『さよならドビュッシー』(中山七里 著、宝島社文庫) | 鎌倉から…

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さよならドビュッシー (宝島社文庫)/中山 七里
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『ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な彼女の人生は、ある日突然終わりを迎える。祖父と従姉妹とともに火事に巻き込まれ、ただ一人生き残ったものの、全身火傷の大怪我を負ってしまったのだ。それでも彼女は逆境に負けずピアニストになることを固く誓い、コンクール優勝を目指して猛レッスンに励む。ところが周囲で不吉な出来事が次々と起こり、やがて殺人事件まで発生する――。』

この本は「このミステリーがすごい」大賞を受賞しました。著者のデビュー作でもあります。

この本の最大の魅力は息をつく音楽シーンの描写だと思います。作中ではピアニストを目指す少女が出てくるのですが、そのピアノ演奏シーンがかなり鮮明に描かれています。説明しずらいのですが、まるで音が聞こえてくるような錯覚を覚えた気がします。そして音楽用語を並べ立ててはいますが、それが読者の負担になることなく、サラリと読めるような文章になっています。この筆致はなかなかのものです。

ただし、ミステリとしては非常に古典的なトリックを使っています。多分読み慣れている人なら、中盤くらいで展開が読めてしまうでしょう。しかしそれでも、描写力は素晴らしいものなので、読む価値は十分にあると思います。

皆さんも是非読んでみてください。