精神病の患者でも、退院して順調に快復していれば、精神的な破綻を繰り返したりはしないものである。それどころか、健全な生活があまり長く続くと、精神が破綻しないことに不安を覚えるようにさえなるのである。こういう人にとっては、最悪の事態とは、精神が破綻することでは最早ないのである。
ショーペンハウアーの「意志と表象としての世界」を読んだが、狂気について書かれている箇所は、ごく少ない。すなわち、まず、第六節における次の様な文章である。
「悟性の欠如は愚鈍Dummheitと名付けておいた。あとの章でわれわれは、実際的なことへの理性の応用が欠けていることを、痴愚Torheitとみなすであろう。同じようにまた、判断力の欠如を単純さの愚かさEinfaltとよぶであろう。さいごに記憶の欠如は、部分的にせよ全面的にせよ、狂気Wahnsinnとみなされるであろう。」
さらに、第三十六節において、この、狂気は理性や悟性の欠如ではなく、記憶の欠如であるという考えについて、詳述している。
「狂人の病気はとくに記憶にかかわっているようにわたしには思える。」
「狂人が精神病院に入院するときに前歴を問いただすのがきわめて難しいのはそのためである。」
などと書かれている。
腹が立つ、イライラするというのが、私の現在のもっぱらの困りごとである。かかりつけの病院でも、診察の度に、
「イライラして困るんです」
と、訴えている。今は服用していないが、以前、てんかんの患者の治療に使う薬を飲んでいたことがあるくらいである。