歪曲? | 誰かの妄想

歪曲?

JANJAN、いい記事もあったはずだが、こんな記者も紛れ込んでいる、ということか。

古い記事だけど、引用。


(以下引用)

見過ごせない中国の歴史的事実歪曲! 2005/08/10

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 「世界征服をもくろむ帝国軍に対し、我が国の軍隊が果敢に戦ったことが、帝国軍を我が国に足止めをして、結果的に帝国軍の世界征服の野望を打ち砕くことになった」

 これは、どこかのSF映画のストーリーではない。中国を代表する新聞『人民日報(日本語版)』が、8月5日に掲載したばかりの「歴史上の人物が見た中国の戦場(1)~(3)」で示した歴史認識である。


★まあ、世界征服までいくと国家規模での具体的な計画なんぞはなかろうが、1930年代当時の陸軍の中枢にいた石原莞爾(満州事変の立役者ですね)は「世界最終戦論」(WIKI参照)などを披瀝しているわけで、全く火のないところの煙とも言えないわけですよ。


 歴史上の人物が見た中国の戦場(1)には、こんな記述がある。

 「1940年に、ヒトラーが西ヨーロッパを席巻した際、日本も東アジア、東南アジア、南太平洋の国々を含む『大東亜共栄圏』計画をまとめ、(中略)日本軍どドイツ軍がインド洋で合流し、イギリス・ソ連を壊滅させて、世界を支配下に置くという目的はこのようにして打ち砕かれた」

 これを読むと、「大東亜共栄圏」計画は、ドイツとともに世界を支配下に置くという陰謀のような印象を受ける。だが、「大東亜共栄圏」計画そのものは、そのやり方自体は極めて稚拙で、理想を現実化する能力に全く欠けていた点はあるにせよ、目的は、「アジア各国を列強の植民地支配から解放、独立させ、EUのような対等な国家連合を実現させること」だった。100歩譲歩しても、日本が世界を支配下に置くなどというものではない。日本の世界征服を中国が足止めしたという認識は、明らかに歴史的事実の歪曲である。


★「「大東亜共栄圏」計画そのものは、(中略)、目的は、「アジア各国を列強の植民地支配から解放、独立させ、EUのような対等な国家連合を実現させること」だった。」はぁ?
★軍事・政治・外交で、一方通行の干渉を受けるような関係は対等とは言わんでしょ?満州国なんて、次官クラスの人事は、関東軍の了解が必要で、関東軍は天皇直属ですよね?現代日本の次官人事に関して中国人民解放軍の了解が必要になったら、対等だとはまさか思わんでしょ?
★「日本が世界を支配下に置くなどというものではない。」確かにね。世界ではなく東アジアを支配下に置くための構想ですね。「八紘一宇」なんて言葉を考えればよくわかる。
★「日本の世界征服を中国が足止めしたという認識は、明らかに歴史的事実の歪曲である。」世界征服を東アジア征服と置き換えれば、歪曲とは言えませんな。実際、遅くとも1937年7月以降は日中は交戦状態なわけで、1939年9月の欧州戦争勃発、1941年12月の太平洋戦争勃発、以降、日本軍地上兵力の過半を中国大陸に貼り付け続けたわけですし。イギリスもアメリカも先にナチスを叩くという方針だったので、その間、中国が日本を押さえ続けることが重要だった、というのもまあ事実です。
★第二次大戦での中国の役割を過大に評価することはないですが、さりとて過小に評価するのもどうかと思います。


 歴史上の人物が見た中国の戦場(2)ではビルマ戦線での中国軍の活躍が書かれているが、ビルマ戦線自体が中国への補給路を断つことが目的であって、世界征服とは関係がない。それにビルマ戦線で活躍したのは蒋介石の軍隊であって、その蒋介石の軍隊に対してスティウェル自身が必ずしも高い評価を下していたわけでもない。


「世界征服とは関係がない。」単純にそうとも言い切れない。蒋介石との和平も全く模索されなかったわけではなく、もし日本と蒋介石が講和していたら、日本軍のインド侵攻だって全く考えられないわけじゃない(まあ、補給能力など制約が多く無謀なのは自明だが、・・・でもインパール作戦とかやったしなあ・・・)。
「ビルマ戦線で活躍したのは蒋介石の軍隊であって」ええ、その通りですけど、元記事は別にそれを否定していないですよ?単に中国軍と書いてあるだけで、蒋介石の国民政府軍か毛沢東の共産党軍かわかりにくいですけど、戦史に詳しい人なら「中国遠征軍」とあるだけで判断できますよね?
「蒋介石の軍隊に対してスティウェル自身が必ずしも高い評価を下していたわけでもない。」それもその通りなんですが、元記事のどこに、スティルウェルが高い評価を下した、なんて書いてあるんですかね?


 歴史上の人物が見た中国の戦場(3)に至っては、「1934年3月、日本天皇は、中国東北地方を前進基地とし、ソ連の極東地域全体を攻略し、中国東北地方や内モンゴルとひとまとめにして、日本が欧米・アジアを争奪し、世界の支配権を握るための戦略基地とする計画を承認した」とは、一体、どんな歴史的事実に基づくものなのか。

 これが「田中上奏文」を根拠とするものであれば、それが中国側による偽書であるとの見方が定着している。ただ、それにしては1934(昭和9年)3月というのが分からない。これは満州国に帝政が実施された時期だが、今も中国は「田中上奏文」を歴史的事実と強弁し、満州国の帝政実施を、その世界侵略の第一歩だと言いたいのだろうか。


★まあ、天皇が承認した云々のくだりは、おそらく指摘どおり「田中上奏文」を根拠としているのでしょうね。「中国側による」かどうかはともかく、偽書であるのは間違いないと思います。
★ただし、1934年3月は、柴田氏も記述している通り満州国の帝政実施の時期であり、中国側から見れば日本側の侵略行為で成立させた傀儡国家の首班に辛亥革命で倒した皇帝を据え、さらに帝政に移行したわけであって、国民革命を推進してきた国民党にとっても共産革命を目指す共産党にとっても、反革命の象徴となるイベントではあります。
「今も中国は「田中上奏文」を歴史的事実と強弁し」とまでは、元記事には記述されてません。
「満州国の帝政実施を、その世界侵略の第一歩だと言いたいのだろうか」第一歩かどうかはともかく、アジア侵略の大きな一歩の一つであることは確かでしょう。


 また、「1936年11月、日本軍は綏遠を攻撃し、南西からソ連を迂回しようと試みたが、傳作義将軍が部下を率いて抵抗したため、失敗に終わる」とあるのは、内蒙古の王族である徳王率いる軍勢が支那軍と衝突した綏遠(すいえん)事件をさしていると思われるが、この事件には日本の関東軍は一切関与していない。


「この事件には日本の関東軍は一切関与していない。」徳王の率いる内蒙古軍政府ですが、これは関東軍主導で作られた傀儡政府ですね。


 ところが、当時から中国側は、この背後に関東軍がいるとして、抗日気勢を高める材料として使ってきた。これさえも今も史実として書き込む、中国の歴史認識とはいかがなものだろう。


★内蒙古軍政府が関東軍の傀儡であることをいきなり否定するのもどうかと。


 最後に、「『日本はどうして、長年温めてきたソ連侵略計画を最終的に実行しなかったのか』――軍事専門家の劉庭華は、やすやすと実行できないようソ連が警戒していたこともあるが、最も根本的な原因は、中国の戦場が日本軍を牽制していたためと考える」とあるが、敗戦当時、日本が最後に和平案を託したのはソ連だった。そのソ連が最後には日本を裏切って参戦したことは、日本人なら誰でも知ることである。それが中国軍の頑張りにより、日本が対ソ開戦を見送ったとは、明らかに自己に都合のいいように歴史的事実をねじ曲げているとしか言いようがない。


★なんだかね、関東軍特殊演習とかはきれいさっぱり忘れてるんだろうなあ。
★もともと日本陸軍は対ソ戦を主眼に戦力を整備してきて、満州国建国で対ソ緩衝地帯を得ることが出来たわけですよ。そこで満足していればよかったんだけど、中国北部と満州の境界が気になって、今度は満州国と中国との間に緩衝地帯を求め始めるわけですな。
★その結果、日中戦争がおこるわけで、もともと対ソ戦を見据えていた石原莞爾などは、中国との戦争にのめりこむのに反対だったわけですが、陸軍部内で対中強硬派が主流になってしまい(石原が満州でやったことを中国でやっているだけだ、と言われて、ぐうの音も出なかったらしいです)泥沼化していきます。
★その後はもう中国から抜け出すことも出来ず(これは別に陰謀などではなく、日本の軍・政府の組織的な欠陥による)、米英にまで戦争を仕掛けることになってぼこぼこにされていく、と。四面楚歌の中、どうにか有利(面子を保ったまま)に戦争を終わらせたい、と考えた挙句が、ソ連を仲介にした和平交渉。

★日中戦争開始まで、ずーっと最大の仮想敵国だったソ連に、です。
★ドイツが不可侵条約を無視した無通告攻撃により大損害を出している時に背後で軍事力をちらつかせた(関東軍特殊演習)日本が、です(この時、日ソ中立条約があったにもかかわらず)。
★まあ、どの面下げて、と言う感じですが、しょうがない。他に和平斡旋できるような国がない。何せ世界中を相手に戦争してたんだから。
★またタイミングも既にドイツ相手に攻守逆転して一路ベルリンに迫っている状況下で、ソ連に和平を仲介してくれ、と頼んだのが、「敗戦当時、日本が最後に和平案を託したのはソ連だった」という箇所にあたります。
「ソ連が最後には日本を裏切って参戦したこと」関東軍特殊演習が日ソ中立条約を死文化させた、と言う見方もありますが。
「中国軍の頑張りにより、日本が対ソ開戦を見送ったとは、明らかに自己に都合のいいように歴史的事実をねじ曲げているとしか言いようがない。」中国が日本と講和(ほとんど降伏に近い条件で)していれば、日本軍は再び対ソ戦に再配備されたでしょうし、独ソ戦に参戦した可能性もありますわな。「ねじ曲げてる」とまでは言えません。


 自ら歴史的事実を歪曲している国に、日本の歴史認識を批判する資格があるのだろうか。日本が自己の歴史を反省することも大切だが、お互いの真の理解のためにも、中国の明らかなプロパガンダには、日本政府も確固とした意志を示すべきではないか。この文章が日本語で書かれている以上、中には信じてしまう人間もいないとは限らないからである。


「歴史認識を批判する資格があるのだろうか」私には柴田氏自身にその資格があるのか非常に気になるところ。
「日本政府も確固とした意志を示すべき」それがプロパガンダだとお話にならんけど。
「日本語で書かれている以上、中には信じてしまう人間もいないとは限らない」同感です。なので、南京大虐殺はなかった、みたいなプロパガンダに乗せられる人が後を絶たないわけですな。やれやれ。


(柴田忠)

ちなみに参照している人民日報はこれ
http://www.people.ne.jp/2005/08/05/jp20050805_52466.html
http://www.people.ne.jp/2005/08/05/jp20050805_52467.html
http://www.people.ne.jp/2005/08/05/jp20050805_52468.html

もともとが短い記事だし、まあそういう見方もあるかもね、と言うくらいの内容。歪曲とまでは言えない気がします。
いったい、柴田氏はなんでこんなに噛み付いているんだろう?