産経症・どうしてここまでタミフルを擁護するのか
また、なんだか矛盾しているような論説を展開してますな、産経。
タミフルの問題って、やたらと適用範囲を広げて、大量に予防投与したことだと思うのだが。最初からタミフル擁護の方針である産経は、どうにかしてタミフルがインフルエンザ対策の決め手であることにしておきたいらしい。
「過度の注意喚起は、薬の安全性に疑問符を投げかけることになる。」
基本的に薬は安全なものじゃありませんから。
薬を投与するときは、それが患者に悪影響を及ぼさないかどうかをちゃんと把握しつつ行うべきで、だからこそほとんどの薬は医師の処方が必要なわけですよ。医師の診察を通して、個々の患者にこの薬を投与して大丈夫かどうか判断しながら、必要なら経過を見ながら、処方すると。
安全性に何の疑問も持たずに投薬したら、はっきり言って怖すぎます。
「薬には副作用が付きものだ。効き目の高い薬ほど副作用が強くなる傾向もある。」
統計的にはそういう傾向もあるでしょうが、個々の患者にとっては別。体質や様態によって、副作用しか出ない場合も少なくないです。逆に副作用が全く出ずに効果だけ出る場合もあります。投薬した集団全体での有効率・副作用発現率といった”数字”だけを見れば間違いではないですがね。
「効き目をとるか、それとも副作用を重視するのか。薬は状況に応じて使い分ける必要がある。」
そういうことです。体力のある10代の人にわざわざ予防投与する必要はないのではないかと。副作用の恐れがあるなら、発病して、他の治療手段と比較して投薬すればよいでしょう。
「問題は、世界で最大7400万人、国内で最悪64万人が感染死するといわれる新型インフルエンザが出現したときである。タミフルは「新型」対策の重要な柱だ。そのときこそ、タミフルを有効に活用したい。」
結局、国策的に大量にタミフルを蓄積してしまった結果、今さら「使えない」とは言えない、という政治判断である印象をぬぐえませんね。
産経は3/27の主張で
「 睡眠薬「サリドマイド」、腎臓病「クロロキン」、エイズウイルスに感染した「薬害エイズ」など一連の薬害は、どれもC型肝炎と同じような過程を経て、被害を拡大した。 国、製薬会社は兆候が見られれば、情報を公表し、効果的な対応策をとる必要がある。
これを怠っては、いつまでも薬害はなくならない。」
と述べているが、タミフルについてはやたら甘いらしい。それこそ中外製薬から資金提供されているとの邪推も生じかねないだろう。ま、おそらくタミフルの蓄積を推進した政府を擁護したいだけなんだろうが。
「“悪魔の薬”とまで呼ばれた睡眠薬の「サリドマイド」は、その使い方を改めた結果、特定のがんに対する特効薬となっている。」
そういえば、サリドマイドの時も、政府は副作用であることをなかなか認めようとはしなかったよな。奇形児の発生率とサリドマイドの服薬状況との間に統計的な因果関係はない、とか言って。後に統計専門家の吉村教授などに、因果関係があることを示されて、ようやく認めることになったけど。
【主張】タミフル 改めて冷静な対応求める
10代の患者については原則として中止する-。厚生労働省は21日未明、緊急の記者会見で、インフルエンザ治療薬「タミフル」の服用についてこんな方針を発表した。
「安全性に問題はない」という姿勢からの事実上の方針転換である。否定的だった服用と異常行動の因果関係にも、「今後変わる可能性がある」との認識を示した。
服用した子供たちが高いところから飛び降りるといった異常行動を起こす恐れに対し、注意喚起することは大いに賛成できる。しかし、その半面、過度の注意喚起は、薬の安全性に疑問符を投げかけることになる。
最悪の場合、医療現場を混乱させ、患者とその家族の不安をあおる結果につながりかねない。厚労省はこのことを忘れずに、冷静かつ慎重に対応してほしい。
今回の方針が過度の注意喚起に当たるかどうかは、今後の調査結果を待ちたい。厚労省は、1万人を対象とする調査を進めている。因果関係の有無を見極めるためにも、正確で早急な調査結果の公表を期待する。
薬には副作用が付きものだ。効き目の高い薬ほど副作用が強くなる傾向もある。効き目をとるか、それとも副作用を重視するのか。薬は状況に応じて使い分ける必要がある。
“悪魔の薬”とまで呼ばれた睡眠薬の「サリドマイド」は、その使い方を改めた結果、特定のがんに対する特効薬となっている。
薬の服用には、正確な情報が求められる。死亡していない事例のチェックが不十分で、厚労省は今回、異常行動の発生件数を追加公表した。これでは対応が後手後手に回っていると批判されても仕方あるまい。
問題は、世界で最大7400万人、国内で最悪64万人が感染死するといわれる新型インフルエンザが出現したときである。タミフルは「新型」対策の重要な柱だ。そのときこそ、タミフルを有効に活用したい。
通常のインフルエンザは、タミフルを使わなくとも十分な栄養と睡眠をとって1週間も安静にしていれば治る。ただ、受験などで早く治したい場合や、持病や高齢で体力が弱っているケースもある。そんなときは服用について冷静に主治医と相談すべきだ。
(2007/03/23 05:08)