バブルがまた来る。 | 空想クソ野郎の話 一話完結!

空想クソ野郎の話 一話完結!

掲載内容は全てフィクションです。
実在の人物・団体・事件等には一切関係ありません。

 土地の値段がいつまでも上がり続ける。そういうことを信じて土地の取引が行われた。 
 土地の値段が上がる理由─。 「日本は狭く、山や川が多く、人が住んだり、商売したりする地面は、かなり限られている。土地は貴重だから、持っていれば必ず値段は上がる」 
 神話でした。
 収益が上がらない土地、収益を出すアイディアがない土地は、それでもやっぱり要らないのです。上がった分、地価は下がり続けました。失望した分、さらに下がりました。下がって損した分、さらに景気が悪くなりました。
 ITバブルもありました。日本版シリコンバレーなんて言葉もあったかもしれません。多分に株価操作されたバブルは、数社の勝ち組を輩出して収束していく。


 しかし、皆さん!本当の景気回復となるバブルが今、やってきたのです。
 いやこれは泡のような、はかない類のものではないので、バブルというのもおかしい。つまり、絶対もうかる魔法の種。
 なんだと思いますか。それは、今あなたが胸に秘めている“欲望” 。その“欲望” こそが、お金を稼ぐのに必要なのです。
 人の、いや自分の“欲望”を、バカにして、それか恥ずかしいからといって、秘めてちゃいけない。
 堂々と、はっきりと宣言するんです。自分の欲望を。
 それだけでなんらかの形になり、現実に一歩近づくのです。まず“欲望”を語りましょう。そう、大きな声で。
 信じる者は救われる、信じる者は儲けられる。そう、この字の通り。

                             
 
 信じる者と書いて儲ける、ですから。  “欲望”  を現実にするには、まず “欲望”  を語り、それを形に残しましょう。みなさん本当にその“欲望”  を望んでいるのでしょう?
 だから私たちは“欲望”  を簡単に形に残してあげることができれば、みんなに、喜んでいただけると考えたのです。


 
 これがそのみなさんの“欲望”を登録するホームページ、“ドリーム・カム・ツール”です。
 いえいえ、  “ツール”です。はい、これで良いのです。夢を叶える道具という有名な英語の熟語なんです。 
 登録は簡単です。自分の“欲望” を登録する際、それがどのような“欲望” なのか、チェックボックスにチェックしていくだけです。 
 そうですね。そのチェックの種類は、とても細かいです。でもその細かさが、みなさん。みなさんの“欲望” をかなえてくれるんですよ。
 例えば、それがお金に関することなのか、仕事に関することなのか、はたまた異性か、趣味か…なんて具体的にチェックを行っていきます。
 つまり細かく、しっかりと、あなたの“欲望” を登録するのです。登録した“欲望” について、後で編集も可能です。
 そうするとですね。人って千差万別なので自分だけの“欲望”って思っていても、結構、親和性の高い場合があるんですよ。
ここに“欲望”を登録すると、その夢を一緒にかなえようという仲間、もしくは助けてくれる人とつながることができるんです。
 もちろん、最初は登録名しかお互い分かりません。
 私もびっくりしたのは、ここで登録したのが縁で、お互いの仕事がつながって、日本に巨大市場を作ってしまったお客様ですね。
 有名な話なんですけどね。
 皆さんも知っているでしょう。ほら、あのiモードって。あれなんて、うちのシステムの、また試作版だったんですが、初期のころの登録された方々で、確か「どこでもエッチなサイトが見たい」っていう欲望と、「この携帯電話で儲けたい」って方の欲望の親和性が、“どこでも”ってキーワードで結構、親和性が高くて…。それでつながってしまったんですね。
 でもエッチな欲望って結構かなえられちゃったりするんですよね。不思議と。SもいればMもいるっていうか…
 メイド喫茶もそうですからね。あれも欲望登録でかなえられちゃったパターンです。
 そう、欲望登録でつながる、稼ぐ。これが、これからのキーワードです。

 登録できる欲望は一人、三つまで。「今すぐ」、「将来」からチェックが始まります。 もちろん無料です。
 おっと時間を超過してしまいました。では皆様が登録をしている間、ちょっとドロンしますね。失礼します。


 はい、お疲れ様。うん。登録が三分の二ぐらい終わったぐらいかなー、て所で、まだひな壇に上がるよ。
 とりあえず水、ちょーだい。
 あれ、お客様、もう来てるね。ああ日経のエンタメさんね。博報堂さんは、あれでしょ、銀座ででしょ。うん、知ってる。あの人、仕事よりってタイプだから。
 すぐ行くよ。ちょっと待たしておいて。
 
 「はい、私がドリームカムツール代表の佐竹です。名刺をお預かりします」
 「そうですね。確かにアソコと比べたら、あそこまで広く個人情報は集めていませんが、でもうちのは濃いですよ。データ内容が。見てください、この欲望の更新実績。キャッチコピーはこのまま使われたらいかがです。“聞き流すだけで”ってやつとか。この新サービス、メイド喫茶一日店長、なんて実は受けるんじゃないですか」
 「殺人系欲望か~。これだけはね。警察に渡しちまいましょうかね。データ。なんか市民の務めのような気がしますもんね」
 「あ、ごめんなさい。もう時間ですね。失礼。行ってきます。あおらないと。欲望を。景気回復のため一肌脱ぎますか!ってね」


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