『DUNE』二度目の映画化に伴い、早川からそれまで出ていた矢野徹訳から、酒井昭伸訳の新訳版が出た
以下は最初のページの比較
訳:矢野徹(https://amzn.asia/d/0cuu11jl)
カラダン城の夜は暖かく、二十六代にわたりアトレイデ家の本邸として役立ってきた古い石のかたまりは、天候が変わる前に感じられる冷えた汗のような感じを漂わせていた。
訳:酒井昭伸(https://amzn.asia/d/0dNCosGS)
暖かい夜だった。だが、古い歴史を持ち、二十六世代にわたってアトレイデス家の居城を務めてきた石造建築、カラダン城の内壁には、びっしりと結露が生じていた。じきに天候が変化するきざしーーー気温が下がりはじめたことを示す徴候だ。
原文(https://amzn.asia/d/08AjK6Mp)
It was a warm night at Castle Cal-adan, and the ancient pile of stone that had served the Atreides family as home for twenty-six generations bore that cooled-sweat feeling it acquired before a change in the weather.
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『矢野徹・SFの翻訳』(https://amzn.asia/d/06HoBhd6)で矢野氏は、基本は英単語ひとつに日本語の単語ひとつを割り当てる、というような記述をされていた記憶がある。上記訳を読むとたしかにそんな感じかなと思われる
驚いたのは、酒井訳では「結露が生じていた」という部分は、矢野訳では「冷えた汗のような感じを漂わせていた」とそのままの直訳になっているところ
きっと酒井訳が正解に近く、矢野氏はこの英文が結露を表現していることに気づかなかったように思われる・・
また、酒井訳は英文にない意味合いの言葉を自由に追加している。いま紹介した「結露」についても酒井訳は「びっしりと結露が生じていた」とあるが、「びっしりと」なんて意味は英文には全くなくて、でもこの言葉がついている方が確かにすんなり読める
「気温が下がりはじめた」という意味の英文がどこにもないのも同様
今の海外文学の一般的な邦訳はきっと酒井訳のように、英文にはそこまでの意味が書かれてなくても、日本語訳にした時に読者にわかりやすい言葉を自由に追加しているということか
私は矢野徹訳のSF・冒険小説に大変お世話になったので、新訳版が出て矢野版が消えていくことに寂しさをちょっと感じます笑
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昔、シドニィ・シェルダンの小説で「超訳」という読みやすさ重視の翻訳本が出ていましたが、あの考え方がいまの主流になっている? 翻訳家は原本をもとに自分の日本語訳の中で自由に演出しているように思えてきました。まるでシェークスピアの台本をもとに多くの演出家が自分なりの演出を試みているように
また、この訳文はどこまでが英文にあって、どこからは訳者が追加した言葉なのかが若干気になる時が出てきそうにも思いますが・・今の時代の潮流に乗った方が楽しめるのでしょうね