。」(引用者注:朝鮮での募集の話であり、朝鮮国内でのインフレ率は他の戦地に比べて低かったため70円が300円になったりしない)


内地でのサラリーマン平均月収が87円なのに、兵卒の給与は8.5円。つまり、兵卒の給与が絶望的に安いと言えよう。もちろん、これでは生活費を賄えないが、基本的に兵舎で生活する軍人であれば、衣服・食費・住居光熱費を考慮する必要がそもそもない。出来る限り、慰安婦の収入を大きく見せたいネトウヨはそこを無視している。


上記(http://nyanko001.blog.ocn.ne.jp/kabu/2007/01/post_9f01.html )サイトより
「・昭和4年12月の「婦人之友」に登場している東京の警察官夫妻は月63円で生活している。家賃12円、米代6円、副食費10円、電気代は2円で済んでいるが、ガスがまだなかったようで薪炭代が3円、新聞雑誌代3円、その他毎月10円貯金し、保険も5円掛けている。夫婦二人なら50円、現在価値にして10万円強で十分生活できている。」


こちらは月収63円の例。警察官給与も高くはなかった様子がわかる。

注目すべきは、支出。食費:16円、住居光熱費:17円である。2人分であることを考慮し、兵卒一人が現物で支給されている食費・住居光熱費を推定すると、食費:8円、住居光熱費:17円となる。


つまり、実質的な兵卒の収入は、現金給与8.5円の他に少なくとも25円分の食費・住居光熱費を考慮すべきとなる。すると、実質33.5円とみなせる。


無論、これも高いわけではないが、この33.5円と比較すると、慰安婦の実質月収30円~70円程度と言うのは現実味のある数字といえる。


ちなみに言うまでもないが、従軍慰安婦の実態は、時期・地域・部隊などによって様々で、一概に言えるものではない。実質月収30円~70円程度と言うのは、収入を示唆する資料から推定できる額にすぎず、実際に得ていたことを示すものではない。
証言の中にはもらっていない、というのもあり、それらに対する反論はネトウヨの陰口と憶測のみで有効なものは存在しない(証言が信用できないのなら憶測はもっと信用できないだろう)。