現場の苛立ち | 行雲流水~へき地の一人病理医の日常

行雲流水~へき地の一人病理医の日常

兵庫県の赤穂市民病院に勤務する病理医です。学士編入学を経て医学部に入学し、2004年卒業。病理専門医、細胞診専門医です。

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 「立ち去り型サボタージュ」という言葉を生んだ、虎ノ門病院小松先生の新刊。


 内容はあっちとんだりこっちとんだりしているが、とにかく医療現場のいらだちが伝わってくる。


 医療ミスを犯罪と同列に扱ってよいのか…


 以前ある番組で、「闘う夫たち」と題し、医療事故で亡くなった妻を持つ方を、山口の光市の母子殺人事件の遺族の夫の方と同列に並べて扱う特集をみてショックを受けたことがある。


 あの言語道断な殺人と、医療事故が同じなのか…


 もちろん、酷い医師とか、問題がないとは言わない。しかし、殺人者と同列に並べられては、「やってられないよ」と思う。


 実はこれは医療に限らず、例えば教師たたきなど、悪いとなったら個人を徹底的に叩き、そこから教訓を得るとかシステムの改善をするとかいうことができない。クレーマーがさまざまな分野で問題になっているが、クレーマーを生み出しているのも、「悪い奴は懲らしめろ」「悪い奴は叩け」という感情なのかもしれない。


 ただ、逆に医者はよくてマスコミ、患者が悪い、となってしまっても、これは逆に振れただけでしかない。


 医者のマスコミ叩きもかなりのものがある。何でもマスコミが悪い、というような…


 医者と患者、社会のコミュニケーションブレイク…失敗学じゃないが、何が問題なのか冷静に議論できる時代は来るのだろうか。


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