最低限の
身の回りのものだけを持ち
寮に引っ越した私はその日
契約のため
アパートを管理する会社の
担当者と会う必要がありました
数時間後
部屋を訪れた担当者の第一声は
こうでした
「ご両親は健在ですか?」
そういえば…
両親とは連絡を取っていませんでした
父と母は
物心ついた頃から
とても不仲で
母は怒るといつも
「あんたがいるから離婚できない、なんで生まれてきたの?うっとおしい」
と私に言いました
小さな頃から
抱っこをせがんだり、
泣いたり甘えたりすることは
許されませんでした
理由はその頃の私には
わかりませんでしたが
母に嫌われないように
そればかりを考えていました
唯一
勉強やピアノが他の子より
上手にできた時には
褒めてもらえました
自分は
いらない子
だから
お勉強もピアノも
頑張らなくちゃだめだ
自然に
そう思っていました
そして当たり前のように
父と母には
お互いにそれぞれ
恋人がいました
母は毎日のように
私に恋人の惚気話をしました
恋人の話をするときの母は
とても嬉しそうで
幸せそうに見えました
だから私も
嫌がらず
聞くことにしていました
__
ご両親は…
そう聞かれて
そんなことを思い出していました
「ああ、そうか…
だからか」
その時ひとつ
気づいたことがありました
何故
暴力を振るう彼と
別れられなかったのか…
それは
私はずっと
誰かに抱きしめて
もらいたかった
たとえそれが
偽りだったとしても
あなたが大切だよ
あなたが必要だよ
そう
言って欲しかった
この気づきは
私にとって
後に
とても
重要な意味を持つものとなりました
ここまで読んでいただき
感謝いたします
ありがとうございました

