そんなだから貴方は捕まる(夜の後谷公園&浮間公園+α) 注:ヒキガエルが大嫌いな人はUターン推奨 | 首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

首都圏生きものめぐり ~関東の動植物に会いにいくぶらっと散歩~

雑誌編集者である著者が自ら首都圏の公園や自然地に足を運び、そこで出合った生きものの情報をお届けします。
都会の印象が強い東京にも、カワセミやタカ、多くの昆虫が暮らしています。「首都圏ってこんなに生きものが多いのか」と驚かされる情報が満載です。

【後谷公園編】

先月、後谷公園で2回目のセミの羽化を観察しましたので

改めて紹介いたします。ちなみに前回はアブラゼミばかりでしたが

写真の個体はミンミンゼミです。翅が透き通っているのですぐわかるかと。

大型のセミで翅が透けるのは本種とクマゼミくらいなものですが

クマゼミは頭の形が大分異なるため、羽化直後でもすぐ見分けがつきます。

 

 

 

 

 

 

こちらはアブラゼミ。時間が余っておりましたので

羽化の様子を観察させてもらうことに。

子供は喜び、大人は美しさに見とれる(例外も無論いますが)

セミの羽化ですが、セミにとってみればまさに命がけ。

そこまで高確率ではないものの「羽化失敗個体」というのも少なくなく

「殻から抜けない」「出る前に外敵に食われる」など常にリスクが伴います。

実際、最初に斜めに出てしまって

そのまま抜けられずに死んだ個体を見たことがあります。

仕事と同じで何事も「出だし」が大切です。見切り発車厳禁

 

 

 

 

 

上の右写真の状態を正面から。

ここから腹筋(?)だけで起き上がります。

多分羽化の中で一番しんどい工程じゃないかと。

 

 

 

 

 

上手く身を起こすことに成功。あとはケツを殻から抜くだけです。

ちなみに、起きる時は割と一瞬です。

実際、ゆっくり腹筋で身を起こすのは人にとってもしんどいですよね?

 

 

 

 

 

無事、完全に身体が抜けました。

あとは翅が乾いて伸びるのを待つばかりです。

 

ちなみにこの時、セミの身体に触るのは厳禁。

羽化中→羽化したばかりの身体は非常に衝撃に弱いため

もしうっかり地面に落としでもしたら高確率で死にます(マジ)。

力が足りず自然落下してしまうのは自然の定理故致し方ないですが

人為的に落とすのは避けましょう。

 

なお、せっかく殻から抜け出せたにも拘らず

力を使い果たしたのか、木に掴まることもできず落下してしまう個体も。

そういう個体を狙うのは、筆頭はアリだと思われますが……。

 

 

 

 

 

実はこの後谷公園、こんなヤツが生息していたりします。

見事なヒキガエルです。 イボが目立ちすぎて嫌です

後谷公園には池がありますので、繁殖自体は難しくないでしょうが

周りは完全に住宅街で孤立した緑地帯となっているため

あんな場所で生き残っていることにちょっと驚かされました。

 

サイズの大きいカエルだけに、動けないセミなんかは格好の餌食です。

妙に多い「あれ」の方を喰ってほしい気がしないでもないですが……

「あれ」とは何かって? それはほら、その、あれですよあれ。(シャカシャカシャカシャカ)

 

 

 

 

 

結構大きいスズメガにも遭遇。ウンモンスズメといいます。

サイズが大きく色もきれいですが、遭遇率が低い上に

やはり「蛾」ということもあってか人気・知名度は低め。

知名度の点を振るとすれば、残念ながら2点になってしまうかな……と。

 

ちなみにスズメガの仲間で最も知名度が高いと思われるのは

クチナシの害虫ホバリングする美しい蛾として人気のオオスカシバと思われます。

 

 

 

 

 

【浮間公園編】

後谷公園に行った翌日夜、例年同様に浮間公園にも行ってまいりました。

こちらの方が純粋に面積が広く、周りに緑地帯もあるため

セミの数が多く、あちこちで普通に羽化前の幼虫に遭遇します。

(その分、踏んづけないように注意が必要になりますが)

単にセミの羽化を観察したいだけならばこちらの方がいいかも?

 

 

 

 

 

羽化直後のアブラゼミを手前に据えて、1枚。

 

 

 

 

 

 

外敵対策(主に猫?)としてか、すっごい細い枝に

集団で掴まって羽化しているような妙な連中も。(左写真)

一方で右写真のようにトイレで羽化してしまうものもいます。

 

ある人が「山のトイレは隠れた昆虫観察ポイント」と言っていましたが

こうした公園でもまたそれは当てはまるのかもしれません。

そういえば、武蔵丘陵森林公園でもそんなことがありましたし……。

 

で、この公園もまたヒキガエルの観察ポイントとなっています。

例年かなりの数を観察できますが、この日も入園直後にエンカウント。↓

 

 

 

 

 

正面から見ると3段腹。ごっつあんです。

少なくとも食うものに困っていないということはわかった。

 

 

 

 

 

個体差はありますが、大きいもので大体こんな感じ。

ちなみに私の足のサイズは27.5cmです。

 

 

 

 

 

別の個体をもう一度正面から。やはりお腹がたるんでいます。横綱級。

一応彼等もカエルなのでジャンプはできますし

不用意に接近すると飛んで逃げてしまうのですが

この体型ゆえか動きはお世辞にも機敏とは言えず、

体長の何倍もの距離を一瞬で跳べる他のカエルたちに比べると

ノロマと言わざるを得ず、その気になれば簡単に捕獲できてしまいます。

 

が、そういう掴まりやすさをフォローするためか

耳から毒物を分泌するという、別ベクトルの防御策を会得しているため

アマガエル以上に迂闊に触るのは考えものだったりします。

(まあ、手を舐めたり目を擦ったりしなければ問題ないとは思いますが)

 

 

 

 

 

ちなみにこのヒキガエル、平地で見かけるものには2種類いまして

関東以北に生息するアズマヒキガエル(アズマは多分「東」)と

中部地方以西に生息する二ホンヒキガエルとに分かれています。

 

この2種、唯一の見分けのポイントとなるのが

上記の毒液を分泌する「耳」だったりします。

この耳が、目から耳までの距離よりも大きかったらアズマヒキガエル

小さかったら二ホンヒキガエル……らしい。

最近この二ホンヒキガエルが関東圏に移入(人為的に)されたらしく

地域性外来種とされています。(ヌマガエルなんかと同じ)

 

じゃあ上のヒキガエルがどうなのかというと……

スンマセン、わかりません(汗)。全体的に耳が小さいようにも見えますが

あまり差がハッキリとしていないので、識別するのが難しいですね。

 

なぜ人為的に移入したのか?気になるところですが

やはり自然学習用に離されたとか、そんなところなのでしょうか?

あまりこれをペットとして飼う人もいない気がしますし(汗)

当然、遺伝子攪乱が起きるので自然視点から見れば好ましいことではないですが

とある論文によれば、西の二ホンryの血が混じることによって

東のアズマryの生存率が格段に(←重要)上がったというデータもあるとのこと。

実際、都内でもヒキガエルの観察頻度はそこそこ高く

本ブログでも新宿中央公園の個体などを以前に紹介しております。

 

 

 

 

 

別の公園にて、子供に捕獲されたヒキガエル。

まあ、あの鈍くささじゃ網を持った小学生には敵うまい。

 

 

 

最後に、二ホンryもアズマryも両方とも日本の固有種。

国外では見られないらしいですが、

一方でアズマryが元々いなかった北海道に持ち込まれ

繁殖して現地の在来種を駆逐しているという報告もあります。

違う土地でもひとたび環境に適応してしまえば大惨事を起こすらしいので

在来種・外来種まわりについては今後も色々慎重な対応が求められるようです。