イメージ 1

皆さんは、International Herald Tribune(IHT) という新聞をご存知でいらっしゃるでしょうか。1887年New York Heraldのフランス版として創刊され、1967年にNew York Timesが資本参加。1991年からは、NYTとWashington Postの共同経営(2002年からNYTが単独オーナー)されてきました。 

 

このIHTがユニークなのは、アメリカ資本でありつつもパリで編集され、全世界で読まれているという点にあります。ご存知のようにアメリカの新聞は、地方紙です(USA TODAYとWall StreetJournalを除く)。NYTやLATimesでも地元の視点が重要なのです。

 

これに対してIHTは、アメリカ資本でありヨーロッパの視点が活かされてという点で、クオリティペーパーの雄ともいうべき存在です。「パリのアメリカ人」とも称されるこの新聞は、各国の指導者が自国の新聞の次に読むともいわれています。世界31ヶ所で発行され、180ヶ国で売られており、部数は24万部程度。

 

(日本では朝日新聞が日本版を出しており、前半部はIHT提供記事、後半部が朝日自社作成の英語記事となっておらます。このため駅売り150円ですが、2001年までは毎日新聞が国際版をそのまま発行されていました。したがって一部450円程度と高価でもあり、部数もそれほど出ておらず、猪口孝前国連大学上級副学長(猪口邦子国務相のダンナ)などは、「購読者は日本の情報エリートである」と指摘した(「社会科学入門」中公新書)ほど。)

 

では、記事はどんな内容でしょう。

 

Uproar grows on prophet images
(預言者のイメージで騒動広がる)という記事がございます。

 

デンマークの新聞が、イスラム教の預言者であるムハンマドを風刺するマンガを掲載してから、全世界でイスラム教徒の抗議が続いているというニュースについての記事。
イメージ 2

 

これはNYTからの転載のようです。(自社記事と転載記事がありる)
下に抄訳を載せますので、ご興味のある方は上の記事リンクからお読みください。
 
預言者ムハンマドがターバン状の爆弾を巻いたマンガが、最初にデンマークの新聞に掲載されたのは9月。以来、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、スペイン、ノルウェイで転載されている。BBCはこれをテレビ放送した。

フランスの日刊紙で唯一これを掲載した「France Soir」は、エジプト生まれの社主が、編集長を解雇した。だが、新聞自体はマンガを掲載する権利を守るとしている。
(一面に「そうだ、われわれは神を風刺する権利がある」と掲げ、仏教・ユダヤ教・イスラム教・キリスト教の代表が雲の上に座り、キリスト教がイスラム教に「抗議はよそうぜ、ムハンマド。俺たち皆ここでマンガになってるじゃないか」と語りかける絵を載せた)

この出来事は外交的問題に発展しており、サウディアラビアとシリアはデンマークから大使を召還しており、デンマーク政府は各国の外交官に政府は報道を規制できないと説明している。

多くのヨーロッパのニュース解説者たちはそのマンガが挑発的であり、無神経だとすら認めているが、保守的イスラム世界は西洋の表現の自由ならびに多元的共存を受け入れ学ぶべきだと主張する。

イスラム側はそのマンガがイスラムと、大多数のムスリムから忌避されているイスラムのテロリズムの危険な混同を強めると抗議している。フランスイスラム協議会の長は、マンガをヨーロッパで成長する「イスラム恐怖症」の新しい印だという。

 

この後、マンガを描いた作者が反省を表明したり、マンガを掲載した新聞が過去にキリスト教を風刺したマンガの掲載拒否していた事実が明らかになるなど、事態は混迷の度合いを深めています。