イメージ 1

日本の2連覇で終わったWBC。柔道、マラソン、フィギュアといった個人競技での優勝はあるが、チーム競技で日本が世界最高レベルで優勝というのはそうそうなかった(だよな。。)ことである。
 
前回大会ではアメリカに勝てなかったが(審判とか色々あったし)、今回はアメリカをくだしての優勝。1949年というから今から60年前、来日した3Aつまりマイナーリーグのサンフランシスコシールズは日本のプロ、アマ、大学相手に7勝負けなしで帰国した。つまり、60年ほど前は日本の野球はマイナーにも勝てないレベルだったのだ。
 
日本が強くなったのか、アメリカが弱くなったのか(ま、両方だけど)WBCは2回目を迎えた。サッカーのW杯も初回は参加国は13、第二回はファシスト政権下&初回開催優勝のウルグアイのボイコットなど、はじめから現在の地位があったわけではない。
 
日本の優勝を寿ぎつつ、あまりニュースやブログに出ないWBC関連話を無代にてご紹介♪



 
アメリカで盛り上がらないWBC
イメージ 2

WBCは米大リーグが主導して行っている大会にも関わらず、本国での盛り上がりにはイマイチ欠ける。それは日本をはじめとする参加国が「野球のW杯」的な受け取りをしているのに対し、アメリカでは「シーズン前のエキジビションマッチ」観があるからだ。アメリカ人にとって「野球の最高の場」はあくまでワールドシリーズ※1であり、この時期のスポーツ界での関心事はWBCよりバスケの方だ。
 
アメリカ以外が盛り上がったのは、WBCが「メジャーリーガーが参加する唯一の国際大会」だから。しかし、アメリカ側の事情からすれば、ベストのメンバーで臨んでいるというよりも「出たいひとが出てる」ということで「アメリカチーム敗退=アメリカ野球敗退」と捉えてはいないようだ。※2.
 
とはいえ、アメリカでも野球界やマスコミの間では「アジアのチームって強いんでないの」という意識が出始めているようだ。とくに日本が二連覇したことによって素直に「日本チームは手堅い」「メジャー開幕前に今シーズン最高の試合が行われた」という報道がされている。※3.
 
アメリカチームの記者会見でも「チームとして勝つ方法」を知っていると表現していたし、マスメディアでも「素晴らしい投手・守備と必要な攻撃」を備えていたと述べられている。しかし、同時にこうした方法はアメリカチームではやりにくいとも言っている。
 
つまり、1点をとりに行く場面で日本チームは4番にもバントやヒットエンドランをさせるが、大リーグでA・ロッドやオルティーズにバントはさせられないし、観客も期待していないという意味なのだろう。
 
日本のこうした戦法をスモールベースボールというが、その源流は「ドジャーズ戦法」といわれ、元々は大リーグで編み出されたものである。V9時代の巨人が取り入れ日本球界に広まった戦法だが、1点を大事に取りに行くこうした戦法をもっとも多用するのは「負けたら終わり」のトーナメントを争う高校野球であろう。
 
日本の野球の特徴のひとつとして甲子園をあげてもいいかもしれない。高校野球の全国大会が国民レベルのイベントになっているのは世界で日本だけといってよい。※4. 
つまり、日本の野球選手は高校時代に甲子園を目指すことによってスモールベースボールを骨の髄まで学んでいるともいえる。毀誉褒貶ある高校野球(&甲子園)だが、日本野球の基礎レベルの底上げにつながっているのだろう。


 
WBCと政治
イメージ 3

アメリカラウンドで一番メディアの関心を集めたのが「クーバの敗退」だった。日本があっさり2つ勝ってしまったクーバだが、国際大会でクーバが4強に入れなかったのは1951年以来約60年ぶりのことだ。
 
クーバは1952年以降40の大会で決勝まで進み、優勝33回。1939年以降では49の国際大会で38回優勝している。日本だってWBCでこそ3勝(前回決勝含)しているが、オリンピックで対クーバは通算1勝6敗だ。※5.
 
クーバの野球がなぜ強いのかといえば、冷戦中に共産圏で行っていたステートアマ方式、幼児から素質のある子供を選抜してスポーツ養成校で育て、適性によって(本人の希望は無視)各種競技に割り振るという国を挙げての養成を行っているからだ。したがって選手はすべて公務員で、どんな名選手でも月給は2~3000円程度だという。※6.
 
今回クーバのカストロ議長は、「同じプールに前回優勝の日本、北京五輪優勝の韓国、前回準優勝のクーバが入ってるなんておかしいだろ~っ」と言ったという。確かに、サッカーのワールドカップ予選で、抽選でもないのに「ブラジル、ドイツ、イタリア」などという組み合わせがあったら暴動が起きるかも。※7.
 
しかし、クーバはフロリダラウンドで戦うことはできない。アメリカにいるクーバ人は約100万人といわれるが、6割がフロリダ州在住。この多くは反革命・反カストロであり、クーバの経済制裁強化を求めてロビー団体をつくるほど強硬な反社会主義クーバ活動を行っている。つまり、クーバがサンディエゴでなくフロリダで戦うのは混乱のもととなりかねないというわけだ。
 
かといって日本や韓国がフロリダに行き、ドミニカやプエルトリコがサンディエゴに来るつ~のもおかしな話である。ということで、クーバがサンディエゴで戦わざるを得なかった。
 
一方、準決勝で韓国の相手となった台風の目ベネズエラ。下の※1.にある通り大リーグに50人以上選手を送り込んでいる野球先進国である。そして、ベネズエラの大統領といえば国連総会でブッシュ大統領を「悪魔」と呼んだ、反米で名高いチャベス大統領。
 
つまり、アメリカにとって自国が決勝に残れないのなら、同盟国である日本か韓国が優勝するというのが、敵国クーバ、反米政権のベネズエラが勝つよりもよかったのかもしれない。


 
韓国代表の躍進
イメージ 4

ドジャースタジアムの決勝戦では「韓国応援団が日本の3倍くらいいた気がする」とTVで日本のアナウンサーが言っていた。私の感覚でもLAと近郊の韓国人は日本人の少なくとも2倍はいる気がしていたのだが、調べてみると、
 
LA郡 
日本人 11万人
韓国人 18万人
 
LA近郊5郡※8.
日本人 15万人
韓国人 25万人
出典は「1990年-2000年の人種・民族による人口動態」※9.
 
という統計で、確かに韓国人は多いのだが意外にもチョト多い程度だけだった。※9.にも書いたのだが、LAの韓国人の1/4程度が韓国人街に住んでいるが、日本人はバラけているというのもこうした印象に影響しているのかもしれない。結局、在米日本人より在米韓国人の方が自国の応援に熱心だったということ。。※10.
 
5試合で日本と死闘を繰り広げた韓国代表だが、意外にも韓国プロ野球の人気は低いという。韓国プロ野球は1リーグ制(8チーム)だが、観客動員数は約500万人。日本の2400万人とくらべると1/5程度。人口比(4800万人)をいれて計算しても日本の観客動員に匹敵するには900万人が必要だ。※11.※12.
 
これが年俸となるともっと差が出る。日本のプロ野球選手の平均年俸が3600万円なのに対し、韓国は1600万円。これでも半分以下なのだが、ウォン安の今だともっと低い換算率になるかもしれない。
 
東京ドームで松坂からホームランを打ち、日本投手陣からもっとも警戒された韓国チームの4番、金泰均(キム・テギュン)の年俸は2億9,000万ウォンというから今日の相場だと約2000万円!韓国プロ野球の最高年俸は三星ライオンズの沈正洙(シム・ジョンス)で年俸額は7億5000万ウォン(約5300万円)といわれるが、日本チームの主な選手をみると、※13
 
小笠原(巨人)3億8千万円
青木(ヤ)2億6千万円
阿部(巨人)2億4千万円
稲葉(日ハム)2億4千万円
 
藤川(阪神)4億円
岩隈(楽天)3億円
ダルビッシュ(日ハム) 2億7千万円
 
となっている。つまり現在のウォン安を割り引いても韓国選手の最高年俸は1億円程度だが、日本では最高年俸は3~4億。もろちん実力次第なのだが、例えば巨人の李承燁(イ・スンヨプ)は外国人登録のため、一説には年俸6億円ともいう。
 
アメリカのメディアでは「ヤンキースとレッドソックスにあたるライバル」と紹介される両チームだが、年俸でいえばまだまだ「格差」は大きいといえよう。


 
※1.ワールドシリーズというだけあって、大リーガーの約3割が外国人選手。最多はドミニカ共和国の88人以下ベネズエラ(52)プエルトリコ(29)日本(16)カナダ(14)メキシコ(11)キューバ(8)。もろちん日本のように「外国人枠」などない。
※2.アメリカのジョンソン監督は、オールスターゲームのように多くの選手に出場機会を与えねばならず、苦労したらしい。川崎の「ベンチにいるのも出場のうち」という発想と真逆だわね。
※3http://weblogs.baltimoresun.com/sports/thetoydepartment/2009/03/with_the_start_of_the_1.html#more
※4.アメリカには州・郡単位の大会はあるが全国大会はない。また観るのも家族と関係者くらい。また、韓国は驚くべきことに野球部のある高校が全国で50ほどしかない(日本は4000校以上)。
※5.ワールドカップ、インターコンチネンタルカップをふくめればなんと、5勝34敗という渋さである。。。
※6.だから時々亡命する選手が出る。2002年亡命してメジャー契約したコントレラス投手の年俸は10億円。
※7.セリグコミッショナーは2013年大会では24に参加国増加を検討しているという。プールが増えればこうしたことも減るかも。
※8.近郊5郡とは、LA郡、リバーサイド郡、オレンジ郡、サンベルナルディノ郡、リバーサイド郡
※9.http://www.calstatela.edu/centers/ckaks/census/7203_tables.pdf
この統計で面白いのはLAの韓国人街には韓国人4万6000人、日本人2000人だが、白人7万、ラティーノ12万人と韓国人が多いわけではないということだった。
※10.かくいう在LAの弟も「WBCやってんだ。ウチの事務所TVないから」というクールな対応であつた。
※11.500万人ってJリーグの動員数をやや下回る程度。危うし、Jリーグ。。。
※12.韓国プロ野球創立は1982年と新しく、1936年創立の日本と歴史の差はある。
※13.日本プロ野球年俸トップ100 http://home.a07.itscom.net/kazoo/pro/pro09/off_top.htm