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「愛と哀しみの果て」という映画がある。シドニー・ポラック監督、メリル・ストリープとロバート・レッドフォードが共演。アカデミー賞を作品賞をふくめ7賞を受賞している。

カレン・ブリクセン(Karen von Blixen-Finecke)というデンマーク女性が、スウェーデン男爵の称号を
持つ従兄弟と結婚してアフリカへわたり、18年のアフリカ生活を過ごす。その年月を回顧した「アフリカ
の日々(原題:Out of Africa)」という本が、映画の原作である。

また、「バベットの晩餐会」という映画がある。これはデンマーク映画だが、やぱりアカデミー外国語
作品賞を受賞した。

「バベットの晩餐会」は、イサク・ディネーセン(Isak Dinesen)の作品集の一篇が原作。以前はパリで
一流レストランの女シェフだった、いまではしがない料理女が、一万フランの宝くじに当選。そのすべて
を使い一夜だけの晩餐会を開くという物語。映画では、晩餐会の豪華なメニューが話題となった。

じつは、原作者のふたりは同じ人物である。ボキは、「愛と哀しみの果て」のビデオと、「バベットの晩
餐会」の原作を持っているが、最近までカレン・ブリクセンとイサク・ディネーセンが同一人物であると
は気づかなかった。

カレン・ディーネセンは、1914年にブロル・ブリクセン男爵と結婚。ふたりでイギリス領東アフリカ
(現在のケニア)での農園経営を企てる。しかし、結婚は破綻。農園はカレンの実家の出資が多かった
ため彼女がひとりで経営することになる。その後、デニス・フィンチ=ハットンと親しくなり恋人となるが、デニスは飛行機事故で死亡。コーヒー農園も経営困難となり、デンマークに帰国する。

帰国後、生活のために執筆活動をはじめたが、英語作品には「イサク・ディネーセン」という男性名を
使うことにした。カレン・ブリクセン=イサク・ディネーセンの作品は、同時代の作家ヘミングウェイ
や、トルーマン・カポーティなどから愛される。

サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」にも、主人公のホールデンが図書館で間違って渡される本と
して、この「アフリカの日々」が出てくる。ヘミングウェイはノーベル文学賞受賞スピーチで、「この賞は、本来はイサク・ディネーセンに与えられるべき賞である」と言ったという。

「愛と哀しみの果て」(原題は、原作と同じく「Out of Africa」)では、カレンをメリル・ストリープ、
デニスをロバート・レッドフォードが演じ、ふたりの恋愛を主題に置いている。

しかし、原作を読んでみると映画はほとんどカレンの伝記をもとにした創作といってよいことがわかる。
原作では18年のアフリカ生活を時系列的に回顧するのではなく、土地の人々と野生動物、農園への客、
現地の事情などをエピソードごとに書いている。

「アフリカの日々」を久しぶりに再読してみた感想でも書いてみやうか、と思ったが書ききれなくなった
ので、上下ふたつに分ける。


(下につづく)