日本軍侵攻前の通貨流通量 | 誰かの妄想

日本軍侵攻前の通貨流通量

神戸大学附属図書館はいい仕事をしているなあ・・・。

時折、誤字があるのはご愛嬌。そういう時は原文の画像を確認。


で、どっかの誰かが、
南発券の発行数が「1942年12月に4億6326万円、1944年末に106億2296万円、1945年8月に194億6822万円」と増えているのは、単に現地貨幣と入れ替えるために増やしたみたいな主張をしてましたが・・・。


では、日本軍侵攻前の南方に流通していた通貨はどの程度だったか?シンガポールを例にとってみましょう。



新聞記事文庫 東南アジア諸国(10-039)
大阪朝日新聞 1942.3.23(昭和17)


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まず通貨を収縮

英の後始末マレーの金融工作

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昭南港にて太田特派員二十日発
二億一千万ドル(海峡ドル)に上る旧流通紙幣および膨大なイギリス系有価証券の処理、敵性銀行の押収につぐ金融機関など昭南特別市およびマレーの経済再建に当って直面する重大問題は全く文字通り山積の有様である、しかし軍政部の下に昭南特別市をはじめマレー各州の行政機構の整備に伴い各種経済工作もその諸につき四月には内地より多数の専門家を迎え本格的な再編成に着手することになっているし、二十日には当地における正金、台銀両支店の開業さえ見るにいたった、しかして当地の専門家筋ではマレーおよび昭南島の経済再編成につき大要左の如き見解をとっているようである
本年二月十六日すなわちシンガポール陥落直後の当地におけるイギリス政庁の紙幣発行高は二億二千万ドルであり、銀行手持三百万ドル、実際流通高二億一千万ドル、その差額七百万ドルは昭南島より逃亡したイギリス人華僑が持出したものである、イギリス当局は東亜方面における情勢の急変に対応して戦備強化をはかり多額の軍用資金をマレー戦直前にふり撒いたため相当のインフレ状況を呈していたしかし今後米英敵性の完全な排除と戦前暴騰していた錫、ゴムの平常価格への復帰、一時的資金需要の減退などを考慮すれば適正な通貨は○○○ドル限度となり、したがって過剰紙幣は回収を必要とする、このため速かに既存の本邦銀行を再開させて預金吸収をはかる必要がある、しかして資金の分布状況は昭南島に三分の一、マレー半島に三分の二という割合が適正な配分状況と見られている
なお押収した英米蘭の敵性銀行は敵産管理委員会に移され再開させないが、敵性国人にたいする債権債務は十分考慮されることになっている、支那系銀行の処理は上海、香港で行われた方針が踏襲されるであろう、そして彼ら華僑銀行が銀行家自体で今後の整理具体案を作成させて資本金の減額、預金払戻し割合の公正な比率決定を行った後日本側の厳重な監督の下に再開させることになるだろう


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データ作成:2004.4 神戸大学附属図書


えー、2億2千万海峡ドルです。

日本軍は、公式レートを1円=1海峡ドルとしてましたから、流通通貨をすべて回収して軍票に置き換えるとすると、2億2千万円で十分です。

とすると、1944年末に106億2296万円となっているのはなんでしょうね。

シンガポールを除く南方占領地の戦前の貨幣流通量が、円換算で100億円以上ないと上記仮定は成り立ちません。