タミフルと異常行動 | 誰かの妄想

タミフルと異常行動



タミフルとの因果、審査せず 高校生死亡、厚労省が却下 2月5日8時0分配信 産経新聞


インフルエンザの特効薬であることを考えると、難しい問題・・・、とは言えません。

副作用として異常行動が起こりうるなら、そういう注意を十分持って投薬すればいいわけですから。薬なんて、何らかの副作用はつき物で、要はその副作用をコントロールできるかどうかです。


まず、異常行動とタミフルとの間に確かな因果関係があったのか?について。

こういう質問すらナンセンスですね。通常、医薬品の評価の場合、投与後に発現した症状(有害事象といいます)は、”明確に因果関係が否定された場合”以外は、全て副作用として扱います。

もし、申請前の臨床試験で被験者死亡例があれば、重篤な有害事象として因果関係を念入りに調べることになります。例えば、風邪薬の被験者が交通事故死した場合でも、軽々しく因果関係なしとはされません。少なくとも治験医師の判断が必要だったはず。


タミフルの場合、既に認可されているので市販後の安全性調査の段階だと思います。

治験中と市販後試験の大きな違いに、投与患者の年齢層、対象例数、投薬環境などが挙げられます。タミフルの治験ではどうだったかわからないのですが、多くの治験では、20歳以上の被験者が対象となり、あまり幼少の被験者は対象になりません。
また、治験は必要最低限の症例数で行われるため、発現率の低い有害事象は治験で評価しにくいと言えます。タミフルは投薬対象を非常に広く取ってますよね。つまり、治験での少人数のサンプルからは予想できないことも起こり得るということです。
最後に治験は、比較的設備の整った施設で行われ、何かあった場合の対応がしやすいし、医者も治験薬ということで予期しない副作用など十分注意しますが、市販後の場合は、普通の施設で認可後の薬を用いるため、薬品の添付文書にある副作用以外は余り注意できません(まあ、タミフルの場合は異常行動の恐れとかが後に追加されたけど)。


そして、市販後の場合、薬と有害事象の因果関係は投薬医師によってまず判断されます(製薬会社でも判断します)。治験の場合のようにその薬品に熟知した医師が判断するわけではないのが重要な相違点です。そうした場合に備えて、薬品には添付文書があり、起こり得る副作用などの注意書きがあって、医者はその添付文書を見て処方するわけです。


タミフルは現在では、若年者での異常行動の副作用の可能性は指摘されていますが、記事にある岐阜県下呂市の男子高校生の事件は「異常行動のおそれ」について添付文書に記載される前に起こっています。処方した医師も、タミフルと異常行動の関連に気をつけていたかどうかは疑わしいのではないか、と思います。「「タミフルとは別の薬の副作用による自殺企図」と判定」が正しいかどうか、しかも断定できることなのかどうか(タミフルが完全に代謝されて体内から排出されるのに十分な時間経過後ならともかく)は疑問です。
また、「自殺企図」の「副作用」がある「別の薬」が何なのか、も気になるところです。少なくとも高校生に処方される薬であることは間違いないでしょうし。


「タミフルには16年6月以降、添付文書に「異常行動、幻覚、妄想があらわれることがある」と記載。一方で厚労省研究班は昨年末、タミフルを服用した場合と服用しなかった場合で、異常行動を起こす割合に統計学的な差はなかったとする調査結果を発表している。

まあ、ホントに差がないのかも知れません(あくまでも統計的な差なので、集めたサンプルが偶然、差を示さない可能性もあるにはありますし)けど、サリドマイド(非常に効果の高い睡眠薬だが、妊婦が服用すると奇形児が生まれやすいという副作用がある。問題になった1970年ごろ製薬会社側は、サリドマイドと奇形児に統計的な因果関係はない、と主張した。)のような前例もあるので無批判には受け入れにくいですね。


サリドマイドの時は、統計学の増山教授や吉村助教授(当時)が統計学的な反論を行って因果関係が示されてます。このとき、増山教授は製薬会社側に安全性の基礎資料が残っていないことを批判してます。

新GCPの下(市販後だからGCPじゃないかも?GPMSPだっけ?)、厚労省研究班が統計学的な差はなかった、と判断した基礎資料は公開されているもの、と期待したいところですが、どうなんでしょうね?


タミフルとの因果、審査せず 高校生死亡、厚労省が却下
2月5日8時0分配信 産経新聞


 インフルエンザ治療薬「タミフル」服用後に戸外に飛び出し、トラックにはねられて死亡した岐阜県下呂市の男子高校生=当時(17)=の父親が、同薬と死亡との因果関係を審査するよう厚生労働省に申し立て、実質的な審査なしに却下されていたことが4日、分かった。

 父親は「薬害タミフル脳症被害者の会」代表の軒端晴彦さんで、厚労省を相手に却下処分の取り消しを求める訴訟を起こすことも検討している。軒端さんが同日、名古屋市で開かれた集会で報告した。

 高校生は軒端さんの長男で、平成16年2月にA型インフルエンザと診断され、医師から処方されたタミフルを服用。直後に自宅から国道に飛び出し、大型トラックにひかれて死亡した。

 独立行政法人「医薬品医療機器総合機構」は昨年7月、副作用被害救済制度に基づき「タミフルとは別の薬の副作用による自殺企図」と判定。軒端さんは不服として、厚労省に審査を申し立てた。

 軒端さんによると、不服申し立てに対する同省の決定は昨年12月27日付で「副作用被害救済制度で既に遺族一時金などが支給されており、判定による申立人の利益侵害はない」とした。

 軒端さんは「長男が自殺する理由はなく、副作用の原因がタミフルではないという根拠も不明」と話している。

 タミフルには16年6月以降、添付文書に「異常行動、幻覚、妄想があらわれることがある」と記載。一方で厚労省研究班は昨年末、タミフルを服用した場合と服用しなかった場合で、異常行動を起こす割合に統計学的な差はなかったとする調査結果を発表している。