南京事件1937・30万人は荒唐無稽か?
ま、「南京大虐殺はなかった」とか世迷言の人はどうでもいいとして。
「何らかの残虐行為はあったけど、中国の主張している30万人は多すぎるでしょ」とか考えている人が結構いる。というか、以前は自分もそう考えてました。これって私見だけど、詳しい史料を知らないけど割とリベラルな人が、そう言っているような印象を受ける。
だけど、30万人が多すぎるとか少なすぎるとか適正だとか、評価できるくらい詳しく調べた人ってどれくらいいるんだろうか?
ルワンダやカンボジアでは平気で100万の死者とか出てるけど、30万人って常識的に多いのか?なんとなく中国の主張だから多く言っているに違いない、とか思い込みがあるんじゃないかなあ?
30万人が多すぎる、と考えている人は冷静になって考えてみて欲しい。
・中国の主張している南京事件が、どの地域内で起こったことを指しているか知ってますか?
・同じく、南京事件が、いつからいつまでの期間のことを指しているか知ってますか?
・事件当時、その地域内に存在していた民間人の人数を知ってますか?
・同じく、その地域内に存在していた中国軍人の人数を知ってますか?
・同じく、その地域内に侵攻した日本軍の人数を知ってますか?
・中国の主張している犠牲者に中国軍人が含まれていることを知ってますか?
・それが戦闘による死者ではなく、捕虜になった後、殺された、という主張を含んでいることを知ってますか?
少なくとも、上記に関する概算を知らないと、30万人が多いのか少ないのかすら判断できないはずです。例えるなら、ただ単に「10万円は多すぎますか?」と聞くようなもので、夕飯買うためか、車を買うためかで答えが全然変わる内容です。
秦氏にしろ笠原氏にしろ、南京事件を研究し犠牲者数の推定を行っている人たちは、実際に日本軍や中国の史料などをあたった上で、地域・期間などを定義した上で、4万人とか10数万とか推定しています。
- 南京事件/笠原 十九司
- 南京事件―「虐殺」の構造/秦 郁彦
もちろん、定義の仕方によって人数は変わります。
犠牲者数を意図的に少なく見積もりたい人たちは、地域や期間・虐殺の定義を極めて限定的にとって、事件を否定します。
例えば、地域は南京城内安全区内、期間は1日、民間人の犠牲のみ虐殺されたとみなす、とか。
こうしてしまうと30万人になるわけがありません。なので「20万人しかいないのに30万人は殺せない」とか「原爆使わないと無理」とかいう妄言が出てくるわけです。(ちなみに20万人は安全区内の人数)
しかしながら、実際の30万人を主張する人たちの定義では、地域は南京城および城外の近郊県を含む広範な地域で、期間は南京陥落後6週間、民間人犠牲者のほか捕虜となった中国兵の殺害も虐殺とみなしています。
侵攻した日本軍の数は10万人程度。
南京は戦争直前は100万都市で、周辺の農村人口を含めると、200万程度にはなっていたでしょう。(当時の中国人口は5億といわれていました)
上海戦に参加した中国軍の人数は約70万、10万の損害を受け、南京・杭州に撤退したことを考えると、南京方面に30万程度が敗走していったとも推定できます。事件のあったとされる地域に軍民合わせて30万人を優に超える人数がいたことは想像に難くありません。
10万の日本軍が、30万人殺すのに6週間40日もあれば十分すぎるほどでしょう(1人が1日1人殺したとしても3日で十分)。原爆など全く不要です。中には全く虐殺行為を行わなかった部隊がいたとしても不思議ではありません。その分のノルマを他の兵が達成できるほどの余裕があります。
具体的に犠牲者が何人かを推定するには、さらに日本軍の戦闘詳報や個人の日記などを丹念に調べなければならないでしょうが、少なくとも30万人説を単純に否定できない、とだけはいえると思います。