長いような短いような病室での待ち時間を終えて、カテーテル室に到着しました。検査室の看護師さんと術者(卒後23年目)の先生、それに入院中の主治医(卒後3年目)の先生が出迎えてくれます。病院のHPを見ると先生の経歴や資格、所属学会まで分ってしまいます。

 

カテーテル検査のX線透視装置はかなり大がかりな装置です。患者さんが寝るベッドは1mちょっとぐらいの高さがあったように思います。天井と床に可動式のC字型のアームが取り付けられていて、それぞれのC字型のアームにはX線照射器と平面検出器(FPD)が向き合う方向に固定されています。一度に二方向からの造影ができる「バイプレーン」という装置ですね。文章で説明しても分かりにくいので、メーカーのHPの画像を張っておきます。天井からアームに吊り下げられて50インチぐらいのモニタが2面設置されていました。

 

ベッドに横たわる前には毎回の儀式のように本人確認があります。生年月日と名前を自言わないといけません。次に術者が検査室の看護師さんが今日の検査の内容について確認をするのですが、そこでひと悶着。術者が「本日の予定は左右両心の造影です。」と言ったら、看護師さんが「左心のみと予定にはありますけど?」とちょっとおかんむりの様子でした。ちらと見ると確かに看護師さんの言うとおりでした。一瞬の気まずい沈黙の後、「まあ、良いでしょう。」という看護師さんのありがたいお言葉でこの場は収まりました。何度も受けるのは嫌ですから、「一回で左右終わるなら終わらせて欲しいなぁ」と内心思ってました。

 

いよいよベッドに上がるのですが、意外と高さがあります。ホームセンターで売ってるような二段の踏み台が置いてあります。看護師さんに支えてもらってなんとか横たわりました。ちょっと部屋が寒いせいか、緊張したためか、またトイレに行きたくなりました。「さっき、済ませてきたのですが、なんとなくトイレに行きたいような気がします。」と言ったら、「すぐ終わりますし、その時は尿瓶で取りますから大丈夫ですよ。」と言われました。

 

心電計、血圧、酸素飽和度のモニターなどを装着されると、体も覆布で覆われます。顔は出ているので視界は遮られませんでした。天井と壁には青空と雲の絵が描いてあります。心が和むような和まないような微妙な絵です。覆布を掛け終わると右手の指先から上腕の当たりまで消毒します。二回塗る感じがしたのでポピドンヨードとエタノールのコンビネーションだと思います。本当はヒビテンアルコールのほうが効果的なんじゃなかろうかとか余分な事を考えてしまいます。

 

手首を大きく反らせた形で手のひらを固定されます。いよいよかと思うと自由な左手と足の先にじっとりと汗をかいてます。「手首と肘の2か所が少し痛みます。」と言われて、「えっ、橈骨動脈だけじゃなかったの?」と思ったのですがいまさら聞けません。二ヶ所に麻酔の針が刺さります。

 

表面麻酔のシールを貼って貰っていても、事前にネットで調べていた通りかなり痛かったです。そう言えば、肘の内側にはシール貼ってなかったよねと疑問が。麻酔したらすぐに動脈穿刺ですが感覚は幾分残っています。暖かい血液が流れて手背を濡らすのを感じました。シースを入れる前にもう一度、麻酔薬を追加してもらいましたが、それでも手首の背側に針が抜けてるんじゃないかと思うぐらいの痛みはありました。我慢できない痛みではありませんが、全く感じないわけでもありません。

 

シースからガイドワイヤーを通しているんだろうなぁと思うのですが、上腕動脈から腋窩動脈、鎖骨動脈の途中までぐらい何かが入っている感覚があります。学生時代の解剖学の実習を思い出します。想像するとあまり気持ちの良いものではありません。

 

 時々、看護師さんがベッドとモニタとの間の狭い空間から顔を出して「大丈夫ですか?」と聞いてくれます。本当にありがたかったです。途中、術者の先生も「これまでのところ順調ですよ。」と何度も声かけして下さったのですが、一度だけ「あれ、なんでだ?」と独り言をいわれてちょっとビビリました。

 

後はカテーテルを入れたり、造影したり、出したり、別のをまた入れたりの繰り返しでした。色々な方向から造影するためにC字型のアームに固定された線源とフラットパネルセンサーが身体の周りで回転します。「体には当たらないから大丈夫ですよ。」と言われるのですが大きな機械ですので、結構圧迫感はがあります。大きなモニターに映る造影された自分の冠動脈を眺めているのも不思議な感じです。とりあえず3本とも特に細くなっているところは無さそうな気がします。

 

透視装置のベッドは位置を変えるときに電動で動くのですが、ガクンガクンという感じで動いて止まります。なんだか、トイレに行きたいのを我慢しているのに揺さぶられるとちょっと辛かったです。 

 

最後の造影を入れて検査です。噂には聞いていましたが、造影剤が流れていくにつれて、全身に「熱い」感覚が輪切りのように広がって行きます。下半身まで行くと幾分、睾丸で停滞する感じがありましたが。ほどなく、通常に戻りました。どうやらすべての検査は無事に終了したようです。