私は精神障がい者である。

精神障がい者というのは、普通に考えるなら自分にとって都合の悪い不利な事を考えたり口にしてしまう人の事のように思える。しかし、これは間違いである。精神障がい者というのはもっと違った人たちである。何かもっと別の人間、簡単には理解されない人たちである。

これは甚だ不遜な言い方の様に思われるが、例えば幻聴というものを考えてみる。幻聴というのは、声が聞こえてくる訳だが、声という以上一瞬にして感知するものではなく聞き取るのにある長さの時間を要すると考えられる。モーツァルトが曲の構想の全体が瞬時に頭にひらめいたなどという特異な場合でない限り、幻聴は時間の経過とともに生じるものと考えられる。それなら病気が良くなったとは、何を意味するのか。

幻聴が聞こえなくなった、或いは幻聴とうまく付き合えるようになったという人は、言ってみれば時間の使い方が上手になったという事だろう。それなら幻聴という症状があるとかないとか考えるよりは、「病気を治すには時間がかかりました」とだけ言っておけば、それで済むことである。

私の言わんとするところは、幻聴に限らず精神に障がいを持つ人には分かってもらえると思う。