経営とスピードについて
TBする気にならなかったので、リンクのみ
http://ameblo.jp/shibuya/entry-10004398494.html#cbox (渋谷ではたらく社長のblog)
なんというか、時間がなかったのかも知れないが、考察が甘い気がします。
組織が大きくなるとスピードが遅れる、というのは正しい。
でも、組織の肥大化が直接に関わるのは、「実行に移すスピード」であって、「意思決定のスピード」ではない。
「実行に移すスピード」は、組織の規模に応じたプロジェクトを実行する上でのチーム編成や環境整備で物理的に時間がかかるのだが、「意思決定のスピード」は、「意思決定に必要な情報の収集」と「意思決定の権限の集中度合い」と「判断に要する時間」によって決められる。
情報収集の時間と権限の集中度合いは、組織の肥大化による影響を受けると言えるが、どちらかと言えば組織の構成上の問題であって、適切な組織編制によって改善可能であろう。(それにベンチャー企業で権限が分散していると言うのは考えにくいのだが。)
というわけで、スピード遅れの要因が社長(あるいはマネジメント)であるとしているのも正しい(過程はともかく)。
でも、やっぱりこの後がよろしくない。
「意思決定や実行に移すスピードが遅れる要因は、ずばり先送りにある。」
って、おかしくないですか?意思決定や実行を遅らせることを先送りと言うのでは?
で、さらにその原因として、以下の2点。
・抱えている課題が膨大になり、優先順位が低いものに手が回らない。
・さまざまな立場の利害関係者に対する配慮や、複雑に絡み合う問題を考えて、面倒になる。
要するに、社長の抱える課題が多い、と言うことだろうが、すべての課題が社長でなければできないことなのだろうか。
私は、彼の会社について詳しいわけではないのだが、参照した文章からの印象ではワンマンな感じを受けます。本来なら、業務内容や課題の性質に応じて、適切に権限を分掌させるべきのことをできていないのではないか、と感じます。
権限の分掌は、権限の範囲・責任・命令系統が明確であれば、組織全体の意思決定のスピードの低下には繋がらず、むしろ迅速化します。逆に不明瞭ならば、「意思決定の権限の分散」となり組織にスピード低下の他さまざまな悪影響を及ぼします。このような事態は、社内の有力者間で権限の分割を行った際に生じやすい現象です(誰も責任は分担したがりません)。また、独裁者が自己防衛を目的として行うこともあります(権限が明確であると部署全体が反旗を翻す可能性が高くなる。責任が曖昧であると恣意的に特定の人間を弾劾できる。)。
ここからは予測です。
彼は組織規模の増大に伴い権限の分掌を行ったが、経営陣内のパワーバランスを重視し、曖昧な権限分担となった。そのため、実行手順が煩雑化し、さらに意思決定に必要な情報も十分にあがって来なくなった。意思決定を行っても、下部機関では、上部にあげなかった情報に対応するため時間が必要になった。
権限の分与にも不十分なところがあり、不要な社長決済は残った。社長自身は、色々な課題を抱えているのにもかかわらず、権限分担が機能していないため全体のスピードは低下。
この予測が正しいかどうかはわかりません。
ただ、会社組織を人体にたとえた場合、脳だけが回転していても意味がないわけで、目耳からの神経情報を受け取り、脳で判断し、手足に命令を出す、時として脳を経ずに反射することも必要なわけです。これらがうまく機能していない場合は、まず全体を見ることが重要であって、脳内だけの自己満足の治療をしても意味はないでしょう。