2023年4月13日。愛知県芸術劇場での大千穐楽を以て、ミュージカル「RENT」全公演終了。
2020年から続投だったファミリーにとっては、特に念願だった完走を見届けることができて、わたしも感無量です。
規制がだいぶ緩和されたとはいえ、最近また関係者の体調不良による公演中止が出ていることを考えると、完走できたのは当たり前のことではないんだよね。
この1ヶ月ちょっと、いや敬多の出演が発表されてから半年近く、ずっとRENTの世界にどっぷり浸かっていたから、週末からリダパだというのに全然余韻が抜けない。
きっとLeadとしての敬多の歌声を聴くまで、わたしのリダパは始まらないんだろうな。それくらいロジャーとして生きる役者古屋敬多が素晴らしかったから。
敬多だけじゃなく、ファミリーのみんなもそうだし、RENTという作品自体が本当に素晴らしかった。
ただ、わたしが自信を持ってそう言えるようになったのは、実は2公演目からでした。
なぜか。初日は仕事終わりに駆け付けて、心の準備がままならなかったというのもあるんだけど、いちばんの原因は席位置だと思う。
いろんなものをギュッと凝縮したシアタークリエという箱。ステージと客席の近さは魅力だけど、高さのあるRENTのセットがステージの際ギリギリまで位置してる。
そうすると、特に上手の前方の端席はそのセットに遮られてステージの中央部分がよく見えないのよね。
ほぼ全編歌で進行していく構成上、登場人物たちが何をやってるのか把握出来ないことが多々あった。だから客席側の反応にもついていけなくて、なぜ泣いてるんだろう?と思った場面も。
わたしこれをあと10回以上も観るのか。イノサンを思い出して、正直どんよりモードでした。
ところが翌日。センターブロックの座席に座った途端に視界が開けた。ここでこんなことやってたのか、こんな表情をしてたのかと。目が忙しい。これ、本当に前日と同じ作品?と。
視覚と聴覚ってきっと密に繋がってるんだろうね。敬多が天才的だと言ってたジョナサンの音楽が鮮明に耳に飛び込んできて、心が躍りました。
登場人物それぞれのソロもいいし、マークとロジャー、ロジャーとミミ、コリンズとエンジェル、モーリーンとジョアンヌ、声と声のぶつかり合いがいい。
視覚や聴覚が刺激されると、感情も動く。気が付いたら、混沌とした時代を必死に生きる若者たちと一緒に泣いて笑っていました。
あぁ良かった。敬多が出たいと言い続けたこの作品って、やっぱり凄いんじゃんと。そこから大千穐楽までの毎公演は、本当に楽しくて幸せでした。
あちこちで色んなことが起こってるから、見切れなければどの方向から見ても楽しめるし、もちろん推しの立ち位置を狙ってもいいし、会場が広い地方公演は少し引きで観るからまた新鮮で。
少し話がズレるけど、この作品で販売される夢の座席エンジェルシート。いくらコンセプトを説明されても、既にチケットを確保しているオタクが黙って見ているはずがないと思うのよね。
結果、ジョナサンの願いに反することが起こる可能性があるのなら、最初から見切れの多い端席を格安販売する手もあるんじゃないかと思った。
それくらい見える景色が違った。そして、2日目で沼落ち出来たわたしはラッキーだったなと思います。
ここからは作品ついて。素晴らしいと思ったことのひとつは、ドラッグ中毒、HIVというワードが飛び交っていても、悲観より希望が大きく上回っている物語であること。
そして、ジェンダーレスという考え方が今ほど広まっていない時代で、仲間内ではむしろストレートの方が少ないくらいなのに、若者たちが相手を自然に受け入れていることでした。
ジョナサンが愛情を持って描いたであろう、その若者たちに命を吹き込んだキャスト全員がハマり役だったなぁ。
ハマり役といっても、ダブルキャストで両方見てみると全然表現の仕方が違っていて、それがまた面白かった。
大前提として歌が上手い人しかいないんだけど、その中でも圧倒的な歌声を持っていたり、拝みたくなる美貌だったり、表現力お化けだったり、いつも笑顔にしてくれたり。
それぞれが違っていて、みんながいい。観客が登場人物みんなのことを好きになる。これって、アンディを始めとする制作陣の眼力なんだと思った。
その眼力で敬多をロジャーとして選んでくれたことに、感謝しかないよ。そして選んでもらった期待に応えるために、命懸けで役づくりに取り組んだ敬多にも。
初日はそこまで入り込めなかったとさっき書いたけど、敬多がロジャーとしての歌声を手に入れるために、どれだけ頑張ってきたかということだけは、第一声を聞いた瞬間に分かった。
たとえ喉に負担のかかる歌い方だったとしても、ロジャーとして生きるために選んだ歌い方を応援したいと、心から思った。
東京公演の終盤に、一度だけ甲斐ロジャーの回を観ました。前日のソワレからダブルキャストでロジャーだけが代わったその日の公演。
違う作品とまではいかないけれど、全然違う空気が流れてた。ロジャーひとりでこんなに違うのか。というか、物語の方向性を左右してるのは、実はロジャーなんじゃない?と思ったくらい。
甲斐ロジャーは敬多ロジャーよりもっと孤高で、一歩引いて周りを見ている感じ。それでいて、長身だし立っているだけでも舞台映えするのよね。声はストレートに響く正統派。
一方の敬多ロジャーは、庇護欲を掻き立てられるロジャーで、本来は人懐っこい性格なんだろうけど、心を閉ざしてしまってるから、周りがどうにかしてあげたくなってしまう。
不思議だよね。ロジャーにしてもヴェラキッカ家のカイにしても、よくよく考えると面倒くさい奴なのに、敬多の手にかかると、そんなところさえ愛おしく思えてくるんだもの。
「今までにないタイプのロジャー」「わたしの描くロジャー像にドンピシャ」「愛されロジャー爆誕」「古屋ロジャーが歌声を発するたびに恋しちゃいそう」・・・
期間中にSNSで見かけた、共演者や作品ファンの方々のそんな言葉が、わたしとっても宝物になりました。
まだまだ書きたいことがいっぱいある。各場面を思い返しながら、またRENTという物語に浸りたいし、各キャストの好きなところや敬多ロジャーとの絡みについても書きたい。
いつまでかかるかは分からないけれど、気が向いたら少しずつ綴っていきたいと思います。
ひとまずは、リダパを全力で楽しめるように努力しなくちゃ(笑)それではまた~☆彡