家をこっそりと出ていった父。
私と弟にも、何も知らされませんでした。
お母さんは、私に言いました。
「弟には、出張って言おう。友だちとか先生には言わなくていいから」
私は迷わず首を縦に振りました。
弟は、父が毎年連れていってくれるキャンプを楽しみにしています。
とても「もう帰ってこないかも」なんて言えませんでした。
しかし、弟はドアを開けてしまうのです。
「お父さんの部屋、何もなくなってる!なんで!」
私と母のいるリビングに駆け込んできた弟。
「言ってなかったけど、お父さん出張やねん」
「いつ帰ってくるん?」
「2年くらいかな~」
「そうなんや!」
そして弟は何も疑わず、ニコニコとリビングを出て行きました。
弟は帰ってくると信じている。
笑顔が取り柄の弟も、その時は少し胸が痛みました。
何より、嘘をついている母は、なんとも言えない悲しそうな目をしていました。
私も、どこかで信じていました。
仲直りしたら帰ってくる。
キャンプくらい連れて行ってくれる。
だってお父さんはそんなひどい人じゃないはずだから・・・